異次元 | ナノ


異次元 
【吸血王】
 




(ち……、どうなっている……!?)

まさかこの俺が、自制心を試されるとは。

さすがに名無しに求婚した男が全員名無しに手を付けていて、こんな彼女の姿を知る者が大勢存在している、というわけではないだろう。

けれども、一部の男たちの彼女に対する執着ぶりから考えると、普段通りの生活をしている間もじわじわと彼女の体内から何とも言い難い色気が漏出し、ふとした瞬間に男の心の隙間に入り込むのかもしれない。

そうだとしたら、名無しを見つめる司馬昭の意味深な視線も、狂乱に満ちた男たちの恋文も、司馬懿が語った毒婦≠ニいう表現も頷ける。

と、いうよりも、誰よりも司馬懿が凄い。この女と毎日、それも数年単位で顔を突き合わせて生活しているというにも関わらず平常心を保っている。名無し以上の化け物はきっとあの男だと思う。

「……信じられん。お前の中は……」

気持ちが良すぎる。

唇が触れそうな距離で、男が唸る。雄の官能を煮詰めたような妖しい光を宿す双眼で真正面から射抜かれて、名無しの膣壁はそれだけできゅうっと収縮し、軽く達しそうになった。

「こら…締めるな。まだイきたくは、ない」

男は眉根を寄せて堪えながら呻く。その額に浮かぶ汗の玉すら美しく、艶めかしい。こんなにも色っぽい男がこの世にいるのかとさえ思うほどだ。

「もう少し入れるぞ。いいな、名無し」
「いや…、いやっ…もうこれ以上は…、お願い…賈充……」
「断る」

男はきっぱりと断言し、その宣言通り、更に腰を進めてきた。ズンッ、と奥深くまで貫かれる衝撃に、名無しの理性は完全に焼き切れた。

「あ、あっ……ああぁぁ───!」

絶叫する名無しの反応を意に介さず、男は繋がったまま上半身を起こす。そして名無しの膝裏に手を差し入れて持ち上げると、自らは仰向けに寝転ぶ形に変更する。騎乗位の体勢だ。

「俺は本来、下になるのは好かん」
「う、うそ……。こ、んな……」

こんな格好。これでは全部、賈充に見えてしまう。湧き上がる羞恥で名無しは涙目になるが、男はお構いなしに彼女の腰を両手で掴み、名無しが逃げられないように固定する。

「だが……、お前相手であれば思ったよりもいいものだ」

低い声が、いつもとは異なり名無しの下方から響く。

「普段澄ました顔で綺麗事や甘ったれた理想論ばかり吐く女が、涙と涎でぐちゃぐちゃになった下品な顔でよがりまくり、俺の上に跨って淫らに腰を振る様を見物するのは、なかなかに気分がいい」
「いやぁぁ……、そんないじわるでえっちなこと、言わないで……」

いやらしい言葉を、賈充はあえて選んで投げ掛けてくる。その意図は明らかだ。羞恥心を煽り、名無しがより淫らに、よりいやらしく男の上で乱れるように仕向けている。

名無しは小さな手で顔や胸を覆い隠して嫌がるが、男の目にはそれすら扇情的な光景として映し出された。

「そうやってしおらしく恥じらってみせたところで無駄だ。ほら、ちゃんと自分で動いてみろ」
「や、ぁ……できない……」
「出来ない?この期に及んで何を言う。俺を煽っておきながらこれ以上焦らすつもりか?」

男は意地悪く笑って、名無しの尻をぺしりと叩く。それはほんの軽い力でしかなかったが、それでも今の彼女には十分な刺激だった。

「…っぁ、ん……」

ゆるりと、名無しがの腰が揺れる。臀部を叩かれたことによる反射的な行動に過ぎないが、それでも彼女が自ら腰を振ったことに変わりはない。

「やれ」

男は短く命じる。逆らうことなどできない名無しは、諦めたようにぎこちなく腰を浮かせた。そして再び沈ませるという動作を何度も繰り返すうちに、段々と腰の振り方が大胆になっていく。

