異次元 【茨の檻】 妙な夢を見た。 真っ暗な闇に包まれた空間に、一箇所だけ光で照らされるようにして一つの建物が浮かび上がる。 それは円形の建造物だった。 中央には広くて丸い床があり、その周囲はぐるりと鉄格子で囲まれていて、いくつかの扉が等間隔で並んでいる。 まるで円形に連結された複数の檻のようだ。 よく目を凝らして鉄格子の中を覗いてみると、何かが潜んでいる気配がした。 それは生き物に思えて、背丈から推察すると成人男性、もしくは大型の肉食獣といったところだろうか。 そして中心部の床にもうっすらと何かのシルエットが見える。 こちらも生き物だとは思うが、人間なのか、鹿や兎といった動物なのか、輪郭がぼやけていてよく分からない。 ここは猛獣と人間が互いの命を懸けて戦う、噂に聞く闘技場というものなのだろうか。 または何かの実験施設か、はたまた残酷な見世物小屋か、それとも重罪人を収容するただの監獄なのか。 ガチャリ、と錠が外れる音がして、正面の扉が大きく開く。 檻の中から、何かが出てくる。 それと同時に中心にある黒い影がゆらりと揺れ、怯えるように小さく震えていた。 ……そこからどうなったのか、覚えていない。 夢のような世界というのは、きっとこんな場所を指すのだろう。 良質な材料と人員を惜しみなく採用したことが見て取れる堅牢な建物、廊下から室内まで余すところなく並ぶ豪華な調度品の数々、あちらこちらに控える数多の使用人たち。 これぞ無駄遣いの極みというやつか。 周囲に軽く視線を走らせ、法正はそう思った。 ─────財の限りを尽くした御殿。 無意識のうちに、口元が不快に歪む。 (世間では、今日一日を生き延びるだけでも必死な農民たちが大勢存在している) そのような物など無くても普通に生きていけるのに、何故権力者になればなるほど、人間という生き物は贅沢を求めるのだろう。 己の醜い自己顕示欲を満たすため、劣等感を慰めるため、もしくは他者を威圧し、牽制するため。 それとも自身を馬鹿にした者を見返すためか、貧しい時代に金持ちから虐げられた事に対する報復か。 どんな理由を挙げ連ねてみても、その全てはただのエゴ。 決して恵まれない人々を救う為≠ネどではないというのに。 「本日はお忙しい中、ようこそおいで下さいました」 法正の前方を歩く男性が、振り向きざまに語る。 「最近の法正様はお忙しそうで、囲碁の相手がいなくて我が主は寂しがっていました」 「まさか。文宋(ブンソウ)殿程の方であれば、いくらでも勝負相手はいるだろう?配下も優秀な者ばかりだ。俺みたいな弱者よりも、よっぽど骨のある人間がいると思うが」 「ふふ…。法正様、それはあなた様程の才覚に対してあまりにもひどい仰り方。法正殿でなくてはつまらぬ、あれほど緻密に計算され尽くした攻めを披露する男は他にいないと、主はいつも法正様をべた褒めしていらっしゃるのですよ」 笑いながら法正を先導する男性は、この城の主である文宋に仕える使用人だ。 見たところ、年齢はざっと二十代後半〜三十代前半くらいだろうか。 知的な目元と無駄なく引き締まった体躯を持ち、文官と言われても、または武官だと言われても、どちらでも納得できそうな雰囲気がある。 法正が聞いたところによると、まだ年若い青年にも関わらず、その能力の高さから文宋の厚い信頼を得て彼直属の部下に抜擢されたという。 廊下の灯りに照らされた彼の横顔は、法正の目から見てもなかなかに整っていて美しい。 これほどの美形ならば老中達の世話役だけに限らず、権力者の妻や娘たちを接待する時にも有利に働く事だろう。 どれくらい歩いてきただろうか。 やがて大きな扉の前に到着すると、使用人が法正に頭を下げる。 「法正様。……こちらで少々お待ちを」 短く告げた後、男性はコンコン、と扉を二回叩く。 すると、少しの間があってから、何者かの声が返ってきた。 「───誰だ」 「失礼致します。ただいま、法正様がいらっしゃいました。隣の来賓室にご案内して少しお待ち頂いた方がよろしいでしょうか」 扉の向こう側から、複数の声が聞こえる気がする。 権力者の部屋だ。何が起こっていても不思議ではなく、動揺はするまい。 法正はストレッチをするように軽く首を回し、大きく息を吸う。 「構わん。お通ししろ」 「はっ」 主の言葉を受け、使用人は一礼して扉の取っ手を引いた。 ギイィィ…と軋む音を立て、重厚な扉が左右に開く。 使用人に促されて室内に足を踏み入れる法正を、中年の男性が迎える。 「よくぞ来た、法正殿。あいにくこの状況なので、座ったままですまないな」 優にキングサイズはありそうな大きなベッドの中央に腰を下ろし、法正と真正面から向き合う形で語りかけてくる男はこの城の主・文宋だ。 確か、以前酒の席で聞いた時には、今月で48歳の誕生日を迎えると言っていた。 中高年といえば一般的に人生の折り返し地点に位置する年齢と言われるが、若い武官の頃から鍛錬を積み、己を極限まで鍛え上げてきた文宋は体力的にも肉体的にもまだまだ現役。 『若い者には負けんよ』という文宋の口癖は決して嘘ではないという事を、今のこの光景≠ェ物語っている。 「んっ…、あっ…、ううっ…!」 文宋の膝の上には年若い女性が両足を大きく広げて座り、その中心部を赤黒い肉棒が深々と貫く。 凶暴な男根が膣内を出入りする度に彼女の身体も上下に動き、幼い顔立ちに似合わぬ豊満な乳房がブルンブルンッと揺れる。 「あっ…、あんっ…。ああああ…!!」 文宋の右隣では、別の若い女性が横わたって悲鳴を上げていた。 見ると、彼女もまた両足を左右に大きく割った体勢で男に下半身を差し出していて、その股間には文宋の右手が伸びている。 彼女の秘部には男のゴツゴツと節ばった指が三本もねじ込まれており、重ねた三本の指で何度も彼女の内壁をかき混ぜながら、同時に親指の腹で最も敏感な肉芽の先端をこすり上げているようだ。 [TOP] ×
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