戦国 【悪党】 「しかし、こうしてる時間が勿体ないな…。俺もどこか適当な大浴場で、さっさと風呂に入ってくるか」 無駄な時間を持て余す事が無いよう、俺も別室で入浴を済ませてくる事にした。 手早く着替えの用意をすると、部屋を出て下の階の浴場へと向かう。 はち切れんばかりの大きな期待感と、卑俗な欲望が俺の胸を包んでいく。 決まり事はただ一つだけ。 『恋にルールはない』。 そう言うと、必ず《そんなのはフェアじゃない》とか意味不明な事を抜かす奴が出てくるから困る。 俺は『公平』という言葉が大嫌いだ。 だってこの世で本当に『公平』な事なんて、何一つ無いだろう? 「ただいま…って、あれ?三成ったらいつの間にもうお風呂に入ったの!?」 俺が手早く風呂に入って名無しの部屋でくつろいでいると、丁度5分遅れ位の時間差で当の名無し本人が寝間着に着替えて部屋に戻ってきた。 「別に。今日は疲れたから早く寝たいと思ってな」 しれっとした口調で用意していた言い訳をすると、名無しの顔が僅かに曇った。 「そう…。じゃあもう休んだ方がいいよね。灯り、消そうか?」 「悪いな、名無し。お前の仕事も途中で切り上げさせる事になって。まだ続きをやるつもりなんだろう?」 「いいよそんなの…、また明日で。私も三成の邪魔をしない様にもう寝る事にするね」 当然、そうくると思った。 俺が疲れていると呟けば、必ずお前も俺の邪魔をしないように隣で眠るはずだとな。 全てが俺の思う通りに行き過ぎて、何だか笑えてきてしまう。 「やっぱり降ってきたね…。この分だと、明日の朝までずっと降るのかな」 そう言いながら名無しがふっと息を吹きかけて、行燈の灯りを一つ一つ消していく。 風呂から戻る際に見た外の景色は真っ暗で、激しく打ち付ける様な夏の雨がザーザーと大きな音を立てて降り続いていた。 目を閉じると、もう雨の音しか聞こえない。 周囲の音が何も聞こえない。 女を抱くのに、あつらえ向き。 とうとう全ての灯りが消えて、黒く染まった室内では何の光も感じることが出来なくなってしまった。 「おやすみなさい、三成。今日も一日お疲れ様」 「……おやすみ、名無し……」 いつも通りの就寝の挨拶が、この日の俺にとっては黒く淫らな欲望の、始まりの合図となる。 ザアァァァ……… ドクン。ドクン。 降りしきる雨音と共に、俺の心拍数が徐々に上昇していく。 じっと息を潜めて隣の布団で眠る名無しの様子に神経を集中させていると、しばらくしてすぅすぅと名無しの気持ちよさそうな寝息が聞こえた。 日頃の疲れが溜まっているのか、思ったよりも早く名無しは眠りについたようだった。 「……。」 物音を立てないようにゆっくりと慎重に起き上がる。 無防備な寝顔を見せている名無しの寝姿を冷酷に見下ろしながら、俺は知らず知らずの内に自分の口元に笑みが浮かんでくるのを止められなかった。 今こそ、俺の物だ。 俺はずっとこの日を待っていた。 寝ている名無しの布団をそっとめくって剥ぎ取ると、相変わらず気持ちよさそうに眠る名無しの姿が闇夜の中に浮かび上がる。 手慣れた手付きで名無しの寝間着の帯紐を解き、少しずつ静かに脱がせていく。 「ん……」 素肌が外気に触れた感触に、名無しがぴくんと体を震わせる。 どうやらまだ起きていないようだ。 その雰囲気を察した俺は構う事無く作業を進め、完全に紐を解いて寝間着を大きく広げた瞬間に名無しの白い全裸の肢体が鮮やかに俺の瞳に映し出された。 驚くほど、何の傷もない白い肌。 この肌に今から好きなように跡を付けられるかと思うと楽しくて仕方がない。 ギシッ。 俺が名無しに被さるようにして体重をかけた途端、畳が軋む音がする。 今から目の前の女を犯すのだ、という合図のようなこの音が、俺は一番好きなんだ。 「んっ……、ぅ……?」 畳の軋む音と自分にのし掛かる正体不明の『何か』の重みに、名無しの意識が表の世界へと呼び戻される。 ようやくうっすらと瞳を開けた名無しを俺は冷静に見下ろしていた。 「……っ!」 「やっとお目覚めか?名無し」 意味深な笑みを浮かべる俺を見て、名無しの顔が瞬く間に恐怖に染まる。 いちいち説明なんかされなくったって、女なら誰でも今自分に降りかかっている状況が、本能的に理解出来るだろう。 「み……三成……?どういう……」 「どうって…それを本当に俺の口から聞きたいか?」 極力この状態の俺を刺激しないようにしようとしてるのか、名無しが震えながらか細い声で問いかける。 [TOP] ×
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