戦国 【罪と罰】 たっぷりと自らの唇を重ねて彼女の唇を覆っていくと、たまらなく甘い声で彼女が某の名前を呼んだ。 「は…ぁ…。いゃぁ…長政殿…だめ…だめぇ…」 「───長政、と呼んで。名無し…」 まるで恋人同士がするように互いの名を呼び捨てにさせようとする。 まずは形からというか、こんな単純な事でも女は喜ぶものだと言うことを某は経験から知っていた。 「あんっ…そんな…長政ぁ…」 なんて色っぽい声を出す人なのだろう。 ちゅっ、ちゅっと唇を重ねるだけのキスを辛抱強く重ねながら彼女の様子を見る事にする。 ここで無理矢理彼女を組み敷いて、大声で助けでも呼ばれたら全てが終わってしまうからだ。 「某に…キスされるのはイヤなのか?名無し…」 「ゃ…ぁっ…」 切なく直向きな表情を造り、甘く低い声を出して名無しに囁く。 熱っぽく彼女の顔を見下ろしながら唇と唇が僅かに触れるだけの優しい口付けを何度も与えているうちに、某の胸を押し返そうとしていた名無しの腕からどんどん力が抜けていく。 「某の事が本気でイヤなら…遠慮なく殴ってくれ」 ちゅっ。 ちゅっ。 「あぁん…長政ぁ…」 「口を開けて…名無し。せめて唇の中だけでもいい。早く名無しの中に入りたい…」 「あっ…いやあ…だめなの…長政…」 「舌を入れるのは、だめなのか…?じゃあこのままずっとキスさせて。名無しが気を失うくらい、ずっとずっとキスさせて…」 まさか断られるなんて思わなかった。 どんな女も某がこうして唇を重ねれば、一刻も早く舌を絡めて欲しくて自分から口を開く女達ばかりだったのに。 こんな夜更けに彼女の許しもなく部屋を尋ねてくる無礼者がいる訳ないとは思うのだが、絶対に誰もこないというような保障もない。 時間をかければかける程某の身の危険が高まっていく事になる。 ───さぁどうする。 「ん……長政……」 怯えと快楽の混じり入ったような表情を浮かべ、私のキスを震えながら受けている様子の名無し。 ここを突破出来れば、某の望みが叶うのだ。 そう思った某は覚悟を決めた様に瞳を閉じて、彼女に与える口付けのみに全神経を集中させた。 この身がどうなろうと承知の上だ。 限りなくハイリスク・ハイリターンなこの行為。 だが某は彼女がどんな女であろうと堕とす確固たる自信を持っていた。 「あぁぁ…長政ぁ……」 あれからもうどの位の間ずっとこうして彼女とキスをし続けていたのだろうか。 唇を合わせている内に某との触れるようなキスだけで立てなくなる位感じ入っていた名無しの体を軽がると抱き上げて寝所の方へ運んで行くと、そっと優しく彼女の体を横たえて熱い口付けを重ねていく。 20分位だろうか。30分位なのかもしれない。 初めこそ名無しを陥落させる為にしていたこの一連の行為だが、しっとりと柔らかく濡れている彼女の唇の感触に某の方が夢中になってしまっていた。 「んんっ…長、政……」 長い時間をかけた甲斐があったのか、名無しの声が某を求めるような甘さを秘めた物へと変化を遂げていく。 目は溢れ出る涙でうるうると濡れていて、甘い鳴き声はより一層男を誘うような淫靡さを含んだ物になっている。 「はぁ……長政ぁ……」 「口を開けて…名無し。いい子だから…」 「ぁ…んっ…だって…」 恥ずかしそうな表情を浮かべて名無しが困ったような顔をする。 その表情のあまりのいやらしさに某は頭がクラクラしそうになってきた。 「…長政…」 「……!」 ちろっ。 たまらなく甘えた声を出して某の顔を見上げると、名無しの唇が上下にゆっくりと開かれる。 チロチロと見え隠れする彼女の柔らかそうな赤い舌が、某を受け入れようとしている事を教えてくれる。 「名無し……」 そんな彼女の姿をうっとりと見下ろしながら、某はすでに勝利の感覚に浸っていた。 名無しを手に入れた。 某の手に、堕ちたのだ。 あぁ…… ────痛快だ。 「んぅっ…長、政ぁ…」 「あぁ…いい子だね、名無し…」 低くて甘い声で優しく名無しに囁きながら、またたっぷりと彼女の唇を覆っていく。 唇の割れ目にヌルリと濡れた舌を差し込むと、これでもう遠慮は無用とばかりに思う存分掻き混ぜて名無しの口内を犯していった。 「はぁ…だめぇ…。長政ぁ…変なの……」 「どうして…?名無しの中に入れられてるのと、同じ気持ちになってくるからか?」 「んんっ…違うの…そんなに…掻き混ぜちゃイヤぁ…」 「違わない…。一杯出たり入ったりするのが、名無しは好きなんだろう?」 名無しに対する某の口調も、意識的に強い物へと変えていく。 [TOP] ×
|