戦国 | ナノ


戦国 
【×××占い】
 




たまに知り合いの女がいるとあいつ、そんな風だったのか!≠ニ驚き、好奇心もそこそこ満たされたような気持ちにはなったものの、会話を聞いて己の脳内でイメージするだけの方法では全てを知るのは無理があった。

やはり、実際にその場に同席し、この目で見てみなくては今以上の情報取得は不可能なのだろうか。

気が付けば、楽しい時間はあっという間に過ぎ行き、もうすぐ会議の時間が迫ろうとしている。

(そろそろ戻るか?)
(そうだな)
(ああ)

会議開始まで残すところ20分程となり、女陰占いの盗聴にもそろそろ飽きてきたという表情を浮かべた彼らは互いに目配せをした。

もう十分楽しんだし、いい加減帰ろう。

そう思って退席しようとした直後、和室の扉がスーッと開き、新たな来訪者の存在を告げる。


「失礼します。遅くなってすみません。まだ占って頂けますか?」


………えっ?


どこか聞き覚えのある女性の声。

妙な胸騒ぎを感じ、男達の足がピタリと止まる。

「ええ。いいですよ。多分あなたが本日最後の方となりますね。どうぞそちらへお座り下さい」
「本当ですか!?有難うございます。もう先生が帰られるお時間だと思ったのでご迷惑かと思いましたし、次回にしようかと思ったのですが、惹庵先生に占って頂けるチャンスは滅多にないという事でおねね様が熱烈にお勧めして下さったものですから……」

この声。そしておねね様。

彼らの脳裏にある女性の姿が浮かんだが、同時に否定の声が生まれる。


まさかな。いやまさか!!


「ほう。おねね様のご紹介とは恐れ多い。もしや、どこぞのお姫様でしょうか?」
「いえ、滅相もない!私はただ秀吉様にお仕えし、この城で働かせて頂いている文官の一人です。名を名無しと言います」
「おお…!あなたがあの名無し殿ですか!石田三成殿と組んで共に秀吉様の補佐的な仕事に就いていらっしゃる方とか。おねね様から話はよく伺っております。お会い出来て光栄です」
「そんな…、勿体ないお言葉です。私の方こそこうして惹庵先生にお会い出来て光栄です!」

この声と名前、明るく穏和なしゃべり方、そして惹庵と交わした遣り取りが決定的な証拠となり、男達の脳内で彼女の名前が強烈な閃光となってスパークする。


─────名無しじゃないか!!!!


(はあ〜!?冗談じゃないっ。なんであいつがこの場所に!!)

名無しの登場を知った三成は形の良い唇を歪め、普段の彼にしては珍しい程に動揺したような素振りを見せる。

名無しがここに来たという事は、今から惹庵の占いを受けるという事だ。

それはすなわち彼女が惹庵の前であられもない姿を披露するという事であり、惹庵に秘部を見せ、場合によっては触診までされてしまうかもしれないという事を意味していた。

その事実を悟った三成の顔付きから余裕の色が消え失せ、代わりに焦りと苛立ちに満ちた三成の眼光が和室の障子越しに名無しを見る。

(そもそもなんでお前が惹庵の女陰占いなど受けねばならん。お前は他の女共と違い、恋愛運も男運も、自分に合う男のタイプも見て貰う必要などない。お前にはすでに俺がいるはずだ。なのに何故そんなものを希望する?俺の目を盗み、他の男の目でも惹き付けたいのか!?)

信じがたいモノを見るような眼差しで、三成が名無しのシルエットを睨む。

恐ろしい目付きで和室を睨み付けているのは三成だけではなく、まだそこに居た幸村や長政も同じだった。

(名無し殿…!?何故ですっ。私という男がありながら、どうしてあなたが見ず知らずの老人に秘部を見せてまで男運を占って貰う必要があるのですかっ。ひょっとして名無し殿は私との関係に内心不満を抱いているとか?他に新しい男を探そうとしていらっしゃるのでは…!?そんな…そんなっ…!!)

負のスパイラルで頭が一杯になってしまっているのか、和室の方向を見つめる幸村はすっかり顔面蒼白である。

(名無し…どうしてここに。先程のお紋という女性と同様に、君も何か某に不満を抱いてここへ来たのか。某なりに大切に扱っているつもりであったが、それは某の勝手な思い込みで、某の愛情は君には届いていなかったということなのか?)

夫の態度に不満を抱いて惹庵の元を訪れたという先程のお紋の話を思い出し、長政の美しい顔が苦悶の色に彩られていく。

三者三様の思いを秘めてそれぞれが和室を凝視していたが、名無しの本心を知っているのは他ならぬ彼女自身だけ。

名無しがどういうつもりで女陰占いを希望しに来たのかは分からないが、ただ確実な事はこのまま彼女が占いを受ければ惹庵の前で着物の裾をはだけ、白い両足を大きく左右に割り、ぬるぬると潤う秘部に男の指を深く差し込まれ、喘ぎ声を漏らす羽目になるという事。

このまま黙って帰れない。

それが今の時点で分かっているというにも関わらず、無視して部屋に戻る事だけは断じて出来ない。

かと言って、今ここで名無し達の前に飛び出して行ったら、何故ここにいたのか?いつからいたのか?という事になる。

ここでずっと身を潜め、中の様子を伺っていた事が惹庵にも名無しにもバレてしまい、逆に自分の立場が危うくなってしまう。


(────くそっ!!)


湧き上がる怒りと衝動をこらえ、仕方なくといった感じで三成・幸村・長政は再度元いた場所に身を潜め、とりあえず事の成り行きを見守る事にした。

三人がその場から動かずに偵察体勢を復活させた事に気付いた残りのメンバーは、彼らのただならぬ様子から何やら不穏な気配を察し、とりあえず空気を読んで自分達もその場に留まろうと結論付ける。


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