戦国 【innocent】 嬉しい。凄く嬉しい。 今度こそ受け入れて貰う事が出来たんだ。 「名無し殿……。実は私も、貴女の事が大好きなんです……」 「本当に?有難う、幸村……。……っ!?」 名無し殿が何か言おうとしていたが、私の体はもう意志とは関係なく動いていた。 寝込んでいる名無し殿の上に馬乗りになって体重をかけると、名無し殿の唇を先程と同じように覆っていった。 「んんっ……幸村……」 苦しそうに呼吸をしようとする彼女に何ら構う事無く開いた口の中に濡れた舌を差し込むと、ねっとりと舌先を這わせて歯の裏側まで舐めていく。 「はぁ……。いやぁ……」 甘く滴るような彼女の声が、余計に私の欲望に火をつけていく。 「んんっ…幸村…だめ…」 「は…っ…名無し殿…」 熱で伏せっているせいか大した抵抗も思うように出来ないのだろう。 目に涙を浮かべながら弱々しく私の胸を押し返してくる彼女の仕草に、たまらなく愛しさを感じてしまった。 「あぁん…幸村…どうして…こんな事をっ…」 「だって好きだって言ってくれたじゃないですか。私の事が大好きだって、言ってくれたじゃないですか…」 「ん…だめ…幸村…。違うの…そういう意味じゃなくて……」 そういう、意味じゃない? 意味がよく分からない。 じゃあどういう意味だというのだろう。 何だか無性に苛々してしまって、不可解な気持ちを名無し殿にぶちまける。 「男と女の間にある『好き』なんて、他にどんな意味があるんですか?抱いていいなら『好き』。抱かれたくないなら『嫌い』。それ以外に何の意味があるんですか?」 「ひっ…く…。幸村……」 「───もう一度、真剣に答えて下さい」 彼女の両腕を掴む私の腕に、ギリッと強い力が込められていく。 また同じだ、この感覚。 以前の彼女に『他に恋人がいる』と告げられた時の感覚がまざまざと甦る。 「名無し殿。名無し殿は私の事が好きですか……?」 「うぅっ…。い…痛い…幸村…腕が痛い……」 ギリッ。 「ぁ…ぅっ…!」 「私の事…大好きだって言ってくれましたよね…?それとも、嘘なんですか?」 ねぇ、名無し殿。 貴女も他の女達と同じだと言うのですか? 貴女も前の女と同じように、口から出任せの思わせ振りな台詞を吐いて、男の純情を弄ぶつもりなのですか? 「ぅ…ひっく…。違…っ…。幸村の事が好きなのは…本当なの…でも…」 「あぁ…名無し殿…。私の事が好きなんですね?」 好きという言葉を確認するや否や、もうそれ以上名無し殿の話を聞いている余裕はなかった。 何かを言いかけた彼女のその唇を、もう一度激しく私自身の唇で覆っていく。 「んっ…んん…幸村…苦しい……」 「嬉しいです…名無し殿…。貴女も私と同じ気持ちを抱いていて下さったなんて…」 「……んっ…幸…村…もうやめ…て…」 激しい口付けの合間に途切れ途切れに甘い声で行為の中止を訴えている名無し殿は、両手を私に完全に押さえ付けられていて逃げる事も動く事も叶わない。 「ん…だめ…幸村ぁ…。お願いだから…離してぇ…」 「ああ…名無し殿。そんなに恥ずかしがる事はないのに…」 それでも必死になって体を動かして、私の下から逃げ出そうとする名無し殿。 うるうると濡れた瞳で私を見上げて甘い鳴き声を漏らす彼女の姿にもうメロメロになってしまう。 きっと私にこうされるのが恥ずかしくて、嫌がる演技をしてるんだ。 名無し殿、貴女という人はなんて純情可憐で可愛らしい人なのでしょう。 もう、たまらない。 私の事を好きだと言ってくれた貴女の気持ちが本当に嬉しくて、そんな貴女をめちゃくちゃにしてあげたくなってしまう。 「ぁっ……」 ぴくん、と何かに触れた感触に彼女の体が小さく跳ねる。 名無し殿に体重をかけて体を押し当てたその拍子にもはや完全にいきり立った私の熱い塊が彼女の下腹部に当たったのだろう。 「あ…、そんな……」 「……っ」 かぁっと顔を真っ赤に染めた名無し殿の恥じらう顔があまりにもいやらしくて淫靡な表情で、それを見た私はズンと突き上げてくる肉欲に目眩を起こしそうになってしまった。 「いやあ…なんで…幸村…こんな風になってるの…。イヤイヤっ…」 「はぁっ…すみません、名無し殿…。だって貴女の声があまりにも…」 ────いやらしくて。 「だめ…だめぇ…。あぁん…大きくしないで……」 ポロポロと涙を流す名無し殿の抵抗は徐々に弱くなっていき、唇からは苦しそうな吐息がかすれがちに漏れていた。 熱があるというのはきっと本当なのだろう。 一刻も早く名無し殿の体温を私が全て吸い取ってあげなければならない。 [TOP] ×
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