戦国 【×××占い】 「それって…中の様子を盗み聞きするって事ですか?じょ、冗談じゃないですよー!女性のそんなあられもない姿がすぐ隣にあるっていうだけでめちゃくちゃ緊張するじゃないですかっ。私はご免被ります!」 色々な事を脳内イメージしているのか、幸村はカーッと頬を紅潮させ、目に見えるほどにあたふたする。 と、言うよりもそれって人道的にどうなんですか!?と付け加える幸村の発言には、曲がった事が嫌いだという彼の性格がよく表れていた。 誰が来るかは分からないが、もしかしたら自分の知っている女性が来る可能性もある。 百歩譲って全く知らない人間だったら話を聞いてもへーそうなんだ£度に軽く流せるかもしれないし、女側の正体が割れないのであれば最低限の匿名性は守られるのかもしれないが、ふとした会話の中身からどこどこの誰々だという事が分かってしまったらどうするのか。 そんな幸村の心配をよそに、正則はますます興味深そうに目をキラキラと輝かせるだけである。 「なんで?知り合いだったら余計に嬉しいじゃん。あの女官が、お姫様がどんな判定を受けているのか!!とか全然興味ねーの?」 「興味というか…だったら余計に困りますよっ。相手の素性が分かってしまったら、明日からどんな顔をして接すればいいと言うのですか。私、絶対に顔に出ちゃいますよ。恥ずかしくて目も合わせられないし、隠し事をするのも苦手だし…。本当に…勘弁して下さいっ!」 そう言って真っ赤な顔で必死にブンブンと手を振って否定する幸村の反応はまるで童貞かと勘違いする程にウブであり、清らかさを感じさせる。 そんな彼の姿は城の女性達の目にとても誠実で好ましいものとして映り、さらに彼の好感度をUPさせる要因となっているのだが、いざ愛する女性との情事の際になると幸村は人が変わったように強引で押せ押せのパワープレイヤーに変化する事を彼女達は知らない。 「興味が全くないとは言えないし、普通に話が聞けるのであれば惹庵先生に伺いたいような気もするが…。かといって、わざわざそこに出かけてまで聞きたいというほどの気持ちも某にはないな」 「そうだな。興味はあるが、偵察したいと思うほどでもない。別に行きたい奴は行けばいいと思うが」 しみじみと漏らした長政に、宗茂も頷く。 「割とどうでもいい」 クールな口調で淡々と吐き出された三成の声の苦さには、彼が本心からどうでもいいと思っている様子が読み取れる。 そんな彼らの返答に、左近だけは意外そうに双眸を見開いた。 「なんだ、皆さん揃いも揃ってあっさりしてますな。俺は聞けるなら聞いてみたい気もするがね。話には聞いていても実際にどういう事をしているのか謎のままだし、俺の骨格鑑定との違いや類似点があれば今後の鑑定に活かしたいと思うし」 ジャンルは異なれど、自分もまた独自の鑑定方法を持つ左近にとって、惹庵の占いは下心抜きで純粋に知的好奇心をそそられる対象らしい。 賛成2、反対1、どうでもいいが4。 かように男達の反応は異なり、意見が見事に分かれた。 「カーッ…!まったくお前らはよー、お前らって奴らはよー…!!」 その事実を受け止めた正則はブンブンと勢い良く首を左右に振り回し、ついでに硬く握った拳もブルブルと震わせた。 情けない。実に情けない。 こんなビッグチャンスを前にしてこんな腰が引けた反応しか出来ないなんて、同じ男として情けない!! 「俺達大人の男にとって何よりも必要で、いくつになっても忘れてはならないものは何だ!?」 仲間達のつれない仕打ちに一旦は心が折れ、ガックリと肩を落としても、正則は持ち前のツッパリ魂でその5秒後には怒濤の勢いで立ち直った。 燃える闘魂の若武者は、同時にとても熱血魂全開で、ラテンの男の如く湯水のようにパッション溢れる非常に熱い人材なのだ。 「それは……遊び心だ────ッッ!!!!」 ド───────ン!!!! 絶叫する正則の背後で、謎の効果音が聞こえた気がした。 そればかりではない。目を懲らせば彼の背後にゴゴゴゴゴ…という爆音と共に火山が噴火し、熱いマグマの奔流がこちらに向かって迸ってくるような光景が見えてくるように思えるほどだ。 正則の熱い思いと轟く咆哮は若き武将達の闘争心にたちまち火を点け、体の芯から揺さぶられるような大きな衝撃が彼らを襲った。 「……遊び心か」 「そうだな。遊び心だ……」 「遊び心ですね……」 「遊び心……!!」 おおゆうしゃよ しんでしまうとは なさけない!! 正則の訴えを聞いた男達の脳裏に、何故かこの時ドラ●エでパーティが全滅した際の王様の嘆き声が届いた。 そうだ。正則の言う通り、俺達男にとって何よりも大切なものは一にも二にも遊び心だ。 そんな大切なものをこの瞬間まで忘れてしまっていたとは、なんという由々しき事態。 おお わかものたちよ あそびごころを うしなってしまうとは なさけない!! 「済まない正則…。お前のおかげで俺は何か大切な事を思い出したような気がするぜ!!」 「うんうん、いいってことよ、分かってくれりゃーいいってことよ!!」 正則に負けず劣らず熱い眼差しを見せる清正の姿を目に留めて、正則が感動したようにグスッと半べそをかきながらしきりに頷いている。 そう。こんな所でのんびりと花札をやってゴロゴロしている場合ではない。 まだまだ若い人生、貴重な時間をあやうく無駄に過ごしてしまう所だったではないか。 俺達の戦いはこれからだ!! 「ハイホ〜、ハイホ〜、仕事が好き〜♪」 正則によって眠っていた心を見事に揺り動かされた男達は全員勢い良く立ち上がり、謎の鼻歌を歌いながら軽快なステップで気分良さげに部屋から出て行った。 そして彼らは意気揚々と件の占い会場に向かうのであった……。 [TOP] ×
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