異次元 | ナノ


異次元 
【魂喰い】
 




(あああん…!そ、そんなにしたら…だめ…もう……だめぇぇ────…!!)


自由に声が出せない分、名無しの情欲は体内に無理矢理押し込められる形となり、それが余計に名無しの快感を増幅させる結果となっていく。


限界だった。


「名無し……」


熱に侵されたように濡れた瞳で、うっとりと名無しの名前を呼ぶ司馬師と司馬昭の低い声が綺麗に重なる。

名無しから略奪出来る快楽の上質さに心から満足しているかに見える彼らの声は、普段の彼らには似合わない程に優しく、ゾクゾクするほどに甘かった。


お気に入り≠見付けた二人の眼が、暗く歪んだ光をギラリと放つ。


その姿はまるで人の精気を奪い、相手の血や肉どころか魂まで根こそぎ喰らい尽くすソウルイーター。


獲物を見下ろし、若く美しい兄弟が赤い舌で唇を湿らせてペロリと舌舐めずりする様は、血に飢えた魔物のように妖しく、鮮烈で、残酷だった。


ああ…、喉の渇きも支配欲も性欲も、何もかもが満たされる。


美味も美味。最高だ。


たまらなくいい。この餌は。


「んんっ…ぐぅぅ……」

司馬師と司馬昭のピストン運動が加速する度、名無しの瞳から涙が溢れ、唾液で濡れた赤い唇からは嗚咽のような声が漏れる。

前からも後ろからも二人の男根が奥深くまで到達している為、満足に呼吸すら出来ない。

(あぁぁ…あっ…またイッちゃうっ。いやぁぁぁ…止めて…誰か止めて…!!)

クチャクチャッと、名無しの部屋にいやらしい水音が響き渡る。

その音がなんなのか、名無しにはもう分からない。

自分が今どんな体勢で、どんな行為を受け入れているのかという事も、感覚が麻痺してしまっている為分からない。

司馬昭の分身に何度も口の中を出入りされ、司馬師に下から突き上げるようにして何度も腰を使われていくうちに、言葉に出来ない官能が電流となって名無しを貫く。


(あっ…だめっ…いやっ…イッちゃう────!!)


半狂乱になりそうな快楽の中、名無しがビクビクッと腰を跳ねさせてイキ果てる。

その瞬間、名無しの口と膣の中が一気に収縮し、司馬師と司馬昭の分身に絶大な快楽を与えた。

「……っ、ぁ…名無し…出る……っ」

司馬昭の腰がブルリと震え、名無しの喉の奥にドクドクッと熱い飛沫が放たれる。

ゴクンッ。

名無しはそれを吐き出す事も許されず、彼女の頭をググッと押し付ける司馬昭の行為によって無理矢理飲み込まされた。

「く…っ。イク……っ」

それとほぼ同時のタイミングで司馬師が名無しの一番奥の部分に先端が当たるようにして腰を叩き付け、絶頂を極めた証を彼女の体内に注ぎ込む。


(────!!)


口と膣の中にいっぺんに流れ込む熱い精液の感触に、名無しの頭が真っ白になる。

ドサリ。

心も体も完全に許容値を超えてしまった名無しは、何かの糸が切れたみたいにそこでプッツリと意識が途絶え、その場に崩れ落ちてしまった。

「あーあ…気絶しちまった。兄上が手加減しないからですよ、きっと」
「人のせいにするな。素直に順番待ちをしていれば良かったものを、お前が名無しの口まで塞ぐからだろうが」
「兄上のがデカすぎるのが原因じゃないですか?」
「規格外はお前だろう、昭」

名無しの中からズルリと分身を引き抜きながら、司馬師と司馬昭が互いに責任をなすりつける。

意識を失っても生理的な反応はまだ残っているのか、名無しの白い腰はビクビクッと小刻みに痙攣していた。

名無しの赤い唇と秘部の入り口からドロリと溢れ、太股の部分やシーツにまで流れ出ている二人分の体液が、情事の激しさを物語っている。


『お前────知りたいのか?』


夢の中で司馬懿が放った言葉が、司馬師の脳裏に蘇る。

あの時父は何を自分に尋ねたのだろう。何を教えようとしたのだろう。

この世には自分の知らない世界や楽しみが沢山あって、父はそれを自分に知らせようとしてくれたのだろうか。


(あなたに教えを請わずとも、私は一つの楽しみを発見しました。父上)


どれだけ大勢の女と肌を重ねても決して得られる事が出来なかった精神的な充実感。肉体的な満足感。

それが今、この名無しという女をいたぶる事により得られる事を知りました。

征服欲も、支配欲も、嗜虐的な悦びも、性の快楽も、どうやら名無しがその全てを私に与えてくれるようです。

まさかこんなに身近にそんな相手が隠れていたとは気付きませんでしたが、こんなにいい玩具が見付かった事に感動すら覚えます。

私だけではなく、昭も気に入ったとは一石二鳥。なんて都合がいいのでしょうか。


笑いが止まりません。


「……昭。私はこいつが欲しい」
「俺もです。兄上」
「この女の主人から奪いたい。代わりに私の事を主人と呼ばせたい」
「俺もです。……だったら奪っちまいましょうよ。兄上」

司馬昭の賛同を得た司馬師は、嬉しそうに少しだけ口元を緩めた。

だが、その微かな笑いさえ、司馬昭には偽りのものに見えた。

しかも兄の笑みは、ゾクリとするくらいに冷淡なのだ。

そして弟が今浮かべている笑いも同様に。



「…少し休憩したら名無しを起こすか。何事も最初が肝心だからな。きっちり調教、キメてやる」
「ははっ。そうですね。逆らう元気もなくなるくらい、俺と兄上ので腹一杯にしてやりますか」
「ふ…、あまり飛ばすなよ昭。玩具がすぐ壊れてはつまらんだろう」
「大丈夫。まだ遊べますよ」





─────喰ってやる。



この私が。この俺が。


略奪してやる。他人の腕から。


名無しが今の主人なんてどうでもいいと思うくらい、名無しの身も心も奪ってやる。


名無しの自我も理性も貞操観念も、何もかもを木っ端微塵に破壊してやる。


我々兄弟に迫られて、この顔と体の虜にならなかった女などいやしない。


恋人がいようが夫がいようが関係ない。どんな女もすぐ堕ちる。


だから名無しも簡単だ。


誘惑し、拘束し、犯し、喰い殺す。名無しの魂ごと掌中に収める。


あの白い肌にむしゃぶり付き、思い切り噛み付き、肌に穴を開ける。


毒牙から己の精と強力な毒をたっぷりと流し込み、名無しの脳も感覚も麻痺させる。


そして我々は確信するのだ。その時こそ、この飢えと渇きが完全に満たされる事を。


ああ……、可愛い名無し。お前は今夜から我々の物だ。


我々兄弟をその心と体で癒し、楽しませ、食料となり、魂の糧となってくれ。



この女の全てを喰らい尽くしてやる。




─────跡形もなく。





─END─
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