三國/創作:V 【悪魔の花嫁V】 一瞬だけ躊躇った名無しだが、すぐに言われた通りに衣服を止めている金具や紐に手を伸ばし、手際良く外していく。 シュルシュルッという心地良い音を立て、名無しの着ていた高級な布地で仕立てられた衣裳が床の上に落ちていった。 同時に、真っ白な肌で覆われた名無しの裸体が曹丕の目の前で曝け出される。 「……。」 全裸になった名無しは込み上げる羞恥心のあまり言葉もなく、曹丕の面前で立ち尽くしている。 「その手は…邪魔だろうが」 名無しが両手で胸元と下半身を必死で隠している事を注意すると、名無しは林檎のように一層顔を赤らめながらゆっくりと手を退けた。 (……どうやら何もされていない、か) 名無しの肌に探るような視線を注ぎながら、曹丕は少しだけ安堵した。 キスマークのように目に見える跡もなく、いかにも情事を終えた後のように汗ばんだ肌でもない名無しを見てそう思った曹丕だが、勿論それだけで『シロ』と判断した訳ではない。 言葉では上手く説明出来ないが、鋭い人間なら自分の夫や妻、恋人が浮気したかどうか位何となく匂いで嗅ぎ取る事が出来る。 相手が何も言わなくても、肌で分かるというか、虫の知らせと言うか、第六感みたいなものである。 (まあ、立ち姿だけでは何とも言えんが) そんな事を思いつつ曹丕はベッドの端に腰を下ろし、床の上に立つ名無しから少し離れた位置で彼女の裸体をもう一度見直した。 「そ、曹丕…その…あんまり見ないで……」 己の全身に痛い程注がれる男の視線に耐え切れず、名無しが泣きそうな声音で言葉を絞る。 「お願い……。そんな風に、み…見ないで……」 「主人に向かって、その口の利き方はなんだ」 と、曹丕になじられて、名無しは慌てたように言い直す。 「み、見ないで…下さい。曹丕…お願いします……」 そう言って瞳一杯涙を溜めて、恥ずかしそうに俯く名無しの可愛い姿に曹丕の端整な顔が思わず緩む。 しかし曹丕は、もっと素直で従順で、曹丕の為なら何でもやってみせるという名無しの淫らな姿を見たいと思っていた。 「誰が口答えをしていいと言った?あの男を助ける為なら何でも私の言う通りにすると言ったのは、他ならぬお前のはずだ」 「……はい」 諦めにも似た空気を漂わせ、名無しは頬を赤くしたまま観念したように返事をした。 体を包んでいた衣服を失い、冷たい空気に突然晒されてしまったせいか、名無しの腕にはザワリと鳥肌が立っている。 「……見られているだけで感じるのか?お前は。どうしようもない女だな」 曹丕はツンと固く尖っている名無しの乳首をじっと見つめてから、わざとらしくクスッと笑ってそう言った。 単純に、他人に見られているからという訳ではなく、夜の冷気に触れた名無しの乳首が生理的に反応している場合がある事も曹丕は勿論知っている。 しかしこの時曹丕が放った意地悪な台詞は、名無しの羞恥を煽るのに十分だった。 「…ご、ごめんなさいっ。曹丕…許して…っ」 どうしていいのか分からず、曹丕の言葉を受けた名無しは今にも泣きだしそうな声を上げた。 案の定、名無しの両目には涙が溢れ出し、今にも涙の粒が零れ落ちそうである。 曹丕はそんな愛らしい名無しを見て、男前の顔でニヤリと笑う。 「お前はどんな仕置きがいいと思うのだ?名無し」 「し、仕置き?」 曹丕の言葉を聞くなり、名無しはまたビクンッと体を震わせる。 『お仕置き』という淫らな単語に名無しが敏感に反応しているのは、一目瞭然だった。 「そうだ。どんなモノがいいと思う。私の言う事を聞かなかった上に、許しもなく勝手に感じている…こういういやらしい…淫らな女に相応しい仕置きというのは」 「あぁぁ…、そんなぁ………」 名無しは、曹丕の悩ましい眼差しと官能的な低い声を耳にしただけで、今にも果ててしまいそうな程に感じてしまっていた。 一度こうなってしまったら、もう、自分ではどうする事も出来やしない。 曹丕と司馬懿の手によって開発された体は、己の理性や感情で抑える事が名無しには出来ない。 一旦彼らの眼差しや声によって火を点けられてしまった欲望は、彼らによって鎮めて貰う以外に方法はないのだ。 「なんだ…。私の声だけでイキそうなのか?これから仕置きをする所だというのに、今からイッてしまっては話にならんだろう。我慢しろ」 「は…、はいっ…。でもぉ……」 曹丕の言い付け通り必死に堪えるようにして、名無しが切なそうな表情でキュッと唇を噛み締める。 勝手にイッてしまわないように、下半身に力を入れるようにして懸命に耐えているような名無しの姿が、曹丕の目には何とも言えずに可愛く映った。 「許しもなくイッたら、この話は無しだ。お前の頼みも聞いてやらないし、秀英も……助からない」 心にもない事を言って、曹丕は思わず名無しを余計に苛めてみたくなってしまう。 他でもない曹丕のその言葉は、名無しにとってメチャクチャ威力があった。 自分が素直に言う事を聞かない限り曹丕は頼みを聞いてくれないのだと思って、名無しは泣きながら必死に首を振って曹丕に許しを求める。 「わ、分かりました…。曹丕の言う通りに……します……」 ポロポロと、名無しの目尻から大粒の涙が零れ落ち、頬を伝って流れていく。 彼女の涙が床の上に落ちて丸い染みを描くのを見つめ、曹丕は楽しそうな笑みを見せる。 「では…これから私の命令通りに動くんだ。いいな」 凛々しい顔で残酷な事を言い出す曹丕にドキンッと胸の鼓動を高鳴らせながら、名無しは涙を流しつつコクリと頷く。 名無しはもう、曹丕の意のままに動く従順な召使いのようになっていた。 いや、召使いと言うよりは、奴隷と言った方が今の彼女の姿にはしっくりくるのかもしれない。 [TOP] ×
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