戦国 | ナノ


戦国 
【Snow】
 




「あぁっ…いやああ…。幸村…もっと……」
「…名無し殿…。もう溶けちゃってますよ、ここ……」

先程までの私の指の愛撫で、彼女の内部はもう十分過ぎる程に濡れていた。

外の寒さを物ともしない名無し殿の熱く熟れた粘膜が、私の物全体をキュッと締め付ける感触と相まって、冷えた体に何とも心地良い。

「あぁぁ…いいっ…。もっと…もっと…して……」

熱く堅い男の塊を目一杯奥深くまで飲み込みながら、それでもまだ足りないとばかりに名無し殿が白い腰を自らくねらせる。

しっとりとして甘ったるくて、聞いている者を見えない糸で絡め取り、捕らえてしまうように妖艶な名無し殿の喘ぎ声。

男に責め抜かれて自分を見失った時に見せる名無し殿のこの痴態が、私は殊の外大好きだった。

「……名無し……」

濡れた舌先でペロリと己の乾いた唇を湿らせて、私は堪らずに彼女の名前を呼んだ。

恋人同士のように彼女の名前を呼び捨てた途端、むせ返るような罪の香りが自分達の周囲を包み込んでいく。

彼女を腕に抱いている時に込み上げてくるこの背徳的な感情が、頭がクラクラするような、頭痛にも似た強烈な目眩を私に感じさせるのだ。

その行為自体は、酷く淫らで破廉恥な物かもしれないが、今の私にはむしろ神聖な行為とすら思えていた。

だって、普通、セックスなんて本当に好きな相手としかしない物じゃないですか。

割り切った金銭関係の、性欲処理にしか過ぎない娼婦とのセックスは別として。

だからこそ、両思いである私と名無し殿のセックスは、とても価値ある行為な訳ですよ。

こんな事を言うとまた三成殿辺りに馬鹿にされてしまうかもしれませんが、それでも別に構いません。

今の私と名無し殿の関係こそが、いわゆる『理想的な恋愛関係』なのだと、私は胸を張って言えますよ。

私達の愛の大きさに比べれば、他人の命の大きさなんて、まるで塵にも等しい存在です。

愛の為なら、人は何をしたっていいんです。

だってそこには愛があるから。

貴女がいてくれるなら、自分達以外の人間なんて、全部死に絶えたって構わない。

ああ…私の名無し殿。

今まで何十人、何百人と平気で人殺しをしてきた私でも、『普通の男』と同じような恋愛が出来て嬉しいです。


恋多き男と周囲から揶揄されてきた私なのですが、やっと貴女という運命の女性に出会えて良かったです。

前に好きだった女性にも、その前に好きだった女性にも、全く同じ事を言っていたという噂を耳にするかもしれませんが、心配しなくても大丈夫です。

私の過去の女性達は、全員どういう訳だか知りませんが、とっくの昔に死んでいるか、頭がおかしくなっています。

でも、名無し殿。昔の話なんて、どうだっていい事ですよね。

だってもう、私達は相思相愛なんだから。何も心配する事はないんだから。

そんな事は、どうだっていい話ですよね?

「あっ…いいっ。もっとぉ……」

大きく背中をしならせて、名無し殿が甘く滴るような声で鳴いている。

そして、背後から前後に突き上げる私の腰の動きに合わせるように、名無し殿も淫らに自分から腰を揺らしていた。

もっと奥深くまで、もっと目一杯、私を感じる為に動いている。

もっともっと、私の物を最奥まで飲み込めるように動いている。

彼女の何とも可愛らしくて悩ましく、淫靡な姿態を見せ付けられた私は、込み上げる愛しさで胸が一杯になってしまっていた。

「あぁん…幸村…もういやぁ…熱いの…。中が…中が一杯…溶けちゃう…」
「は…っ…。名無し…。名無しの中も…熱くて…溶けてて…気持ちがいいですよ……」

ピチャリ…と生々しい音を立てて、名無し殿の首筋や肩にキスを施しながら、私は甘く優しい声を造って彼女に告げた。

彼女の中に埋め込まれている私自身を何度も前後に往復させる度に、クチャクチャっという淫らな水音が、冷たい書庫の中に響いている。

「あっ…あっ…いや…もう…幸村…溶けちゃう……」

名無し殿の開いたままの真っ赤な唇から、透明な唾液が滴り落ちていく。

ジンジンと体の奥深くが熱く溶けていくような快感に犯されながら、耐え切れなくなった名無し殿が私に助けを求めていた。

ねぇ、名無し殿。女に生まれて貴女、何が良かったですか。

男に生まれる事が出来て、私きっと、良かったです。

だって、好きでも何でもない男に抱かれる事は、女性にとって最悪な事だと言うではないですか。

その点私と名無し殿は互いに深く愛し合っていますから、何の問題も無いのですが。

自分で言うのも何ですが、私はこれでもかなり恋人想いな男です。思いやりの深い男です。

世の中を見回してみても、こんなにも相手の立場になって考えて、愛する女性の事を大切に出来る男なんてそうそういないと思いますよ。

愛する女性を自分の腕に抱ける事は、男にとって大きな喜びの一つです。

男に生まれて本当に良かったと思える瞬間は、きっとこんな時ではないでしょうか?


[TOP]
×