三國/創作:V | ナノ


三國/創作:V 
【悪魔の花嫁V】
 




「ひっ…あっ……」

蝋が肌に落ちる度に女は切れ切れの悲鳴を漏らしていたが、その様子を黙って見ていた司馬懿は呆れたように吐き捨てる。

「馬鹿が…。何故あんな中途半端な責め苦しか与えてやらんのだ?何の為にあの女が犬のように四つん這いになって歩き回っていると思っている。あれではあの女は少しも喜ぶまい」

相変わらず震える手付きで蝋を少しずつ垂らし続ける客の姿を目の当たりにし、曹丕もまた司馬懿と同じように冷めた視線を当の男に向けていた。

(初めての客か、あいつ。仲達の言う通りあれでは女の努力が水の泡だ)

あんな意気地無しでは到底M女の求める事に応えてやれず、立派なご主人様になれる資格はない。

曹丕と司馬懿がそう思って冷めた目線で客と女を見ていると、女はやがて客の手から蝋燭を受け取り、調教人が女の鎖を引きずって曹丕達の前にやってきた。

ここに座っているのは大得意の上客であるとオーナーから事前に知らされているのだろう。

自分達の面前に座っているのがあの曹丕と司馬懿であるという事まで店の者が知っているのかどうかは知らないが、調教人は深々と頭を垂れ、女は恭しい動作で二人の足元に跪き、まずは司馬懿に向かって蝋燭を捧げ持つ。

「後ろ髪を掻き上げてうなじを出し、尻をこっちに向けろ」

淡々と言い放つ司馬懿の命を受けた女は彼の言う通りに片手で後ろ髪を掻き上げ、真っ白なうなじを剥き出しにすると、犬のように這い蹲った姿勢のままで司馬懿に向けてお尻を高く上げて突き出す。

司馬懿は女から受け取った太くて大きな蝋燭を利き手に持つと、薄い皮膚に覆われている女のうなじから背中、そして背中から尻にかけてボタボタボタッと勢い良く熱い蝋の滴を零していく。

「ひいいい…ああああ─────っ」

あまりの熱さに女は大声を上げて仰け反り、鎖の音をガチャガチャと響かせて床の上で転げ回る。

司馬懿はジタバタと身を捩る女の体を足で軽く蹴って仰向かせ、尚も容赦なく女の柔らかな乳房や刺激でツンと尖った両乳首の先にドッと大量の蝋を垂らしていく。

「ひえええっ…」

その光景を見ていた一部の客達からうわごとのように小さな悲鳴が漏れ、彼らの喉を生暖かい唾液が通り抜けていく。

女は、司馬懿によって与えられる責め苦に脳天がクラクラする程に強烈な快楽を得ていた。

しばらくゼェゼェと呼吸を乱し、その甘美な刺激に身も心も浸りきった後、女は懸命に両手を踏ん張って元通りの四つん這いの姿勢になる。

「有り難う御座います、ご主人様…」

女はそう言って司馬懿の足元に唇を寄せ、感謝の意味を込めて司馬懿の靴にキスをした。

そして女は司馬懿に蝋燭を返して貰い、彼の隣に座す曹丕に向かって再び蝋燭を捧げる。

「仰向けになって、私に向かって足を大きく左右に広げろ」

曹丕はそう告げて女から太い蝋を受け取り、妖艶で支配的な力に満ちた笑みを零す。

曹丕の命に従って女が冷たい床の上にゴロンと仰向けになり、長く伸びやかな両足を左右に大きく割った直後、曹丕は何の躊躇いもなく女の肩から鎖骨へ、乳房から乳首へ、腹から太股へ、そして綺麗に刈り揃えてある陰毛の下に隠されている肉芽めがけて水のようにボタボタと高温の蝋をかけていった。

「ああああ─────っ」

情け容赦無い曹丕の行為に、女が身を捩って悶える。

あんな敏感な部分に熱した蝋の滴を直接垂らしてしまって大丈夫なのだろうか、火傷するんじゃないだろうか、とハラハラしながら見守る先程の『初心者』客の心配をよそに、女の表情と絶叫は間違いなく喜悦の色に濡れていた。

曹丕が女の中心部分に溶けた蝋を落とす度、女の体はバネ仕掛けの人形のように跳ね上がり、細い腰をビクビクと震わせては絶頂に達している。

その遣り取りを他の客達はじっと見守り、ある者はゴクリと生唾を飲み、ある者は何かに取り憑かれたように見入り、会場全体に重く甘酸っぱい、興奮しきった空気が立ち籠める。

女はしばらくブルブルっと全身を痙攣させて快感の余韻に浸っていたが、やがて我に返ったようにハッと意識を取り戻し、司馬懿にしたのと同じように礼を告げて曹丕の靴先にチュッ、チュッと何度もキスをした。


「あああ…。ご主人様……」


ウットリ。


女は恍惚の表情を見せてそう呟くと、長い足を組んだ優美な姿勢でソファーに腰掛ける曹丕と司馬懿の顔を交互に仰ぎ見る。

「こんな風になったのは初めてか?」

探るような目付きで自分を見据える、曹丕のすさまじい色気に女の視線が縫い止められ、女は完全に情欲に浸りきった眼差しで曹丕の瞳を見つめ返す。

噂には聞いた事があるけれど、これこそがまさに魔性の瞳だ。

上手く言葉で説明する事が出来ないが、確実に人ではない何者かの瞳だ。

黒曜石のような輝きに満ちた漆黒の瞳の中に、女の羞恥や自尊心、プライドといった諸々の要素を全て吸い込み、粉々に破壊してしまうような、妖しい力に満ちた魔物の瞳だ。

「聞かれた事に正直に答えろ。女……こうなったのは初めてなのか?」

言葉を無くしてしまった女を訝しげな目付きで見下ろし、曹丕に代わって司馬懿が問いただす。

その言葉に誘われるが如く女が司馬懿に目線を向けると、司馬懿の顔にもまた曹丕と同じで妖しくも美しい黒曜石の瞳がついており、まるで女の心の奥底まで覗き込むような魔性の輝きを放っている。

「どうなんだ?」

低く、体の底まで響いてくるようなしっとりと濡れた声で司馬懿に再度問われ、女は両目一杯涙を溜めながら何度もコクコクと頷く。

「そうか。本当に初めてだったのだな。お前は良い主人に未だ巡り会えていないようだ」

曹丕はどこか哀愁を帯びた、心の底から哀れむような視線を女に注ぐと、長い指先で女の髪を掬い取り、絡めるようにして弄ぶ。


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