戦国 【三成クンの憂鬱】 (何だ?俺の聴力に異常がなければ、今物凄く面妖な事を聞いたような気がするが) 名無しが?今この段階でまだ処女かどうか?それは一体どういう考えがあっての質問だ? 彼女の寝込みを襲って目標を達成した事のある三成自身なのだから、勿論その答えについては自信を持って答える事が出来るだろう。 だが、そんな事実をわざわざこの叔父に説明してやる必要もないし、言うつもりもない。 しばらく考えてみても一向に思考がまとまらず、黙ったまま自分を見返す三成に対し、叔父はますます声を潜めて続きの言葉を述べる。 「実は、彼女をワシの愛人にと思っているのだが」 「………はぁっ!?」 何を言い出すかと思えば、このヒヒジジイ。 なんと叔父は三成の同僚武将である名無しに女性としての興味を示し、自らの愛人リストに加えたいと言うのだ。 ただの興味本位で言っているだけだとしても、冗談にしても最悪すぎる発言だと思い、三成は露骨に顔をしかめた。 「突然こんな事を言い出してお前が変に思うのも無理はない。ワシとて最初に彼女を見た時にはそれほど興味を抱かなかった。しかし先月、偶然殿との謁見の帰りに廊下であの女性に出会ってな…」 射るように突き刺さる甥の鋭い視線に気付いてか、叔父がポツポツと事の顛末を話し出す。 三成の方から聞いてもいないのに親切にも教えてくれた叔父の話によると、たまたま廊下で名無しと遭遇した際、彼女のあまりの変貌ぶりに大層驚いたという。 『わあ…!そのお顔…確か、三成の叔父様ではないですか?こんな所でお会い出来るなんて偶然です!』 叔父の姿を発見し、遠くの方からパタパタと小走りで駆けてきた名無しは、彼の顔を見るなり弾んだ声でそう言った。 三成の叔父が初めて彼女に出会ったのは2年以上前になるので彼自身はほとんど名無しの事を覚えていなかったが、記憶力のいい彼女は一緒に働いている同僚の叔父様≠ニしてしっかり男の顔を記憶していたらしい。 2年ぶりに再会した彼女は、彼が驚く程に匂い立つような色気を身に纏っていた。 昔会った彼女のイメージとは全然違ったので全くの別人ではないのか?と叔父は思ったが、話をしていくうちにどうやら本当にこの女性は間違いなく『名無し』だと分かり、男の心の中では一層戸惑いが増していく。 以前の名無しは、仕事熱心な性格が長所の一つではあれ、どこにでもいる普通の女性といった雰囲気であった。 しかし今の名無しはどうだろう。 蕩けるような眼差しで男を見つめる彼女の瞳はウルウルと潤んでいて、柔らかそうな桃色の唇は艶やかな光沢がある。 三成のオジサマ、と呼ぶ彼女の声はしっとりとして甘く、それでいてもっと聞きたくなるような心地良い響きを兼ね備えていて、着物の合わせ目からチラリと見える白い胸元からは女の色香が漂っている。 そして何より男の心を捕らえて離さなかったのは名無しの可愛いお尻だった。 着物の布越しに分かる名無しの臀部はふっくらとした女性らしい曲線を描いていて、男なら誰でも出来心でつい触りたくなるような、何とも言えないラインなのである。 「今思い返してみても、本当に、程良く発達した実に良い尻であった!」 大きな手で顎をゆっくりと撫でながら、叔父は夢心地のような顔付きでウンウンと頷きつつそう答える。 三成がこの叔父を嫌う理由その2。実はこの男、大層な女好きで目新しい女と見れば手当たり次第ちょっかいをかけたくなる性分だったのだ。 石田家の名を汚すような悪しき振る舞というのは、一番お前に相応しい言葉だろうが! 「何というかこう、妙に食指を動かされる体型でな。白い胸元といい、丸みを帯びた尻の形といい、あの声といい、男を見る時の瞳といい、一言で言えばとにかく旨そう。そう!ウマそうなのだ!!」 「……。」 「あの名無し殿がまさか二年足らずであのように色っぽい妖婦になっているとは夢にも思わなんだ。先月の事を思い出すだけで小僧のような胸の高鳴りを覚えるわ!!」 冷気に満ちた氷の視線を注ぐ甥の反応を完全無視し、叔父はグッと硬い握り拳を作って名無しへの思いを熱弁する。 叔父がこうも絶賛してやまない名無しの色気とは、実は目の前にいる甥の三成によってもたらされた付属効果であった。 あれから幾度となく三成に抱かれていた名無しは、その回数に比例するようにして女としての魅力を開花させていった。 今まで恋を知らなかった女性が恋をした途端に何だか綺麗になったとか、セックスを知らなかった女性がセックスを知った途端に色っぽくなったとか、よく言われるアレである。 女としての喜びを知る事により、とか性の喜びを…とか世間では色々な説が唱えられているが、もしそれが本当に名無しの身に起こったのだとしたら、彼女自身の心境の変化と共に三成の功績もまた大きかった事だろう。 秘められた内面自体には多少の難があれど、それ以外であれば外見・スタイル・アソコの性能・性的テクニックのどれをとってもスペシャル級に属する三成ほどの色男の腕に抱かれ、耳朶で直接彼の声を受け止め、彼の吐息を間近で感じ、体温を分け合う事が出来るのだ。 名無しとて豊臣の武将であると同時に一人の女性。名無し自身の意思に反して強引な手法で進められる行為ではあるが、三成のように種として優秀な雄に抱かれる事は雌として非常に誉れ高い事であり、彼女は本能的なレベルで強烈な刺激を受けてしまう。 その為、三成によって開発≠ウれた名無しの全身からはフワ〜ッと何とも言えない芳醇な女性フェロモンが漂い、今や若い男性から中年男性まで幅広くヒットする『旨味成分』を発散させていた。 「出来れば何も知らない処女の内から色々な事を教え込んでやりたいが、すでに男を知って熟れた身だというならそれもそれでまた良いかもしれぬ。くぅぅ…何でもいいからあの女性をワシの36番目の愛人にしたいっ!!」 身分の高い男性の特権であるように、三成の叔父もまた正式な第一夫人の他に第二第三の夫人、そして数多くの愛人達を所有していた。 名無しをその中の一人に加えたい、新しい女として愛人リストの末席に追加したい!とあれこれ夢を膨らませている叔父をよそ目に、三成は平静な態度で静かに茶をすする。 [TOP] ×
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