三國/創作:V | ナノ


三國/創作:V 
【Under WorldX《後編》】
 




「───躾けの時間だよ」
「…ぁ…」

彼の一言で、今まで懸命に保ってきた理性やプライドが粉々に崩れ去った。

久しぶりに会った珠稀は以前と同じく……むしろ以前よりも遥かに増して男前で、いつもと違う髪型のせいか普段の3割増しくらいにワイルドな雄の色気に満ち溢れていて、そして何より、その双眸には獰猛な獣のような光が宿っているように見えた。

そんな彼にこんなに近くで見つめられ、低い声で命令されて、逆らうことなどできるはずもない。

(……どうすれば……)

人前でオナニーして見せて、と言われても、まずは何をすればいいのか。

迷った挙句、名無しは震える手を胸元に持っていくと、そっと膨らみに触れた。戸惑いを覚えながら、ゆっくりと揉み始める。

「んっ……」

柔らかい感触の中心に、硬い物がある。その先端にある突起は、既にツンと勃ち上がっていた。

それを指先で軽く弾くと、ピリッとした甘い痺れが走り、名無しの口から熱い吐息が漏れる。

(やだ……、恥ずかしい……)

自分で自分の胸を弄りながら感じているだなんて、何て浅ましいのだろうと思う反面、止められない。触れば触る程体の奥が切なくなって、もっと強い刺激が欲しいと思ってしまう。

「は…ぁ…、ん、ぅっ…」

珠稀の怒りを鎮める為。彼の要望に応える為、という大義名分を得てしまったことで、もはや羞恥心すら快感に変わる。

もう少しだけ強く摘まんでみると、先程よりも大きな刺激を感じて思わずビクンッと背中を反らしてしまった。

すると今度はお尻についた尻尾部分が揺れて、お尻を撫でるようにふわふわの塊も揺れるものだから、それがくすぐったくて恥ずかしくて、更なる快楽を生み出すことになる。

「あっ…、ゃ、ぁ……。ん、あぁ……っ」
「へえ〜、人前でそんなエッチな格好をして、そんな恥ずかしい事をして、随分と気持ち良さそうだね。でも、それだけじゃ足りないでしょ?こっちも一緒に可愛がってあげなきゃ」
「ひぁっ…!?」

突然、珠稀の長い足が股の間に割り込んできたかと思うと、肉芽を押し潰すように親指の腹でグリッと踏まれた。その瞬間、名無しの身体中にビリビリッと電流が流れたかのような衝撃が走る。

下着越しでも十分すぎるくらいに敏感な場所なのに、穴が開いているせいで直接、何の予告もなく強引に擦り上げられたのだ。

一瞬呼吸をするのも忘れてしまったくらい、あまりの快感に頭が真っ白になった。

「ははっ!すごい反応」
「やっ…!そんな…、やめて……あぁぁぁ…っ!」

名無しの反応を見て楽しそうに笑いながら、珠稀は再び足を前後に動かし始めた。

しかもそれはただ単に肉芽を中心に上下に擦るだけではなく、円を描くようにして捏ねくり回したり、かと思えば小刻みに振動させたりと様々な動きを織り交ぜてくるので堪らない。

