異次元 | ナノ


異次元 
【魂喰い】
 




「大丈夫だって。さっきの名無しの様子ならなんとかなるだろうぜ」
「そ、そんな…やめて…お願い…子上…っ」
「まあ、最悪切れて終わるだけだろうし。俺と兄上はキツキツの穴に突っ込めて気持ちいいし、別にいいんじゃね?」

男らしく大きな手で子猫をあやす時のように名無しの喉を撫で、司馬昭が言う。

名無しに語る司馬昭の声自体は優しいが、話の中身は残酷極まりない内容だ。

司馬昭は名無しの様子を見ながらどうしても無理そうならやめてやろうかと内心思っていたのだが、怖がる名無しが可愛いのでつい意地悪をしたくなる。

しかし、これを名無しは司馬昭の本音だと受け取った。


この人達────本気だ。


「い…や…そんなの…いや……」

ウルウルと瞳を潤ませ、名無しが悲痛な声を出す。

名無しは今にもショックで泡を吹いてその場に倒れてしまいそうなくらい、完全に怯えきっていた。

「いやいやっ…いやっ…!怖い…子元……!!」
「……!!おっと……」

次の瞬間、名無しは司馬昭に背を向け、司馬師に力一杯抱きついていた。

まさか名無しがそんな行動に出るとは思っていなかったので、一瞬反応の遅れた司馬師は慌てたように自らの腕を出し、名無しの体を抱き留めた。


(何─────!!)


兄に抱きつく名無しを唖然とした表情で見つめる司馬昭と同様、司馬師も内心そんな自分自身の行動に驚いて動揺していた。

投げられたボールをキャッチする時のように思わず条件反射的にしてしまったのだが、普段の自分からすれば有り得ない行為だ。

恐れを知らず、もしくは馴れ馴れしく自分に抱きついてくるような女がいても、それを決して許さず、全員突き飛ばしてやっていたのに。

「ひっく…怖い…子元…やめてぇぇ…」
「……名無し。私から離れろ。今すぐだ」

泣きつく名無しにコホンと小さく咳払いをし、司馬師が威厳に満ちた声で彼女の要求を突っぱねる。

「ご、ごめんなさいっ…子元…ごめんなさいっ」
「……。」
「私…怖い…そ、そんなこと…怖くて…本当に…怖くて……」
「……。」
「ごめんなさい…子元っ…私…言う事聞くから…だから…しないでっ。お願い……」
「……どんな事でも?」

名無しの表情を探るように、本心を読み取ろうとするような目で司馬師が見つめる。

名無しは、もうみっともないとか恥ずかしいとか、そんな事を言っていられなかった。

本当にそんな事をされてしまっては、自分の体がどうなってしまうのか分からない。

自分は誠心誠意を込めて司馬師達に訴えて、二輪刺しをやめてくれるように『お願い』しなくてはならないのだ。

「ひっく…子元…お願い…許してぇぇ……」
「……名無し……」

名無しはポロポロッと涙を流しながら、司馬師の首に必死でしがみついた。

するとさっきまで意地悪心MAXだった司馬師の心が、急速に和らいでいく。

司馬師はそんな自分の変化が、不思議で仕方なかった。

「ごめんなさい…ねえ…子元…許して…お願い……」
「ん……、名無し……」

ちゅっ、ちゅっ。

「子元……お願い……ねっ?」
「……っ。仕方のないやつだな、お前……」

ちゅっ、ちゅっ。

司馬師の気持ちを静める為に、名無しは何度も司馬師の頬に唇を寄せ、甘えるようにキスをする。

体中から甘い蜜のような香りを漂わせ、体を擦り寄せながら可愛い声で『ねっ?』とお願いしてくる名無しの姿に、司馬師の心が溶けていく。

普段は周囲の人間達から冷酷無慈悲と呼ばれる司馬師だが、両目一杯涙を溜めて自分にすがる名無しの姿を見ていると、心が安らぎ、優しい気持ちが生まれてくるのだ。

この女を可愛がってやりたい、少しくらいは甘やかしてやりたい…という彼にとっては初めての感情すら、司馬師の心の中に湧き出てくる。

「……昭。やめてやれ」
「え───!?」

突然告げられた中止命令に、司馬昭が『はぁ!?』という顔をする。

「つうか、何くっついてんですか兄上っ。名無し、お前もお前だろっ。なんで俺じゃなくて兄上に抱きついてんだ!?意味不明だろ、それ!」

いつの間にか名無しを自分から抱き締めている兄の行為も気に食わないし、自分を無視して司馬師に抱きつく名無しの行為も気に食わない。

独占欲の激しい司馬昭が兄に対してメラメラと嫉妬の炎を燃やしていると、名無しはするりと司馬師の腕の中から抜け出し、司馬昭の方に体をひねって向き直る。

「子上…、お願……」

名無しが司馬昭に対しても同じように行為の中断を求めようとした矢先、司馬昭の大きな手で肩を掴まれ、グイッと勢い良く彼の方へと引き寄せられる。

「しじょ…んんっ…!」

司馬昭は名無しの反論を許さないとでもいうように、名無しの顎を強く掴んで強引にキスをした。

「あっ…ん…んんっ…」

司馬昭のキスは、激しくむせるようなキスだった。

名無しが何か言おうにも、歯列を飛び越えて奥の方まで進入してきた司馬昭の舌が、名無しの感じやすい粘膜を縦横無尽に舐め回す。

「はぁ…ん…だめ…子上…んうっ…」

何度も角度を変え、唇の合わせ方も変えて、より深く、より強く名無しの舌を吸い上げる司馬昭のディープキスに、名無しは翻弄されていく。

先程は司馬昭を恐ろしいと感じた名無しだが、彼の周りに侍っている女達であれば誰でも歓喜し、腰砕け状態になってしまう荒々しくも巧みなキスを受け、名無しの腰は完全にトロンと蕩けきってしまった。

「は……ぁ……っ」

ちゅっ、と音を立てて司馬昭の唇が離れていくと、互いの唇を繋ぐ透明な唾液が糸を引いてキラリと輝く。

自分のキスにすっかり名無しがメロメロになっている事実を認めると、司馬昭は名無しの顎を再度掴み、自分の方に彼女の顔を向ける。


「しゃぶれよ。名無し」
「……あ……、や……っ」


唇が触れそうな程の至近距離で囁かれる、司馬昭の命令。

そのあまりの淫靡さに、名無しの瞳は自然と潤んでしまう。

「二輪刺しはやめてやる。けどその代わり兄上に抱かれている間はずっとくわえてろ、名無し」
「あ…そんな……やぁ……入らな……」

先程自分の膣で受け止めた司馬昭の巨大さをまざまざと思い出し、名無しが力なくフルフルと首を振る。

あんなに大きい物が、自分の口の中に入りきるのだろうか。


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