三國/創作:V | ナノ


三國/創作:V 
【Under WorldX《後編》】
 




「全部脱げって言ったでしょ?聞こえなかった?それとも、わざとやってんの」
「ち、違……っ」
「だったら早く。ワンちゃんは元々服なんて着ていないでしょ」
「はい……」

言われるままに残りの衣服を全て脱ぎ捨て、邪魔にならないようにベッドの脇へ移動させる。

珠稀の視線が全身に絡み付くような感覚に襲われ、名無しはぎゅっと目を瞑った。

「ふーん。てっきりキスマークとか噛み跡でもついているかと思ったけど、そうでもないんだ」
「あ、あの、珠稀さん……」
「なに?」
「そんなに見ないで……ください……」

消え入りそうな声で懇願すると、珠稀はくすりと笑みを零す。

「どうして?俺はただ、可愛い可愛いワンちゃんの姿を隅々まで観察しているだけだよ。愛犬が自分の見ていないところで他の人間に苛められたり、虐待された跡がないか、飼い主なら心配になるのは当然だよね?」
「で……、でも……」

ペット扱いされることに、異を唱えたい気がした。

『心配』という言葉を体よく珠稀は使ったが、全裸の状態をまじまじと見つめられるのはとても恥ずかしいし、居たたまれない気持ちになるのだ。

「ああ、もしかして恥ずかしいのかな?ワンコのくせに」
「……っ」
「でも大丈夫、すぐに慣れるよ。これからもっと恥ずかしい事をして貰うんだから、これくらい笑顔でこなせないとね」

珠稀は名無しの耳元に顔を寄せて囁く。

「……今度会う時までに、君に似合うちゃんとした首輪を買ってきてあげる」
「っ、ぁ……」

蕩けるような甘い笑顔に、心臓が高鳴る。

耳たぶを軽く噛まれ、名無しの口から小さな悲鳴が零れた。

「ふふ、怯えてる顔も可愛いなあ。でも、あんまり時間もないし……そろそろ始めようか」

珠稀は名無しから離れると、黒服の一人を手招きして指示を出す。

「前に俺が名無しちゃんの為に買った物を持ってきて。白いやつ」
「はい」

黒服は短く返事をして足早に退室する。そして数分の後、小さく畳まれた白地の布を手にして戻ってきた。

珠稀はそれを目視で確認し、部下から受け取ると、名無しに見せつけるようにしてその場で広げる。

それはどうやら、前にも彼女が着せられた事があるベビードール型のランジェリーのようだった。

レースやフリルがふんだんにあしらわれており、ぱっと見はかなり可愛らしいデザインである事が窺える。

しかし、前回に比べてそのデザインはあまりにも過激だった。

胸元のカップの部分は総レースになっており、しかも中央部分に縦型の穴が開いている、俗に言うオープンブラだ。

乳首を隠す機能を果たしていないし、セットのショーツに至ってはほぼ紐状になっており、秘部からお尻にかけて包み込むレースはこちらも中心に大きな空洞が造られていて、肝心な部分が全く隠せない。

サイドのリボンを結ぶ事で固定するという仕様になっているが、最初から穴が開いているので、そもそも脱がす為に紐を解く手間すら必要なかった。

「た…、珠稀さん…。これは……?」
「ん?これはねえ、一目見てすぐに気に入っちゃって、名無しちゃんに着てもらおうと思って奮発したんだ〜。仕立てのいいレースを使っているのは分かるけど、布の部分なんかこれっぽっちしかねえのにこれで1万8千円とか随分足元見てるよなあ…」
「な…、な…っ」
「でもいいの。何だかんだ言ってこの手の事には喜んで金を出すもんだよ、男って。それにこれはオマケもついているんだよね。このお尻部分の金具に別添えの玩具がつけられることになってんの」

