三國/創作:V | ナノ


三國/創作:V 
【Another worldW】
 




「だめです。ちゃんと口元を押さえておかないと、外に聞こえてしまうじゃないですか…?」
「あっ…あっ…。そんなぁ…。秦…そんなに奥まで舐めちゃだめなのに…いゃぁん…」

名無し様が泣きながら首を左右に振ると、大粒の涙がポロッと零れ落ちる。

俺の舌の動きに思うがままに感じまくって淫らな喘ぎ声を上げる名無し様の反応が愛しくて、俺は胸がキュンッと締め付けられるような切ない痛みを感じていた。

「秦…もう…舐めちゃだめ。一杯…吸っちゃだめっ。あぁ―んっ……」

名無し様の唇から発せられる喘ぎ声が、今までにない妖しい色香に満ちていく。

脳天を直撃するような名無し様の鳴き声の悩ましさと言えば、まるで男に抱かれる事を生業としている娼婦のようだった。

彼女の喘ぎ声を耳にした男なら誰でもその声をもっと聞きたくて、色んな所を色んな方法で責め立ててやりたくなるような、そんな感じの声なのだ。

凌将軍や陸将軍達のようなプレイボーイに比べればそれほど女性経験のない俺だけど、情事の際に見せる名無し様の媚態が他の女性を全く寄せ付けない程に妖艶なものだと言う事だけはよく分かる。

今まで付き合った事のある恋人の中でも、こんなにも色っぽくてエッチな喘ぎ声を出して俺の下で鳴いてくれる女性は一人もいなかった。

名無し様は昼間に穏やかで優しい態度で俺を包み込んでくれるだけでなく、夜の姿でも悔しい程に俺を虜にしてくれるのだ。

「あっ…あんっ…秦…。いやっ…だめっ……」

名無し様の一際高い声が、否応なしに俺の耳に届けられる。

俺はその目眩がするくらいに淫らな喘ぎ声を聞いていて、思わず両手で自分の耳を塞ぎたくなってしまった。


俺はこんなにも、貴女の事を深く愛しているのに。


凌将軍と陸将軍の腕に抱かれている時の貴女はあんなにも甘い声を出して彼らの事を『欲しい』と求めているのに、どうして俺にはあの二人と同じ事を言ってくれないのですか。


名無し様……何でっ?


「なんで…『だめ』しか言ってくれないんですか?名無し様…」

絶望に染まった俺の声が、独り言のように唇からポツリと漏れる。

不機嫌そうにキュッと眉間に皺を寄せた俺の表情の変化を目の当たりにして、名無し様が怯えたようにビクリと肩を震わせた。

「な、なんで…。どうしてですか?名無し様だって…こうして応えてくれているじゃないですか」
「……し、秦……」
「名無し様の体だって、俺を求めてくれているじゃないですか。俺に応えてくれているじゃないですかっ!!」

体内から吐き出された俺の切なる声が、悲鳴と同じ痛みを伴う。

名無し様に嫌われてしまうかもしれないと思っていても、この時の俺はそう叫ばずにはいられなかった。


「……全部、俺のせいにして下さい」
「……!!」
「貴女を抱く罪も罰も、俺が全部背負いますから。全部俺のせいにして、名無し様は俺に身を委ねて下さい」
「……し、んっ……」
「────俺に任せて」


名無し様をこの腕に抱けるというのなら、どんな刑罰だって耐えられる。

そう決心した俺は震える名無し様を組み敷いたまま、邪魔な物を取り払うかの如く一気に自分の上着を脱ぎ捨てる。

愛する女性に見せ付けるかのようにしてゆっくりと腰帯を解いていくと、もうすでに雄々しく変化している下半身が名無し様の目の前に晒されていく。

その光景を認めた名無し様は頬を真っ赤に染めて、両目一杯に溢れんばかりの涙を溜めていた。

「あ…秦…。こんなに大きいの…入らないよぉ…」

名無し様は消え入りそうに小さな声で呟くと、それ以上直視出来ないと言わんばかりに目を伏せて睫毛を震わせる。

一抹の不安と期待が複雑に入り交じっているのか、彼女の瞳は涙でウルウルと濡れていた。


お願いだから、もう何も言わないで。


自分でも良く、分かってる。

目の前にいる名無し様をこんなにも乱れさせているものは、俺ではなくて媚薬によるものだって事。

俺を求める名無し様の媚態は本心から生み出されたものではなく、薬の効果によるただの幻想だって事。

名無し様本人に言われるまでもなく、他人に言われるまでもなく、そんな事は十分自分でも承知している。


それでも、俺に対して向けられている貴女の眼差しが、俺が貴女に対して注ぐ眼差しとは全くの別物だとしても。


本当の意味で彼女と結ばれた訳ではなくても。これが、決して愛とは呼べなくても。


どうかこの震える程の激しい思いを分かって。名無し様。


貴女の事がずっとずっと前から好きなんです。本当です。



────だから俺のこの行為が、早過ぎるだなんて言わないで。



「……そんなに心配しなくても大丈夫です。俺、こう見えて結構優しいですから……」

すでに堅くなっている俺自身を、名無し様の入り口にグッと押し当てる。

挿入をしやすくする為に、中から溢れ出ている彼女の体液を俺の先端に何度もこすり付けていると、ヌルヌルしたその感触に名無し様が思わず息を呑む。

「あんっ…秦…だめぇ…」
「ゆっくりいきますから。名無し様…」

宣言通りにほんの少しだけ力を込めて、自分の先端を名無し様の入り口に含ませる。

名無し様の内壁を傷つけないように慎重に腰を進めていると、半分だけ挿入してみたところで名無し様が焦れたような声を上げた。

「あっ…ああ―んっ……」

今にも果ててしまいそうな位に破廉恥な喘ぎ声を漏らして、名無し様が無意識の内に自分の腰を俺の腰に擦り付ける。

「だめですよ。名無し様…そんなに焦らないで。目一杯優しく抱いてあげますから……」
「いゃぁん…秦…だって…だってぇ……」
「だめと言ったらだめです。少しずつ慣らしていかないと、名無し様の中が傷ついちゃうでしょう?」

このまま一気に奧深くまで彼女の内部を貫きたい衝動を懸命に押さえ込むと、名無し様の内壁を自分の形に慣らす為にこれ以上の挿入を中止した。

分身の半分までを名無し様の体内に埋め込んで、一番太い先端部分を引っ掛けるようにして彼女の中で出し入れを繰り返していると、クチュクチュと濡れた音がする。

先程名無し様の中を舌先で丹念に愛撫し続けた甲斐もあり、彼女の内壁はすっかり柔らかく解れていた。


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