異次元 | ナノ


異次元 
【魂喰い】
 




「これを使うと性感帯がより敏感になるらしい。普通のクリップではなく、ちゃんと調教用として作られたものだから圧力も調整できて肌を傷付ける事はない。最初は痛いかもしれんが、慣れれば自分からして欲しいと懇願してくると聞くのでな……楽しみだ」

司馬師はそう言って、口元を少し緩めた。

淡々とした口調で告げる司馬師の説明を聞いて、名無しの頬を一筋の汗がツウッ…と流れて落ちていく。

知っている。

名無しはこの道具の名前を知っている。

司馬師に説明されるまでもなく、この道具の威力も知っている。

感度を上げる為だと言われ、名無しは以前この乳首クリップを一週間着けたままで過ごせと命じられた事があった。


それを命じたのは、他ならぬ彼らの父親────司馬懿。


あの時だけでも名無しは大変な目に遭ったのに、それをまさか彼の息子達にまでされる羽目になるなんて。

司馬師は司馬懿によく似ているとは思っていたが、こんな所まで同じだったとは。

「やだっ…やめてっ。お願いだからやめて…いやぁぁぁ────っ」

名無しの絶叫が、ベッドの上で響く。

だがどんなに叫んでも、救いを求めても、二人がやめてくれる事は無い。

この部屋の主は、本来名無しのはずだった。

それなのに、今や名無しは司馬兄弟の玩具と成り下がり、彼ら二人が名無しの上に君臨する王者のような存在になっていた。

「ひぃぃ…!」

司馬師が名無しの左右の乳首にクリップを装着すると、名無しの口から悲鳴が上がる。

身に覚えのある痛み。そう。まさにこれだ。

クリップで挟まれてギューッと摘み上げられた名無しの乳首は、先端に集中する刺激のせいで充血していた。

「すげー。真っ赤っかじゃん。どうなの名無し。痛い?それとも、女ってこうされると案外気持ちいいの?」
「ああん…痛いぃ…あっ…あっ…」

楽しげな司馬昭の問いに名無しは首を振り、乳首の痛みを訴える。

しかし司馬師は冷淡な瞳でじっと名無しを見つめたままで、決してクリップを外す事を許さない。

「お前の主人は誰だ。言え」
「!!」
「さっきの話だ。正直に答えろ。お前は誰に囲われている?」

司馬師は低いが威厳のある声で囁き、名無しの顎を掴んで自分の方に顔を向かせる。

名無しは苦痛と恥辱にまみれた両目を涙で潤ませながら、それでもキッと司馬師を睨み付けた。

「し、知りません……そんなこと……。あなたに……言う義務もありませんっ」

名無しの瞳には涙が溜まり、クリップによる刺激のせいで時折ビクビクッと体が震えていたが、決して司馬師を恐れての反応ではなかった。

「良い度胸だ」

冷たく吐き捨てる司馬師だが、そんな名無しの気丈な態度とか弱い抵抗と健気さが、胸の奥が痛くなるほど心地良かった。

男二人に捕らえられ、服を脱がされ、こんなにもいやらしい事をされ、調教具まで使われているというのに、それでも何とかして抵抗しようと試みる名無し。

絶対にあなた達の言うなりになんかなるものか、と言わんばかりの悔しそうな名無しの泣き顔が、憎らしいほど可愛らしく感じられた。

それは背後から名無しを押さえている司馬昭も同様で、なかなか自分達の思い通りにならない名無しを見て強い興奮を覚えていた。

こういう場合、相手に抵抗されればされるほど燃えるものだ。

ゾワワッと、全身の血が騒ぎ出すのが分かる。

もっと名無しを酷く虐めて泣かせてやりたいと、二人の心が叫んでいる。

「馬鹿な女だ。おとなしく答えていれば少しは手加減してやったものを」

従う気配のない名無しを見て、司馬師は左右のクリップについているつまみを回して圧力をさらに強くした。

「はぁぁっ…あああ…痛いっ…!痛い…子元…」
「言う事を聞かないお前が悪いんだろう。これは仕置きだ。聞き分けの悪い奴に気持ち良くしてやるなど誰が言った?」
「いやぁぁ…外して…お願い…」

ギューッと強い力で乳首を挟まれ、名無しの両胸の先端は言葉に出来ないくらいの強烈な痛みを感じていた。

なんとか我慢しようと頑張っていたのに、さらに強くされてしまうなんて。

「いやああ…ううっ…い、痛い…」
「お前の男は誰だか言え。素直になれば解放してやらん事もない」
「いやいやっ…いやぁぁ────っ」

名無しは乳首の痛みに耐えかねて、子供のようにメソメソと泣きじゃくりながら首を左右に振った。

解放されたいのはやまやまだが、名無しの『主人』の名前を言う方がよほど恐ろしい。それだけはどうしても出来なかったのだ。

「強情な女……」

忌々しそうにチッと舌打ちする司馬師は、普段は高価な衣装に身を包み、美しい容姿と類い希な才能に恵まれた若きエリートといった感じだった。

しかし、名無しを支配しようと企む鋭利な司馬師の双眼はただの金持ちのボンボンとは違い、闇の世界と繋がっているような冷酷さと威圧感、そして非情さが見え隠れしていた。

そんな司馬師に至近距離で見つめられ、名無しの背筋がゾクッと震える。

怖い。

この人に逆らったら、何をされてしまうか分からない。

だが、どうあっても主人の名を明かす事は出来ない。

「は…離して…。私…あなた達の物なんかじゃありません…っ。な、なんでこんな事をするのか分からないけど…私…子元と子上のお遊びに付き合わされるなんて…絶対に…お断りですっ」

涙ぐみながら告げる名無しの返事に、司馬師と司馬昭は思わず目を丸くした。


(────こいつ)


信じられなかったのだ。

恋人でもない男に、これだけの辱めを受けて、苦痛を与えられてもなお自分達に対して生意気な口を利く女がいるという事が、想定の範囲外だった。

曹丕や司馬懿の眼光を跳ね除けるだけでなく、自分達兄弟の命令にまで逆らうとは。

(これはなんとも虐め甲斐のある女ではないか)

おとなしそうな顔をして、いい根性をしている。

司馬師と司馬昭の心の奥底ではグツグツと熱い溶岩が煮えたぎり、名無しに対する支配欲、征服欲、独占欲といった様々な感情が生まれてくるのを感じていた。


あっさり犯してしまうにはもったいない。終わらせてしまうにはもったいない。


この女、もっと徹底的に虐め抜いてやらないと。


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