「はぁ…、ん…、やぁ…」

名無しは弱々しく首を振りながら、男の腹の上に手をついた。

こうして精一杯両手を突っ張っていないと、身体を後方に引くことが出来ない。すぐにでも賈充の胸に倒れ込んでしまいそうになる。

「あっ、あっ……賈充のが……奥、に、当たって……」

男は自身の腹部に手を伸ばし、懸命に腰を振る名無しの痴態を満足そうに眺めながら、自らも下から突き上げるようにして奥深くを抉ってやる。するとその動きに合わせて、彼女はまた新たな刺激を求めて淫らに腰をくねらせる。

「ああん…いやっ…!賈充…やっ…動いちゃだめぇ……」
「お前がぬるい動きをしているからだ。もっと深く、俺のを搾り取るように腰を動かせ」
「む、無理、です……っ。こんな…体勢で、なんて……」

困難な注文に、名無しは泣き言を漏らす。しかし男は全く気に留めず、それどころか一層楽しげに口の端を吊り上げて彼女の腰を掴む手に力を籠める。

「なら、手伝ってやろう」

男はそう言うや否や、突然下から激しく突き上げ始めた。その衝撃に思わず背中を反らせた名無しの上半身が後ろに倒れそうになったが、すかさず男が手を伸ばして支える。

「ああぁぁっ!」

ぐちゅんっ、という激しい水音と共に、一気に根元まで飲み込まされた。今までで一番深いところを犯され、名無しの体が思い切りしなる。

「あ、あっ……いやっ……!深いの、だめぇっ……!」

あまりの激しさに『だめ』と訴えるが、男は容赦なく腰を打ちつけ続ける。激しいけれど、ただがむしゃらに突き上げるだけの単調な突きではない。雌の性感帯を的確に擦り上げるような、絶妙な腰使いだった。

「だめ、じゃないだろう?俺の動きに合わせて、もっと腰を振れ」
「あ、あぁっ……やっ、ぁ……できな……」

男は自身の胸に倒れ込みそうになる名無しの上半身を片手で支えながら、もう一方の手を彼女の下腹部へと伸ばした。そして結合部から溢れ出る愛液を掬い取ると、陰核に塗りつけるようにして愛撫する。

「あっ…いや…いやいやっ!」

敏感な箇所を一緒に責められて、名無しはやめてと首を振りながら身を捩った。しかし、男に腰を抱え込まれているせいでどうにもならない。

「気持ちいいか?強情な上の口とは違い、ぎゅうぎゅう締め付けてきて正直な雌穴だ」

男は低く笑って、執拗に敏感な突起を責め続ける。やがて、ぷっくりと腫れ上がったそこを指で挟み込むようにして扱き始めた。その刺激の強さに名無しは涙を散らしながら必死に抵抗する。下から見上げると、その淫靡さは格別だ。

「あっ、あぁんっ!だめぇ……っ、そこばっかり……」
「ここを弄られると弱いんだろう?そら、もっと動け。盛りのついた雌犬のようにな」
「いや…っ、そんな言い方しないでぇ……」

男は欲情にまみれた視線で、淫らに揺れる肢体を視姦する。大きく開いた脚の間では男の猛りを根元まで咥え込んだ蜜壺がいやらしく蠢き、ぬらぬらと濡れそぼっていた。その奥で見え隠れする赤い肉襞が物欲しげにひくついているのは、雄の子種を欲しているからに他ならない。

「名無し……」

名前を呼ぶ掠れた声は、ひどく色っぽい。男の高い鼻先が、名無しの腕に擦りつけられる。

「認めてやるのも腹立たしいが、実に具合がいい。気が変わった」
「え……?」

名無しはひくっ、と喉を震わせる。その表情には、困惑の色が浮かんでいた。


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