戦国 【FAKE】 巧い感じに着衣を乱し、髪型も適度に崩して揉み合った感を演出すると、某は適当な場所まで彼女の遺体を引きずっていく。 ゴロリ。 物言わぬ状態になった肉の塊を地面の上に転がすと、服に付いた土埃をパンパンッと自分の手で全て綺麗に払い落とす。 (……これで5人……) これで最後。 そう。最後にする。 某が名無しの為に手にかけた女の人数は、雪で丁度5人目だった。 自分と関係のあった女1人1人を呼び出して、関係を終わらせるという事を先週からずっと続けていたのだ。 素直に引いてくれた女には何の危害も加えなかったが、雪のように最後まで抵抗を続けた他の4人の女達は、すでに彼女と同じ運命を辿っていた。 (今のままでは、絶対に某の事を名無しには信用して貰えない) 気の遠くなる程面倒臭い作業だが、それでも周囲の女との関係を断ち切る事は必要だ。 某が名無しを口説くという行為の信憑性を高める為に、必ず避けては通れない道だと知ってる。 (……雪……) 無言のまま横たわっている雪の額に、私は身をかがめてそっとキスをした。 「さようなら、雪。このまま……二度と目を覚まさないでくれ」 さようなら。愛しい人。 心の中で付け加えた。 さようなら。 ……………永遠に。 心の奥底で1人呟いて、某は彼女の遺体に背を向けた。 突き刺さるように冷たい夜の空気を肌にひしひしと感じながら、自室に戻ろうとした某はゆっくりとその場から歩き出す。 愛した女を殺める度に、自分の中で何かが死んでいくのを感じた。 「あっ…。な、長政様!!」 「きゃああっ、本当。長政様がいらっしゃったわ…!」 部屋に帰る為に城内の長い廊下を歩いていると、前の方から女官達の黄色い叫び声が聞こえてきた。 誰にも見つからずに帰りたいと思ってわざわざ遠回りするルートを選んだはずなのだが、城の女達はあっさりとそんな某の姿を発見していた。 いつも思う事なのだが、女という生き物は本当に目ざとい。 黙って歩いているだけだというのに、何故自分はこんなにも女達の注目を集めてしまうのだろう。 ちょっとだけ、嫌になる。 「今晩は、長政様…。こんな夜遅くにどちらへいらっしゃるんですの?」 「こら、君達。もう夜も遅いのだ。そんなに大きな声を出しては、もう寝ている人間を起こしてしまうだろう?」 本当は、某の名前をこれ以上大声で叫ばれたくないだけだったのだが。 優しい猫なで声を出してそっと女官達の頭を撫でてやると、誰も彼もがうっとりと熱を帯びたような眼差しで私の事を見上げている。 「あぁっ…。すみません、長政様ぁ…。こんな所でお会いできたのが嬉しくて、つい私ったら大きな声を……」 「ちょっと!何で長政様の事をそんな目をして見てるのよ。私の長政様にそれ以上近づかないで!」 「あら、何よ!図々しい。長政様は誰の物でもないんだからね。あなたこそそんなにベタベタ長政様に触ろうとするのはやめなさいよ!」 「そうよ、そうよ!長政様は私達皆の憧れの殿方なんですからねっ!」 某の腕にしっかりと腕を回してしがみついている女官に対し、他の女官達が強い口調で口々に文句を言い出した。 [TOP] ×
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