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戦国 
【×××占い】
 




幸村の問いを受けた三成は始め面倒臭そうな態度を示していたが、幸村の顔にあまりにも『なになに!?』という純粋な疑問と好奇心の色が見えたので、仕方なく口を開く。

「惹庵の本業は産婦人科医だ。もういい年の老人だが、言うなればそれだけの大ベテラン。今までの人生で取り上げた赤子は2000人は下らないと聞く。その道では有名な人物だ」
「へえ…そうなんですか。私、全然知りませんでした。いや〜お恥ずかしい」

素直に己の知識不足を認める幸村に、三成がどうでも良さそうな口調で呟く。

「ふん、別に。自分の嫁が出産するとか身近に妊婦がいると言うならまだしも、基本的には俺達男には関係のない話だし普通は知らん方が多いだろ」
「ははは!言われてみればそうですねっ。じゃあ何で三成殿はご存じなのですか?」
「さっき正則が言った『女陰占い』をしに去年惹庵がこの城に来たのだ。その時女官共から説明を受けて色々と知ったまでだ」
「そうなんですか。三成殿は相変わらず物知りですねえ」

幸村は三成の説明に深く納得するようにして毎回コクコクと頷く。

基本、三成はこんな風にして『それって何?』『どういう事?』と何でも聞いてくるタイプは教えてちゃん≠ノ感じて大嫌いな人間なのだが、幸村に対してはそんな彼でも不愉快に感じるケースは少なかった。

それは多分、幸村の持ち前の素直さと礼儀正しさからくる天性の憎めないオーラ≠ナはないだろうか。

三成のような気難しい相手を前にしてもスイスイッと気楽に懐に入っていける、得な素質である。

「で、さっきから聞くその『女陰占い』というのは何なのです?」

真面目な口調で一番気になっていた点を聞き返す幸村の顔を、三成が意味深な視線でチロリと舐めた。

「そのまま言葉の通りだ。女に股をおっぴろげさせて、女性器の色や形状、匂いその他の情報を元にして、そこから女の素質や未来を占うのだ」
「ふんふん、なるほど。女性に股をおっぴろげさせて、女性器の色や形状、匂いその他から素質や未来を……って、えええええ────っ!?」

三成の返答を律儀に繰り返していた幸村の言葉が途中で途切れ、代わりに彼の口から素っ頓狂な叫び声が迸る。

「えっ…それで占い!?実際に見るんですか!?えっ、ええええ〜…!?」

絶叫しただけでは飽きたらず、驚愕に満ちた声でアワアワと慌てふためく幸村と同様に、普段冷静な長政や宗茂、清正もまたさすがに驚いた様子で全員目を見開く。

三成の説明通り、先程正則が言った『女陰占い』というのは惹庵という有名産婦人科医が行う副業の一つ。

昨年惹庵が来た時には三成と左近、正則は城に居たので知っていて、長政・幸村・清正・宗茂の四人は丁度所用で城を空けていた日だった為、その事を知らなかったらしい。

職業柄毎日多くの女性達の陰部を見続け、場合によっては触診も行い、産婦人科医としての今までの何十年という生活によって蓄積された豊富な診察データと経験によって生み出されたのが彼の得意とするその『女陰占い』であった。

老いも若きも、一度女に足を広げさせれば、視診と触診によって処女か非処女か、初体験の年齢は、今までのおおよその経験人数は、最近セックスをしているのかしていないのか、名器なのかそうではないのか等々、あらゆる事を抜群の的中率でズバズバと言い当てるという惹庵。

その噂はあながち嘘ではないようで、彼の占いを希望した女達は皆一様にして『惹庵先生は凄い!!』と絶賛し、友人知人や身内の者に『あなたも是非占って貰ったら!?』『絶対やって貰った方がいいわよ!!』と興奮気味の声で持ちかけるそうだ。

もっとアソコの締まりを良くしたい、恋人や夫を虜にしたい…と願う女達には女性器の締まりをグッと良くする秘密の鍛錬法も伝授してくれるという惹庵は、悩める女性達にとっては何とも強い味方。

何より評判が良いのは女性器を診てから判断する惹庵の『恋愛占い』で、その女性の男運、そして相性のいい男性像まで教えてくれるらしい。

彼の占いに従って男性を選んだ女達によると、それが『めちゃくちゃ良く当たる!!』というのだ。

「女性器からその女の資質や未来を占うだと?馬鹿な…有り得ないだろ!」

たっぷり5秒はフリーズした後、ようやく呆けていた己の姿に気付いたのか、清正はそう叫んで半開きになっていた口を慌てて元に戻す。

「逆の立場で考えるとすれば、俺達男がナニの色や形状、匂いその他の情報がウンヌンでその男の資質とか出世するかどうだとか相性のいい女がどうだとか全部分かるっていうような事だろう?それはないぜ」

猜疑心たっぷり、到底信じられないと言わんばかりの口調で清正が言う。

占いの名前からして薄々もしかして…≠ニは思っていた内容だが、実際に言われてみるとやはり違和感があった。

「……確かに男性器の形状程度で個人の性質やら将来がどうだと言われては男としてたまらん気もするが、その惹庵先生とやらの世間の評判は上々なのだろう?だったらそう一概に決めつける訳にもいくまい」
「まあ…それもそうだが…」

それまで沈黙を守っていた長政の冷静な発言を聞き、清正はまあな、という感じで多少は彼の意見に同調する姿勢を見せた。

「長政の言う通りだな。実際俺が女なら受けていたかもしれんぞ、興味本位で。試しに一度くらい」
「うわ…。本気か?お前…」

長政の言葉に続き、いつも通りの涼しげな顔でさらりと言い放つ宗茂を、半ば呆れたような目付きで清正が見る。

すると、どれを捨てようと思っているのか、手札の絵柄をしげしげと眺めながら左近が語る。

「話だけ聞いてりゃ眉唾もんに聞こえる部分もあるだろうが、俺はそういう占いもアリだと思うぜ。俺の骨格鑑定だって女の見た目から総合的に判断しているんだからな」
「でたでた、左近の骨格鑑定。あれ本当に当たるのか俺も興味あるんだよなー。惹庵先生の占いと比べてその辺はどうなのよ?」
「バカ、そりゃお前、俺の骨格鑑定の的中率は今の所95%以上の正確さだぜ。女陰占いとは見る部分は違うが、負ける気はしねえよ」

興味津々といった様子で無邪気に尋ねる正則を横目で見据え、左近は気怠げな動作で煙草の煙をフーッと吐き出す。

大人の男の色気に満ちた島左近というこの男性も実は知る人ぞ知る骨格鑑定の修得者で、女性の体型や肉付き具合から夜の乱れっぷりや名器度をズバリと言い当てる恐るべき人物だ。


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