そのせいで名無しは腰を浮かせてしまうが、そうすると余計に珠稀に押しつけるような形になってしまう。

「いや…、だめ…っ。珠稀さん…それ、いやぁぁ……」
「何が駄目なの?気持ちいいんでしょ?」
「あぁーん…そんなぁ……。違……っ」

否定の言葉とは裏腹に、身体は正直に反応する。

珠稀に責められている部分から、どんどん愛液が溢れ出して彼の足を濡らしていくのが自分でも分かり、名無しは顔から火が出そうなくらいに恥ずかしかった。

「違うの?じゃあこれは何?こんなにぐしょ濡れにして人の足を汚してさ、説得力ないよ」
「ひっ!?あぁ……、ゃ……、あっ、あっ、あぁっ……!」

更に追い打ちをかけるかのように、爪先で押し潰すようにして強く陰核を擦られた。

再度電気ショックを受けたかの如く身体が痙攣し、もう少しでイキそうになりかけた瞬間に、あっさり動きを止められてしまう。

「…いっ…いっ…ぁっ…」
「はい、ここまで。後は自分でやりな」
「…ぁ…、珠稀…さ…ん…。そん、な……」

素っ気なく言い放たれ、名無しは泣きそうになりながら美しい男の顔を仰ぐ。

「躾けの最中なのに、飼い主の手を煩わせんなよ。ちゃんと見ててやるから。ほら、早く」
「う……、うぅっ……」

冷たい言葉をぶつけられ、卑猥な命令を下されているというにも関わらず、珠稀の声を聴くだけで名無しの下腹部の奥がきゅんっと疼く。

珠稀に操られるようにして、名無しは緩慢な動作で片方の手を下半身に移動させ、己の体液でぐっしょりと濡れた割れ目に指を這わせた。

そしてもう片方の手は胸へと持っていき、両目一杯に涙を浮かべつつ、もう一度乳房と乳首の愛撫を始める。

「はぁ…、ぁ…、んっ…、んぅ……」

どうして自分はこんな場所で、こんな事をしているのだろう。

最初は躊躇いがちだった手の動きは珠稀への恐怖心からか、はたまた快楽への欲求なのか次第に大胆さを増していき、その動きに合わせて自然と名無しの腰が揺れ始めた。

(やだ……、私……。こんなのおかしい……)

珠稀に見られている。彼に命じられ、彼の望むままに痴態を曝け出している。

そう考えるだけで胸が苦しくて、切なくて、それでいて腰が抜けそうなくらいに甘美な衝動に駆られ、その事実がより一層彼女の興奮を高めていった。

「あんっ…、はぁ…ぁ、ぁっ、ゃぁ……」
「なかなか上手いじゃん。誰に教わったの。今日の三人?それとも俺が知らない男?」
「ち、が…い、ます…。そ…んな…」
「いいじゃん隠さなくても。俺に会わない間、どうせ他の男でもくわえ込んでたんだろ。こんなに淫乱なんだもんな、名無しちゃん。男なしじゃいられないよな?」

わざと煽るような言い方をする珠稀に対して、名無しは涙目で首を左右に振って懸命に否定した。

しかし、そんな彼女の態度こそが逆に言い訳じみて感じられるのか、珠稀はソファーの背もたれに体を預け、面白くなさそうに頬杖をつく。

「別に俺は、君が誰に抱かれていようが一々気にしない。俺も人の事言える立場じゃないからね。でも、名無しちゃんの一番でいたいわけ。唯一にして絶対のご主人様だと思っていたのに、目の前で他の男に縋りつかれて、俺よりも他の野郎を庇われて…。体だけじゃなく精神面まで浮気されて、俺が黙っていられると思う?」
「……っ。ゃ……」
「ねえ、名無しちゃん。俺のいないところで他の男とするセックスは、気持ち良かった?」

そんなこと、思ってない。珠稀以外の男性とは、何もしていない。

それを伝えたくても言葉が出てこない。何を言っても、今の珠稀には正しく伝わらないような気がして。

だからこそ名無しは必死に首を横に振り続けたのだが、その仕草がかえって珠稀を苛立たせてしまったらしい。

彼は眉間に深い皺を寄せ、荒々しく舌打ちをしたかと思うと、どこまでも冷たく硬質な響きを宿す声で吐き捨てる。

「たった半月だか一か月だか俺の顔を見ないだけで、『待て』が出来ない駄犬はいらねぇんだよ」
「……ぁ……」

我慢していた涙が、目尻から溢れ出る。涙で、視界が見えなくなる。

珠稀に見捨てられるかもしれないという不安と恐怖が一気に押し寄せてきて、名無しはしゃくり上げながら泣き始めた。


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