異次元 【茨の檻】 濃厚な口付けに意識を奪われそうになりつつも、何とか男の行為を止めようと全身に力を入れた途端、前触れもなく何かが名無しの胸に伸びてきた。 その正体は男の手で、服の上からそっと胸を撫で、彼女の胸元を這い回る。 「あっ…、んっ…!」 名無しの可愛い喘ぎ声が、室内に響く。 自分の口から出た声が信じられないというように頬を紅潮させ、手で口を覆って隠そうとする名無しの行為を、もう片方の法正の手が封じる。 「我慢はよくないことですよ」 「ほ、法正殿…!お願いです、こんなこと…もう……っ」 首を左右に振って訴える名無しの願いなど完全無視で、法正が指の動きを再開させる。 「あっ…やぁ…んんっ…やだぁぁ…」 男が指を動かすほど、名無しの喘ぎ声がどんどん淫らさを増していく。 法正の愛撫は、信じられないくらいに巧みだった。 下半身ではなく、胸を少し触られているだけ。 しかも直接ではなく服の上からで、こんなものは法正にしてみればただの小手調べに過ぎない。 けれども強すぎず、弱すぎず、絶妙な力加減でやんわりと胸を揉まれていると、痺れるような感覚が下腹部から生まれてくる。 「ほら。立ってきた」 「……っ」 クスッ、と笑いながら揶揄する口調で告げられて、名無しの体はカッと火が点いたように熱くなった。 布越しとはいえ敏感な部分への刺激を受け、ツンと尖った名無しの胸の先端を、法正の指が優しく摘まむ。 「あんっ…法正殿…だめ…。あっ…あっ…!」 指先で乳首をトントンと軽く叩いたり、指の腹で押し潰すようにして弄ってやると、瞳に溜まり切らなくなった名無しの涙が頬を伝って流れ落ちる。 少し強めに押されたり、円を描くように乳首の側面をなぞられたり、触れるか触れないかの位置で先端を焦らすようにこすられると、名無しは白い喉を反らせて身悶えた。 「まだ直接触っていないのに、随分敏感な方だ」 「あぁぁ…。そんな…、違……っ」 「今からこんな風に感じてしまって、下を触られた時には……どうなってしまうのですか?」 「いやぁぁぁ…!だめだめっ…放して…法正殿…」 男の愛撫が気持ち良すぎて、頭が真っ白になる。 肉体関係を結んだ女性は山ほどいると彼は言ったが、男女の交わりについて経験豊富というのは疑いのない事実のようだ。 今まで得た豊富な知識や経験を余すことなく蓄積する、場面に応じてそれを有効活用するというのは彼らのような軍師職が最も得意とするところだが、かといって、彼以外の軍師でもこれほどのテクニシャンが存在するのだろうか。 怖い。 このままでは自分がどうにかなってしまいそうな恐怖を感じ、名無しはポロポロッと涙を零して法正に懇願した。 「法正殿…だめ…」 「何が駄目なんですか?」 「それは…、間違っています…こんなこと…」 「そういう理由なら、聞く耳持ちませんね」 「そ、そんな…。あっ…あっ…やだぁぁ…どうして…?」 情け容赦のない男の返答に、名無しの顔が絶望で染まる。 そもそも法正は名無しに何を言われてもこの行為を中断するつもりなど微塵もないのだが、男の返事を額面通りに受け取った名無しは素直に別の理由を口にした。 「だって…だめなんです…」 「だから、何故」 「そこ…法正殿に…触られると…すごく熱くなってきて…。体の奥がジンジンして…変になって…」 「……っ」 「あぁーん…だめです…法正殿…。溶けちゃいます…おかしくなっちゃうの…」 快楽の世界を彷徨いながら、涙に濡れた瞳で男を見上げ、喘ぎ声混じりの可愛い声で『気持ちよくなっちゃうからだめっ』と訴える名無しの痴態に、法正は目が釘付けになった。 日頃の会話や他の男性武将にからかわれている時の名無しの様子から、どちらかと言えばMっ気があって男に責められれば責められるほどにいい反応をしそうな女だと思った事もあるが、情事の際にこれほど淫蕩な姿を見せるとは思わなかった。 感じているはずなのに、辛そうな顔をする。 辛そうで、切なそうで、でも物凄く気持ちよくて、消えたくなるほど恥ずかしい───。 そんな複雑な感情の入り混じった名無しの痴態は何ともいえず色っぽくて、法正の下半身は衝撃を受けた。 (くそ…。今、玉が重くなった) 股間にずっしりとした重みを感じる。 名無しの中に注ぎたくて、精子が急速製造されているのが分かる。確実に。 正常な肉体の発達を遂げた成人男子としてセックスがしたくなることは普通にあるが、こんな風に喉から手が出そうなくらいに強い性欲を感じたのは初めてだ。 自分でも理解できない衝動に、法正は内心驚く。 「お願い…、法正殿…触っちゃイヤ…」 乱れる髪も、赤く染まった頬も、唾液で光る艶やかな唇も、溶けそうな瞳も、そのどれもこれもがいやらしくて愛らしい。 堪え性がない男であれば、すぐにでもいきり立った肉棒を下着から取り出して彼女の体内を貫いているに違いないと思えるくらい、名無しから匂い立つ色気は淫らで濃厚だった。 「ずるいな」 「…え…」 「どうやら俺が思う以上に、あなたには俺の知らない顔があるらしい」 肩をすくめるように笑った法正が、意味深な目で名無しを射る。 「俺の愛撫に心では抵抗しても、体は素直に感じて下さるのは嬉しい限りですよ。で…、それは俺だけですか?」 「法正、殿…?」 「何度も申し上げた通り、名無し殿。あなたはお優しい。俺の無礼に対しても俺を責めるのではなく、ご自分を責めていらっしゃる。となれば、他の男にも同じように弄ばれていないか疑いたくなるのは必然でしょう」 「な…!?」 「どうやらこの城の中にも、俺と同じで仲間のフリをしている悪い男がいるようですからね」 美しい男の口元が、残酷な笑みに彩られていく。 (仲間のフリをしている、悪い男…?) それは一体誰だろう。 私がよく知らない相手だろうか?それとも…。 名無しが己を取り巻く周囲の人間関係に思いを馳せていると、不意に胸元が涼しくなった。 何事かと思って視線を向けてみたら、いつの間に作業をしていたのか、法正の手によって名無しの胸元の留め具が全て外され、白い胸元があらわになっている。 「い…、いやっ!法正殿…!」 今更悲鳴を上げても、もう遅い。 法正は名無しの胸元に端正な顔を近付け、何の遠慮もなく彼女の乳頭を口に含む。 「あっ…、あぁぁ───!!」 温かい舌と濡れた口内の感触に、名無しはビクビクッと上半身を震わせる。 男の髪に手を伸ばして引き離そうと試みる名無しに対し、法正はわざと唇を開き、自分の舌が名無しの乳首に絡みついている様子を見せつけた。 [TOP] ×
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