盾と矛と劇薬






爆丸NV/シュンエー


何度目だろうか、深く目を瞑る。一歩足を踏み出すたびくらり、真っ暗な闇が揺れる、額に一筋汗が流れる。目を開けばマルチョの屋敷の、綺麗に整えられた真っ赤な絨毯が見えた。まるでくすぶるこの心臓のようだなんて、少しクサいだろうか。慰めなどいらない、欲しいものは熱いほどに狂おしいこんな物などではなく、もっと浅く冷たいもののはずだった、お互いに。手を伸ばしたのはどちらだろうか、
「シュンさん、どうかなさいましたか?顔色が良くないようでございます」
「…いや、なんでもない」
「それなら良いのでございますが…」
一歩前を歩いていたマルチョにいつの間にか顔を覗き込まれていた。眉を下げて心配するマルチョに、自分がどれほど酷い顔をしていたのかと後悔した。明らかに濁す事しか出来なかった返事に、満足はしてないが一応は納得してくれたらしく、また一歩前を歩き始めた。
「そういえば、エースさんもどこか辛そうにしておいででした」
ぽん、と叩いた手が落としたのはただ斧か、それとも金色の爆弾か、ぴくり、無意識に指先が跳ねる。
「そうか…」
「もしかしたら風邪が流行っているのかもしれませんね。シュンさんもお気をつけください。」
「あぁ…そうする、」
無知とは罰することの出来ない罪である、無邪気さ故の純粋な言葉は、シュンの何かをぐるりと掻き出しだ。見えない傷口から溢れ出した真っ赤な血液は、同じ純血の絨毯に吸い込まれ道を作り上げる、それが自らの罰だった。無知は罪だ。無知な振りをして黒い塊をエースに押し付けたのは紛れもなく自分で、無知な振りをしてそれを受け入れたのは紛れもなくエース自身で、その事実にすら無知な振りをして顔を背けているのはお互いで、罪を背負う勇気も覚悟もないくせに、それでも手を伸ばしたのは確かに、
「エースさん!」
「ようマルチョ、…シュン」
交わる視線は語らない、何も生まない非生産的行為をエースは嫌うからだ。酷く矛盾していると思う、それでもまた手を伸ばすのは、手を伸ばしたのは、彼が彼であるからなのだろう。自分に言い聞かせる、子供は子供らしく、無知なままで良いのだ。思い込む事でしか前に進めない、滑稽な程に自分は子供なのだから。










似たような文を3回ほど書いた気がする




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