異次元 | ナノ


異次元 
【すんどめ:VS夏侯覇】
 




「謝らなくていいからさ、俺に全部任せてくれ。ひどいことはしない。精一杯優しくするから。……なっ?」
「はい……」

名無しの了承を得た夏侯覇は再度彼女の上になり、首筋に顔を埋めるようにして舌を這わせる。

「ふぁっ……!」

甘い声が間近で響き、夏侯覇は夢中になって吸い付いた。

ちゅっ、ちゅっと音を立てて強く吸い上げれば、それに応えて爪先をピンと反らす反応が愛らしい。

「やぁっ……、だめぇぇ……」
「何で?すげー感じてんじゃん」
「そ、そんなこと言わないで…」

羞恥心を煽るような台詞を吐くと、名無しは顔を真っ赤にして抗議してくる。それがまた可愛くて夏侯覇は口元を緩めた。

「もっと声聞かせろよ」

男の要求に名無しは『いや…』と答えて身を捩らせるが、夏侯覇はそれを許さない。彼女の耳朶を軽く噛み、ふうっ…と息を吹きかける。

「名無しの可愛い声、聞きたい」
「やぁ……恥ずかしいよぉ……」
「大丈夫だって、ここには俺達しかいないんだからさ」

夏侯覇はそのまま舌先で耳たぶをちろちろと舐め上げながら、さらに大胆な行動に出た。今度は両手で胸を掴むようにして揉み始める。

服の上からでも分かるリアルな柔らかさとこの弾力。夢ってすげえな。

円を描くように撫で回したり、下から持ち上げるようにして揺らしたりして楽しんでいると、次第に乳首が硬く立ち上がっていく。

薄手の布地を押し上げて存在を主張している様がなんともいやらしい。指先できゅっと摘み上げた途端、一際高い声が上がる。

「やっ…!」
「ここ、気持ちいいんだ?」
「ち、違……んっ、あぁん……」

否定の言葉とは裏腹に、名無しの口から漏れる声は甘く蕩けている。

そのまま親指と人差し指を擦り合わせるようにして乳首をコリコリと弄ぶと、名無しの口から熱い吐息が漏れた。

「やっ……ああっ……そこぉ……だめぇ……」

いやいやと首を振りながらも、明らかに感じている様子である。その証拠に、太ももを擦り合わせてもじもじさせているのが視界の端に映った。

そんな様子を目の当たりにしてしまえば、余計に弄りたくなるというものだ。強弱をつけながら、両方の乳首を摘まんだり擦ったりして同時に責め立ていくうちに、名無しの呼吸がどんどん荒くなる。

「あっ……。やだぁぁ……そんなにしたら……」

涙目になりながら訴えてくる姿が一層オスの情欲を刺激する。

やべぇなこれ……と思いつつも、もっと名無しを感じさせたい、乱れさせたいと思う自分がいることに気づき苦笑するしかない。

まあいいかと思い直し、開き直ることにした。こうなったらとことん楽しませてもらおうじゃないか。

夏侯覇は名無しを抱き寄せて、耳元で低く囁いた。

「名無し…。俺、お前が好きだ。愛してる」
「夏侯覇……私も、好き……大好き……」

熱っぽい視線を向けながら、名無しが答える。

「名無し、大好き」

こんなもの、夢の中だから言えることだ。二人の関係からして普段の生活では到底有り得ないし、言ったところで冗談にしか受け取って貰えないだろう。

『好きだ』『愛してる』だなんて、男が女を口説く時の常套句。

セックスの前やその最中に女を喜ばせるための、自分は遊び相手ではないと勘違いさせるための、単なるリップサービスであり、ただの嘘。

目の前のメスを抱きたい、犯したい、孕ませたいという、男としての本能的な物と欲望を耳障りの良い言葉で飾り立てただけの、その場しのぎの薄っぺらい代物。

ここにいる名無しの存在など、それ以上の薄っぺらさだ。ただの偽物。現実の彼女ではない。

だからこそ、彼女が返す言葉も真実ではないことくらい分かっているはずなのに、それでも嬉しく感じるのだから不思議だった。

「嬉しい……。夏侯覇にそう言ってもらえて、すごく幸せ……」

うっとりと目を細め、微笑む名無しの姿はあまりにも儚げで、夏侯覇は思わず見惚れてしまう。

「俺も」

夏侯覇もまた、名無しに向かって微笑み返す。

「私……夏侯覇が好き」
「そっか、ありがとな。すげー嬉しいよ」
「本当?」
「ああ」
「……じゃあ、もっと好きって言ってほしいって言ったら、怒る……?」
「いいよ、いくらでも言ってやる」

全ては幻。所詮は夢。それが分かっていても口にせずにはいられない。それほどまでに、ここにいる彼女が名無しそのものだったから。

全部が夢で、嘘偽りでもいい。今だけはこの幻想に溺れていたいと思った。

どうせ現実に戻れば虚しさしか残らないのだから、せめて夢の中だけでも幸せな気分に浸っていたかった。

名無しが自分の物になるというのなら、どうだっていい。

「嬉しい……夏侯覇……。私なんかを好きになってくれて……」

目尻にうっすらと涙を浮かべた名無しに見つめられて、夏侯覇の胸が切なく痛む。

「それは俺の台詞だよ」

多分、こいつは現実でも彼氏ができたらそんなことを言うんだろうな。名無しの控えめな性格からしてそう思う。そう思うとなんだか無性に腹が立ってきた。

(だったら俺がこいつに忘れられないくらいの思い出を作ってやる)

夢の出来事でしかないとしても、名無しを自分だけのものにしたい。持てるテクニックをフル活用して、彼女を快楽の底へと沈めてしまいたい。

こんなに気持ちいいのは生まれて初めて。夏侯覇じゃなきゃダメ、夏侯覇としかもう出来ないと言わせたい。

自分ではあっさりしている方だと思っていたけど、意外と独占欲強い方なのかな。俺。

そんなことをぼんやりと考えながら、夏侯覇は名無しの服を脱がせにかかった。

まずは両方の肩口の部分に手をかけると、そのまま一気にずり下ろす。元々肩が出ているデザインだったので、少し下げるだけで簡単に彼女の胸元が露出する。

なんと、いきなり素肌。下着無しだ。

さっき名無しの胸を触っていた時の感触で薄々感づいてはいたことだった。そうはいっても、実際に目の当たりにすると多少驚きはするが、同時に納得もしていた。

ただでさえこのようにエッチな服を彼女に手渡したというのだ。多分、これも『下着はつけないでくれ』という俺≠フ指示なのだろう。


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