三國/創作:V | ナノ


三國/創作:V 
【Under WorldX《前編》】
 




俺自身を動物に例えるとしたら何かって?そうだねえ、名無しちゃんにはどう見える?

珠稀さんは犬科なら猟犬か野生の狼、猫科なら獅子、虎、豹あたり?へえー、そうなんだ。

残念ながらそれはないね。俺は見ての通り、人畜無害なハムスターだもん。もしくは、せいぜい普通の猫。

それも野良じゃなくて完全飼育の、生まれて一度もお家から外に出たことのない、超箱入りの家猫ってところかな。可愛い可愛い猫ちゃんでーす。ふふっ!

ねぇ、名無しちゃん。犬と猫といえばさ、君はどっちが好き?

俺は動物全般にそれほど興味はないけど、あえて選ぶとしたら犬かなあ。

犬はいいよね。犬って完全な上下社会でしょ。集団生活の中で、まっすぐ縦一線の権力図で構成されている。

誰が一番上であるのか、明確な順位付けを行う。己の立場を弁え、上位の雄には絶対服従。つまり、最上位の俺ってこと。

俺が『待て』と言えばいくらでも待つし、『来い』と言えば来るし、名前を呼べば喜んで尻尾を振る。ははっ、めちゃくちゃ可愛いな。俺、そんな聞き分けのいい性奴……じゃなくて、女の子が好きなんだよねえ。

それに比べて、猫って気まぐれで、わがままで、飼い主のこともただの同居人とか餌当番とか、下僕程度にしか思ってないってよく言うじゃん。

それが逆に猫の魅力!って思う人間もいるらしいけど、俺は別に気まぐれでわがままなメス猫に振り回されたいわけじゃないんだよなあ。そういう性癖の持ち主じゃないんでね。

どこまでも俺に従順で、素直なメスがいいわけよ。そう、例えば君みたいなさ。

俺のことが大好きで、ご主人様のためなら何でも言うことをきく、健気で可愛いメスなら犬でも猫でもどっちでもいいよ。

俺のために毎日せっせと働いてくれて、俺が裏切れと言えば平気で友達を裏切り、俺が見捨てろと言えば仲間を見捨て、俺が殺せと言えば家族でも殺す。

身の回りの世話から何から何まで無償でしてくれて、夜になったらエロ下着をつけて俺を気持ち良くしてくれる、俺だけのために存在する最高のメス猫。そんな都合の良い子がいたら、もう最高じゃん。

楽しみだよ、名無しちゃん。一日も早く君に頑丈な首輪を付けてあげたくて。君がどんな鳴き声を聞かせてくれるのか、今からゾクゾクして仕方ない。

大丈夫、安心していいよ。俺が飽きるか君が死ぬまで毎日可愛がっていたぶって、飼い殺しにしてあげるから。

そうして最後の瞬間まで、俺の腕の中でにゃあにゃあ可愛く鳴いていればいいのさ。

ああ……とっても可愛いよ、名無しちゃん。涙に濡れたその表情、恐怖で青ざめる唇、快楽地獄で痙攣する身体、助けを求めて懇願するその絶叫。本当にたまらない。もっともっと泣かせたくなる。

君の何もかもが俺好みすぎて、心臓の鼓動が高鳴りすぎて、喰い殺してしまいたいくらいだ。

ひょっとして、これが初恋ってヤツなのかな。俺、君の前では童貞になっちゃうのかも。

やだなあ、そんなに見ないでよ。俺、これでも一応恥じらいの心とかあるし。好きな子に見つめられちゃうと、さすがの俺も結構照れるし……。




それじゃあそろそろ、いただきます≠オようか。




────女は絶望に染まった顔が一番そそるぜ。





―珠稀夢・【Under WorldX《前編》】


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