異次元 【吸血王】 耳や胸元への愛撫だけで名無しをイカせるほど性技に長けた賈充のことだ。空想するまでもなく、とんでもなく気持ちがいいに決まっている。 そんな彼に、実際に舐められてしまったら。指よりもずっと太くて硬くて長い物で体内を貫かれ、敏感な部分を何度も擦られ、突かれ、かき混ぜられてしまったら……。 想像してしまったら最後だ。秘裂から溢れた蜜が尻を伝ってシーツに染みを作るほど、名無しの下半身はすでにトロトロに蕩けきって濡れていた。 「欲しいか、俺が」 低い囁きと共に、賈充の指が入り口をそっとなぞる。そこはもうすっかり潤みきっており、男が陰核に軽く触れるだけでビクンッと肩が跳ねてしまう。『あ……』と切ない吐息を漏らしながら、名無しは続きを強請るように腰を揺らす。 その反応に男は満足げに微笑むと、前を寛げてすっかり勃ち上がった己の分身を取り出した。 「あ……、ゃぁ……」 凄い。太くて、大きい。血管が浮き出るほど張り詰めた男根は、女殺しの凶器と呼ぶに相応しい。 女性の肉体には備わっていない、男性特有の生殖器は一種グロテスクと思えるような形状の肉塊で、その先端は先走りでぬらぬらと濡れ光っている。 こんなものが、自分の中に入ってしまうのか。その大きさと太さが自分の中に入るのかと想像するだけで恐ろしいはずなのに、何故か目が離せない。それどころか、恍惚に染まった眼差しでうっとりと見つめてしまう。 「これだけ濡れているなら大丈夫だとは思うが、一応、な」 念のためによく慣らしておくか。 賈充は短く告げると、愛液で濡れた指先を割れ目に沿ってゆっくりと滑らせる。そしてヒクついている膣口へ指を挿入し、中を探るように動かした。 「あ、あんっ……やぁぁぁっ……!」 狭い肉壁を掻き分けるように押し広げ、奥へ奥へと進んでくる指。節くれ立った関節が内壁を擦るたび、名無しは甘ったるい嬌声を上げる。 一本でも眩暈がしそうなくらいに気持ちがいいのに、二本目の指まで追加され、その圧迫感に息が詰まりそうになった。 「ひっ、あぁっ……、だ、だめぇ……」 それでも痛みはない。むしろ快楽の方が勝っていた。異物を押し出そうとする動きに逆らって、二本の指は奥を目指して侵入してくる。 「慣らす必要もないほど汁が溢れているが、思った以上に締りもいい」 賈充は独り言のようにそう呟いて、名無しの中を解していく。次第に指の動きが速くなり、じゅぷじゅぷと卑猥な水音が響いた。 「あぁ、っ、あっ……そこぉ……」 ある一点を突かれた瞬間、電流のような刺激が走り、名無しの腰が跳ねた。賈充は見つけたぞと言わんばかりに同じ場所を集中して攻め立てる。 「やぁぁぁ……、だめぇぇ……!」 イク。こんなのもう、イッちゃうっ。 あまりの快感に耐えきれず腰を引くと、賈充もまた名無しの中から指を引き抜いた。もう少しでイケると思ったのに突然刺激を止められて、名無しは涙目で男を見上げ、物足りなさと寂しさで腰が揺れてしまう。 賈充は指に絡みついた名無しの愛液を猛りきった雄芯に塗りつけて、馴染ませるように数回扱く。ヌルヌルの透明な液体を纏った逞しい男根がビクビクと脈打つ様子に、否が応でも期待感を煽られる。 「お前の好きなところは大体分かった」 「は、ぁ……、賈、充……」 「力を抜け。挿れるぞ」 低く掠れた声で宣言されると、それだけで瞳が潤んでしまう。この声に弱いのだ。この男に命令されると、まるで暗示にでもかかったように従ってしまう自分がいる。 「あっ……、くっ……んんっ……」 熱く脈打つ先端が、ヒクついている秘裂に押し当てられる。その熱さと硬さに眩暈を覚えつつ、名無しは来るであろう衝撃に備えた。 「あぁっ……!」 ゆっくりと腰が進められ、狭い膣を押し広げるように侵入してくる感覚と共に、ズブズブと熱い楔が打ち込まれる。 