戦国 | ナノ


戦国 
【FAKE】
 




もっともっと罪悪感を抱けばいい。罪の意識を感じればいい。

織田と豊臣の人間が藻掻き苦しむ事だけが、今の某の唯一無二の癒しなのだから。

「名無しの身体で某の身体と心を癒して欲しい」
「!!」
「君の事が欲しいんだ。冗談じゃなく、某は本気だ。こんなに誰かを欲しいと思ったのは初めてだ」
「は…ぁ……。長政……」

情熱的にも取れるような某の口説き文句を聞いて、名無しがこれ以上話を聞きたくないとでも言うかの如く、キュッと堅く目を閉じて俯いている。

余りにも強情な名無しのその態度を見た某の心の中に、メラメラと激しい炎の嵐が吹き荒れていくのを感じた。

元々某はかなりの負けず嫌いな男だ。

ここまで露骨に抵抗されてしまうと、意地でも自分の物にしたくなってしまう。

「ねぇ…名無し。こっちを向いて。お願いだから……」
「……イヤ……っ」
「某が悪かった。もう君に強引な真似はしないから……。お願いだから、顔を上げて某を見て……」
「や…だぁ……。離して…長政……」

腸が煮え繰り返るような気持ちを必死で自分の中へと押し隠し、この上なく優しい声のトーンを出して名無しの耳元で囁きかけた。

そのまま何度も優しく名無しの髪を撫でてやると、少しずつ名無しの顔が某の方へ向けられてくるのが分かる。

「こっちを向いて、名無し……」

あと少し。もう少し。

「や…ぁ……。でも……長政……っ」


ほんの少し。


視線さえ合えば……


「───某の目を見て」


ギンッ。


「……あ…っ……?」


さっきまでの生温い視線とは訳が違う、某の瞳。

雪だけではない、幾多の女達の自由を奪ってきた某の深く激しい眼光が、名無しの自由をも同じように奪い取っていく。

「どうしたの…?名無し。そんな目をして某を見つめて」
「あぁ…っ…。なん…で……?」

とろん。

己の変化が信じられないとでも言うように、名無しが何度もふるふると左右に首を振る。

まだ理性が残っているだなんて大した物だな。

普通の女なら、その身分に関わらず、一瞬で何も考えられなくなるのが関の山だと言うのに。

「寝室に行きたい?名無し。それとも…ここで立ったまま某に抱かれる方がいい?」
「あぁん…。長政ぁ……」

ペロリと名無しの首筋に舌を這わせて舐め上げると、名無しが自力で立っていられないとでもいうように、某の肩にしがみつく。

焦点の合わない瞳をゆらゆらと揺らめかせる名無しの姿は、彼女の中から次第に理性が失われていく様子を顕著に表していた。

「立ったままなんて…イヤぁぁ……。そんなの…恥ずかしいよ……」
「そう?某は別にどっちでもいいよ」
「……っ。寝室が、いいの……」
「じゃあそうしよう」

クスリと名無しに微笑みかけて、某は名無しの身体を軽がると抱き上げた。

「あっ……」

急に体が宙に浮いた感覚に、名無しが小さな悲鳴を上げる。

そのまま名無しを奥の方へと連れていき、寝室の扉を器用に片手で開けてやると、すでに敷かれている布団の上に名無しをそっと下ろす。

「……長政……」

不安気な表情を滲ませて、名無しが震えながら某を見つめている。


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