戦国 【悪党】 普段滅多に見られる事のない、今にも泣きそうな名無しの顔を観察しながら返事をした。 「今から、ちょっとお前の事を犯してみようと思って」 「!!」 まるで『今からちょっと買い物に行って来る』とでもいうような、この上なく軽い俺の口調。 その全く心が込められていない言い草に、名無しの顔がさらに悲痛に歪む。 そう。俺はこの顔が見たかったんだ。 いつも柔らかい微笑みを浮かべている、笑顔の『向こう側』が見てみたかったんだ。 お前のこんな顔を見たのは俺が初めての男だろう? 「ふっ…。お前には…選択肢は二つある。このまま黙って俺に抱かれるか、大声を出して人を呼ぶか」 「……三…成……」 「三つ目は、無い。賢いお前なら…この意味が分かるだろう?」 「ひっ…ぁ…。嫌…そんな…」 俺の言葉で全てを悟ったかの如く、ついに名無しの瞳から一筋の涙が伝って落ちた。 そう。三つ目はこの俺の行為を止めさせるという事だ。 しかしいくらお前でも素手ではとても男の俺には適わない。 「人を呼びたければ助けを求めてもいいぞ…名無し。俺は、止めはせん」 「あっ…いや…。三…成…やめて……」 やめて。 やめて。 まるで壊れた人形のように名無しは俺の下で何度もその言葉だけを泣きながら繰り返す。 あの名無しが俺の為だけに泣いている。 その事実はゾクゾクする程俺の征服欲を満たしてくれた。 「ふふっ…名無し。お前がこうして泣くのは初めて見るな。俺に裏切られたとでも思っているのか?」 「う…そ…。だって…貴方は…今まで…何も…」 ───何も、しなかったのに? だから甘いというんだ。名無し。 そんな事でよく今までこの男社会で輪姦されずにすんできたものだ。 それにもう一つ。 人が人を『裏切る』。 そんなのこの世にはいくらでも平気で転がっている物だろう? 「い…いや……んっ……」 声が外に漏れない意味も込めて、名無しの両手を押さえ付けながら俺は突然その唇を覆う。 初めて触れた名無しの唇の感触は柔らかくてしっとりと濡れていて、とても気持ちのいいものだった。 「んっ…三成…苦しい…やめて……」 名無しが暴れれば暴れる程、どんどん口付けを激しく深い物へと変えていく。 「んっ…はぁ…っ…」 唇をたっぷりと塞いで時折軽く吸い上げるだけで、名無しの唇から甘えたような声が溢れ出た。 素直な反応に気を良くした俺はそのまま自分の舌を差し込むと、思うがままに名無しの口の中を掻き混ぜた。 「……いゃぁ…三成……」 苦しそうに目に涙を滲ませて、名無しが俺の名前を口にする。 普段の名無しからはとても想像出来ないような甘ったるい鳴き声に、柄にもなく動悸が早まった。 こいつ…ひょっとしてかなりの上玉なのか? ちゅっ。 「…はぁ…っ…」 淫らな音を立てて一旦唇を離してやれば、唾液の糸が互いの唇を伝って夜の闇に妖しく光る。 腰にくるような甘い喘ぎ声を出して涙で濡れた目をして俺を見上げる名無しを見ると、頭がクラクラしてしまって考えがうまくまとまらない。 「ひっ…く…。ひどい…三成…。どうして…こんな事…っ」 「……名無し」 ゴクリ。 無意識に、喉が鳴る。 その姿を目の辺りにした途端、俺の思考が反転した。 計画は、変更だ。 「…名無しは…俺の事が好きか?」 「……っ!」 一度こうだと決めたら俺の切り替えは早い。 さっきまでの高圧的な態度とは打って変わり、飛び切り低く甘い声を出して名無しに聞いた。 「あんっ…何…言って…。貴方は…私の…っ……」 カアッ…と頬を真っ赤に染めながら、名無しが『同僚』という言葉をなぞろうとした。 その唇の動きに内心チッと舌打ちすると、俺の胸中にメラメラと急速に何かの炎が燃え上がる。 「ならば、好きにさせてやる。俺が愛しくて愛しくて堪らなくしてやる。そうすれば…お前は俺の物だ」 「ひ…ぁ……。三成……やめて……」 そう宣言すると、俺は再び名無しの唇を激しく覆い尽くしていった。 「…んっ…三成…。だめ……こんな……」 甘くて滴り落ちるような名無しの声が、俺の情欲をさらに刺激する。 どんな女にも拒まれた事のないこの俺に、そんな事を言うなんて。 「そんな口、今に聞けないようにしてやる」 「あぁ…ん…三成ぃ…ぁっ…」 そう言って震える名無しの胸元に手を滑らせていくと、胸の突起を摘んで弄ぶ事にした。 「あんっ…」 指先で撫でたり揉み上げたりを繰り返し、爪先で突いてやると、赤く膨れてその存在を示し始めた。 [TOP] ×
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