太い雁首が、限界まで広がって男の男根を受け入れている内壁の中を通過した時、これで全部入ったのだ、と思った。しかし、そうではなかった。男の物は、まだ全て入り切ってはいない。 「あ、あっ……そんなぁぁ……まだ……入って……」 「……っ、少し緩めろ。食いちぎる気か」 そんなに締め付けるな、と耳元で諭される声すら気持ち良くて、名無しは無意識にギュッと下腹部に力を込めた。しかしそのせいで余計に男を意識することになり、膣内がより強く疼いてしまう。 「あぁーんっ……。やぁぁ……だめ……硬くて、太いの……」 「く……っ」 賈充は眉根を寄せて苦しげに呻く。だがそれは苦痛からくるものではなく、むしろ逆だった。亀頭をキュウッと締め付けてくる内壁の感触と熱い体温が心地好くて堪らないのだ。 気持ち良すぎて、腰が溶ける。色事に長けた賈充ほどの男でも、挿入しただけで達しそうなくらいに。 男のモノの形に合わせて自在に形を変えるかのように密着してくる肉襞の柔らかさと温かさと潤いは、例えるならそれ専用の性具だった。 自分が挿入しているのは名無しの女性器で、言うまでもなくこの場所自体がセックスに使用する専用の器官であることは賈充とて承知しているが、名無しの内壁はそんな生易しい物ではない。 熱く潤んだ媚肉は、女陰というよりもまるで魔物だ。入口から最奥部に至るまで隙間なくみっちりと肉棒を包み込み、襞の一枚一枚が別の生き物のようにねっとりと絡みつき、一刻も早く男の精を搾り取ろうと蠢動する。 もはやこれは人間の体というよりも、男を悦ばせるためだけに神の手によって作られた一品ではないかと錯覚してしまうほどのレベルだった。 「や、あぁ……っ、大きい……賈充のが……熱いよぉ……」 その上、男に貫かれている時の表情と喘ぎ声まで淫らで愛らしい。少しでも気を抜けば、たちどころに気をやってしまう。この淫蕩な身体に溺れてしまう。こんな凶悪なものが、神の手によるものであるはずがない。 悪魔の仕業だろう。これは。 「……小癪なことを……!」 暴発を防ぐために腰を引くと、逃すまいとでもするように肉襞が絡みついてくる。賈充はぐっと奥歯を噛み締めて、なんとか射精感に耐えた。 せっかく名無しの身も心も完全なる傀儡にするために焦らして焦らして、普段の自分に似合わぬほど、とろ火で煮込むようにじっくりと可愛がってきたのだ。 蜘蛛の巣に絡めとるのは、俺だ。名無しではなく、俺でなければならない。 「あ、ぁ……抜いちゃやだ……。賈充……離れちゃいや……」 もっとしてほしいのに。もっともっと、気持ちよくなりたいのに。名無しは切なげに眉を顰めて懇願した。 時間の経過から考えて、もはや薬の効力は切れている。 それでもなお、唇から唾液を溢れさせ、溶け切った眼差しを浮かべて男に媚びる名無しの姿は完璧に色欲の虜であり、その点においては賈充の完全勝利。計画通りだと言えるだろう。 だが───。 (俺としたことが、読み間違えるとはなんてザマだ) 男は苦く舌打ちする。さっき自分は名無しをあまり慣れさせるのも考え物≠セと思った。理性も羞恥も失い、快楽を素直に表現するようになってしまったら失望すると。 しかしながら、それは大きな間違いだった。賈充を吸血鬼に例えるならば、男の下で乱れる女は男の精を吸い取ることを生業とする女性型の淫魔・サキュバスのよう。 名無しの豊潤な色香と甘く滴る嬌声の艶めかしさは、賈充の予想を遥かに超えていた。むしろ制御装置が外れてからが名無しの本領発揮だということを、賈充はここにきてようやく悟る。 [TOP] ×
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