異次元 | ナノ


異次元 
【魂喰い】
 




「あっ…んっ…ひぃ…あっ…」

たったそれだけの事で、もっと強い刺激を求めるように、キュッと窄まっていた入り口が司馬師の指を受け入れるために柔らかく開いていくのが名無し自身にも分かる。

グチュグチュと聞こえてくるいやらしい音が、名無しの思考を奪い取っていく。


早く欲しい。


一刻も早く、もっと中まで擦って欲しい。


そんな名無しの心を的確に読み取って、司馬師は極上の美声をさらにグッと低めて名無しに命じる。

「言ってみろ。もっと中まで指を入れて欲しいと」

からかうような笑みを浮かべてはいても、常に平静さを失わない司馬師の冴えた瞳が、実験動物を見るような目付きで名無しを見る。

名無しがどんな反応をするのか、観察している。

「辛いだろう?名無し。言っちまえよ兄上に。早く欲しいって。奥まで掻き回して欲しいって」
「あ…あっ…そんな……」
「兄上だってそこまで鬼じゃない。素直に言えたら、俺も目一杯可愛がってやるよ。さっきからずっと濡れ濡れじゃん名無し。なあ……欲しいんだろ?」

濡れた舌で名無しのうなじを下から上へとツツーッ…と舐め上げながら、名無しを追い立てる司馬昭。


「さあ。入れて下さいって言ってみろ」
「言え。名無し」


魔性の誘いだ。


名無しの堕落を願う、残酷で冷酷で、それでいて甘美な誘惑の声。

悪魔のように美しくて妖艶な若者二人が名無しに残された最後の抵抗力を根こそぎ奪おうとする、麻薬のような声だ。

(だ…、め…。屈しちゃ……)

発熱する体。張り裂けそうな胸の鼓動。

追い詰める二人の視線に耐えきれず、名無しの脳がどんどん溶けていく。


(わ、た、し……)


口にすれば、入れて貰える……。



「あ……、い、入れて……下さい……」



トロン。


気が付いた時には、自らの意思に反して名無しはそんな事を口走っていた。

求めていた言葉を引き出す事に成功した司馬師と司馬昭の双眼が、妖しく輝く。

その瞬間、美しい悪魔がニヤッと笑ったのを名無しは確かに見たような気がした。



────名無しは堕ちた………。



「あぁぁ…早く…早く……」

どこまでも焦れったい司馬師の愛撫に我慢が出来ず、名無しは潤んだ瞳を司馬師に向けながら、自ら求めるように足を開いていく。

「ふ…。本人が欲しがっている物は、くれてやらないとな」

口ではそう言いつつ、もっと焦らそうと思っているのか、司馬師の指はことさらゆっくりと名無しの中に進入していく。

始めは名無しの秘部に第一関節だけ入れて、入り口付近の襞の感触を味わうようにして濡れた粘膜を丹念になぞる。

「あっ…あん…いや…もっと……」

ジワジワと湧き上がってくる快楽の波に翻弄され、名無しが白い腰をくねらせる。

「そんなに物欲しがって。ふしだらな女」

司馬師は薄く笑い、ズブズブと音を立てて名無しの望み通り彼女の奥まで指を押し込む。

「あっ…あああ────!!」

ずっと我慢していただけあって、その行為は名無しの体内に強烈な快感をもたらした。

濡れそぼった名無しの秘部に男の長い指がねじ込まれ、それがグチュグチュと淫らな音を立てながら前後に抜き差しを繰り返す度、名無しの呼吸がさらに乱れていく。

「ああ…んっ…そ…そこ…もっと擦ってぇぇ……」

気持ちいい所にピンポイントで指先が届くような、司馬師の意地悪かつ的確な責めに煽られて、名無しはもっとして欲しいとでもいうように淫らに腰を振っていた。

二人の言いなりになんてなりたくない。

心の奥底ではもう一人の自分が確かにそう叫んでいるのに、もっとこの感触を味わいたいという強烈な欲求に、その声がかき消されていく。

「ここをこうされるのが好きなのか」

司馬師は名無しの表情や喘ぎ声、腰のくねり方など微妙な変化を読み取りながら、名無しが敏感な反応を示す場所を選んでそこを何度も指の腹で弄る。

「あっあっ…子元…そこぉ…あああっ…」
「その反応からすると…ここも同時にこうされるとたまらない?」

司馬師はそう言い、名無しの中に入れる指を二本に増やした。

二本の指を器用に使って名無しが感じるいくつかのスポットを同時に擦りつつ、前後に抜き差しする動きも再開させてグチャグチャと犯していく。

「あああん…子元…イッちゃう……だめぇぇ……っ」

あえて一番奥の部分までは犯さず、その手前を蹂躙する司馬師の手淫だが、名無しに与える快感は最高潮に達していた。

「駄目だ。イクなよ名無し。まだ許さない……」
「ああーん…そんな…だって…子元…だってぇぇ……」

名無しが身を捩るようにして喘ぎ、今にも果てそうな事を涙ながらに司馬師に訴える。

今までとは違う、明らかに快楽を求めるような、なまめかしい喘ぎ声。

もう名無しの唇から零れ出るのは嫌がるものではなく、二人を求める言葉と男の欲望を駆り立てる色っぽい喘ぎ声だけだった。

「あぁぁぁ────っ」

弱い部分だけを責め続ける情け容赦のない司馬師の愛撫に、名無しは呆気なく果ててしまった。

絶頂を極めた名無しの艶っぽい鳴き声が室内に響き、白い内股が絶頂の余韻でピクピクッと痙攣する。

「またイッたのか…。堪え性のないやつ」

呆れたような口調で言う司馬師の顔は、よく見ると口元が笑っている。

わざと名無しがイクように狙って愛撫しておいて、『またイッたのか』と冷たく嘲笑うなんて、なんて意地悪な男性だろう。

名無しは恥ずかしさと情けなさのあまりヒック、ヒック…と嗚咽を漏らしながら、恨めしそうな目で司馬師の男前な顔を見上げた。

文句を言ってやりたいのに、そんな気持ちすら封じ込める魅力に溢れている司馬師。ズルイ。

「そんなに良かったのか?」

彼の命令に背いて勝手にイッてしまった事をまた怒られるかと思ったが、司馬師は普段の彼と比べてみれば幾分優しく感じられる声で名無しに問う。

自分の指だけで名無しが呆気なく果ててしまった事に満足しているようだ。


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