珠稀が指差した先にあるのは、白くてふわふわした毛の塊だった。ボリュームたっぷりのそれは動物の尻尾を模した飾りで、根元には何かに装着する為のパーツが付いている。

「見て見て〜。こうすればより一層ワンコみたい。どう?可愛いでしょ?」

まさか。

どう考えてもろくな使い方はしないだろうと想像がついたが、やっぱりその通りだった。下着と尻尾の金具を珠稀が器用な手つきで合体させると、めでたく尻尾付き穴開きショーツの完成である。

(こ、こんなのを着たら、私……)

そんな格好をさせられてしまったら、もう完全に変態ではないか。

いや、それ以前にこんな破廉恥なものを身につけて人前で姿を晒すなど、恥ずかしすぎて死んでしまう。

「さ、脱いだ代わりに今度はこれを着てみて。早くしないと、無理矢理アナルにでもぶっとい玩具を突っ込むよ」
「ひっ!?」

珠稀に凄まれて、名無しは慌ててベビードールに手を伸ばす。

震える指で布地を掴み、ゆっくりと肌に着けていく様子を、彼はじっと見つめていた。

その視線が気になって仕方がないが、ここで躊躇えば何をされるか分からない恐怖心の方が勝り、名無しはそのまま足を通していくことにする。

ベッドの上に座ったまままずは右足を入れようとして足を折り曲げると、必然的に正面にいる珠稀に秘部が丸見えの格好になってしまう。恥ずかしくて、名無しは顔を真っ赤にして俯く。

だがすぐに気を取り直して左足も同じように通し、腰まで一気に引き上げる。羞恥心で両目を潤ませつつ、ワンピース部分も何とか無事に着用することが出来た。

「うん。可愛い…。いいねえ、実にエロくて。加点します。女と見ればすぐに裸を見たがる男もいるけど、俺は全裸の状態より着衣エロの方が断然腰にくるけどなあ。穴開き下着の考案者とは、美味い酒が飲めそうだよ」

恥ずかしい。珠稀の視線が、声が、台詞が、今自らが置かれている状況が、この恰好が、お尻についている尻尾が、何もかもが恥ずかしい。

今にも消えてしまいたいくらい恥ずかしいのに、身体が熱くて堪らない。

特に下腹部の奥深くから湧き上がってくる正体不明の熱は、無視できないくらいに大きくなっている。

「あれ?どうしたのかな、名無しちゃん。もじもじしちゃって」
「っ!」
「もしかして、興奮してるの?」
「ち、違……っ」
「嘘ばっかり」

からかいを含んだ声と共に、珠稀の手が名無しの首筋を撫で上げた。

「ひぅっ」

突然の刺激に名無しの身体がピクンッと跳ねる。

そのまま珠稀の手は彼女の鎖骨付近へと移動し、ワンピースの肩紐を指でなぞった。

「あんっ…」

反射的に声が漏れてしまい、慌てて口元を押さえる。

しかし、珠稀はそんな名無しの様子を愉しそうに眺めながら、紐を摘まんでクイクイッと引っ張る。

「ほら…途中で引っかかってる。どうしてこんなに乳首が立ってんの?まだ俺は何もしていないのに。そんなに尻尾付きのエロ下着が気に入ったの。それとも、これからされることを想像して興奮しちゃったのかな」
「んっ…ぅ…、ゃ……あ……」
「嫌じゃないだろ?こんなに硬くして……。ああ、そうだ。せっかくだから、自分で触ってみたら?人に見られながらやるのって、きっと気持ちがいいよ」
「え……」
「だって、君はとってもいやらしい子なんだもん。自分の指であちこち弄って、オナニーして見せてよ」
「そ、んな……」
「当然、出来るよね。名無しちゃん」

なんて残酷な言葉を、残酷な瞳で。

耳元で囁かれた低い声音にゾクッとして、名無しは思わず身震いした。そして同時に、身体の奥で燻っていた熱が更に温度を上げたような錯覚を抱く。


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