戦国 | ナノ


戦国 
【×××占い】
 




某月某日、某所にて。どうでも委員会¢謔T0回。

そこで取り上げられた議題を追求するべくという崇高な目的の元に、豊臣の若い男性武将数名が西の和室周囲に集結していた。

正則・清正・宗茂は縁側の下に、左近と三成は庭に生えている木々の陰に、長政と幸村は巨大な庭石の陰にと、皆適当な場所に身を潜めていた。

荒っぽい戦闘以外にも、普段から敵地への潜入や偵察活動も行っている彼ら武将達である。そんな男達にしてみれば、世間一般人である惹庵や女官達に気付かれない程度にその周辺に身を隠すのは朝飯前のことだった。

(……本当にここで場所は合っているんだろうな)
(シッ。誰か来る!)

互いにしか聞こえない程度の小さい声で清正が正則に確認しようとすると、何者かの接近を感じた宗茂が長い人差し指を唇に添えて静かに≠フ合図をする。

すると、清正達の頭上でスーッと襖が開く音がして、誰かが室内に入ってきた。

「失礼します、惹庵先生」
「先生、お邪魔致します」

始めに聞こえてきたのは年配の女性の声、次に聞こえてきたのは若い女性の声。

「どうぞ。そちらにお座り下さい」
「先生、どうかうちの一人娘を占ってやって下さいまし。よろしくお願いします…!」

女性達に着席を促す老人の声は惹庵であろう。そして、会話の内容から察するに、どうやらこの二人は母と娘という組み合わせのようだ。

大切な一人娘の将来を案じた母親が、惹庵の評判を聞きつけて娘を伴ってやってきたという事か。

「承知しました。ではお嬢さん、裾をまくって大きく両足を開いて下さい。あなたの秘所がワシによく見えるよう、出来るだけ大きく開脚するのです」
「……は、はいっ……」

ギシッ。

畳が軋む音がして、惹庵が娘の方へと体を向け、彼女との距離を詰めたのが分かる。

恥ずかしそうに、消え入りそうに小さな声で娘が囁いた後、シュルシュルッと帯を解く音が漏れ聞こえ、娘がゆっくりと両足を開いていくような気配がした。

(うわ…ほ、本当にやっているんですか…!?)
(落ち着け、幸村殿)

まるで信じられない、と言わんばかりの顔で庭石の陰から室内の様子を静かに伺う幸村の肩を、長政が優しい手付きでそっと叩く。


「うーむ。これは……」


ゴクリ。


何かを思案するような惹庵の声が響き、その場に静寂が訪れる。

あられもない姿をさらけだし、占って貰っている最中の娘と付き添う母も相当緊張しているだろうが、近くに潜んでいる男達もまた何とも言えぬ緊張感で包まれた。

実際に中の光景を見る訳にはいかず、一体何がどのようにして行われているのか、惹庵達の会話から自分達なりにイメージしてみる事だけしか出来ない為、男達は重要な情報を一言も聞き逃すまいと皆必死だった。

「ふうむ…。ざっと拝見した所、お嬢さんは未だ嫁入り前の生娘とお見受けしますな。違いますか?」
「!!さ…さすがは惹庵先生っ。そうです、その通りです。うちの娘はまだ結婚相手が決まっておらず、親として出来ればいい所に嫁がせてやりたいと考えているのですが。それでこの度惹庵先生に見て頂いて、娘の男性運と娘に合った殿方のタイプを是非ご教示頂きたいと…!!」

惹庵の診断結果に母親は興奮気味の声でそう一気にまくしたて、土下座する勢いで畳の上に頭を付けた。

母の反応からするに、この娘は本当に処女なのだろう。

実際に抱いてみたというならいざ知らず、開脚させて秘部を見ただけであっさりとそう見破る惹庵は、確かに聞きしに勝る凄腕の鑑定士のようだ。

「ふうむ…そうですな。お嬢さん、ちょっと失礼。触診しますよ」
「えっ!?あっ…、そのっ…!!」

惹庵の節ばった手が突如己の秘部に向かって伸ばされ、未だ男性経験のない娘は本能的な恐怖心から『ひっ』と小さく声を上げた。

「こらっ。何をしているのです。せっかく惹庵先生が占って下さるのですよ。おとなしくじっとしていなさい!」

しかし、すぐに母親から叱咤の声が飛び、母親に逆らう事も出来ない娘はギュッと固く両目を閉じて仕方なく惹庵と母親の言う通りにする。

「うむ…。このふっくらとした大陰唇の形といい、陰毛の茂り方といい…なかなかにして愛情深い相が出ておる…。男を立て陰で尽くす、非常に良い妻になるでしょうな。どれ、ちょっと奥の方も失礼……」
「あっ…そんな……。先生……ああっ……!」
「ふむ。この粘り…悪くない。ぴったりと指に張り付く二枚貝の形状もまた、男を惑わす相ですな……。心配せずとも、お嬢さんは一度男性と深い仲になれば相手からとても可愛がられ、大切にされる女人じゃ。間違いない」
「あうぅ…ダメです…先生、そんな…あああん……」

溢れ出る声を必死に噛み締めるような娘の切ない喘ぎ声が耳に届き、男達の全身に戦慄が走る。


ちょっ…、何だこれっ。


あのジジイ、本気で指とか入れてないかーっ!?


彼らは互いに顔を見合わせ、マジで!?と言いたげな驚愕の眼差しで声のする方を凝視した。

惹庵は女性にとって別に恋人でも夫でもない男だ。

占いに必要とは言え、そんな人間が見ず知らずの女性の陰部をじっくりと鑑賞し、あまつさえ指を突っ込んで中の具合を確かめる事など許されるのだろうか。普通にセクハラ行為ではないか!!

しかし、惹庵の本業は産婦人科医である。

別に占いの為と称さなくてもこんな事は彼にとって普段から行っている仕事の作業工程であろうし、何の感情も不必要な日常風景の一つにすぎない。

そう思うと、普通の男性がするのと違って惹庵がするのであればそこに余計な邪念も下心もなさそうな気がするし、占いと言うよりも単なる診療行為のような気もしないではない。

彼のやり方を『いやらしい』と感じる人間の方が思考が汚れているというか、そう思う発想自体が間違っているのかも……。


(いや、でも、そうは言っても、だってさあ〜!!)


だってこれ、もう普通に前戯じゃん!!


腑に落ちない何かを感じ、男達はそれぞれ心の中で惹庵の行為がアリ≠ゥナシ≠ゥについて自問自答していた。


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