異次元 【魂喰いvol.2】 「……どうした。何が不満だ。何故に泣く?」 訳が分からない、と。 いつも通りの男性的で芯の通った司馬師の声には、そんな疑念に満ちた響きがあった。 名無しの体に表れた反応から考えれば、確かに感じていたはずなのに。 「名無し……何でそんな風に泣いてんの?前回お前を抱いた時に比べれば、俺、これでも大分優しく扱っているつもりだぜ」 兄と同じく、意味が分からないとでも言いたげな口調で呟いて、司馬昭は名無しの頬を濡らす涙の滴にそっと唇を寄せて吸い取った。 身を捩って嫌がる名無しの気持ちを完全に無視した状態で、しかも彼女の自由を奪う為に非合法の薬物まで使用して、なおかつ二人がかりで強引な凌辱行為に及んでいるというにも関わらず。 これで 何が不満だ 前回よりは大分優しくしているつもり などと言い張るとは恐れ入る。 そもそも、彼らのように若くして絶大な権力と財力、それに加えて神から与えられた端麗な容姿を持ち、身分の高い男性の特権として一夫多妻の習慣に芯から浸りきった男達に、世間一般における常識とやらを尋ねようとするのが間違いなのだ。 いいなと思えば、どんな女とも自由気ままにヤリたい放題。 責任も特に取らなくて良い。 飽きたらさっさと捨てればいい。 新しい女など、自分から探さなくても雨後の竹の子のように次から次へと湧いてくる。 それも、血の滲むような努力の果てに苦労してやっと得た賜物という訳ですらない。 常に世の中に一定の割合で存在する、彼らのような生まれついての特権階級≠フ男性たちに 『嫌がる相手に無理強いをしてはダメですよ』 『女性を強姦するのは犯罪です』 ……などと名無しが誠心誠意訴えてみたところで、 『ははっ、何言ってんのこの女?頭おかしいんじゃないの』 『俺に対して説教してくるとか偉そうに。文句言うならお前の父親を速攻でクビにしてやろうか?』 『僕のパパにお願いすれば、君の会社なんて今日のうちに潰して貰えるけどね』 と一笑に伏されるか、脅迫されるのが関の山なのだ。 名無しは何とか抵抗を続けて貞操を守りたかったが、視力と体の自由を奪われ、司馬師や司馬昭のように力強い男性に二人がかりで拘束されてはどうする事も出来なかった。 こうなったら何でもいい。とにかく自分にできる事をやらなくては。 どんな理由でもいいから、少しでも彼らの気を逸らして、薬の効力が切れるのを待つしかない……! 「あの…、子元…、子上…、私…。このままはイヤ…恥ずかしくて…」 痺れたように感覚が鈍っている舌先を動かして、懸命に言葉を紡ぐ。 「せ、せめて…体を洗わせて欲しいの…。綺麗にしないと……お願い……」 ポロポロと涙の粒を零しつつ、名無しが恥ずかしそうに訴える。 浴室に移動して、内側から鍵をかける事は出来ないか。 それが無理でもせめて何とか時間稼ぎができないかと考えた、名無しの苦肉の策だった。 ああでも、多分無理かもしれない。 子元と子上がそんな事をあっさり許してくれるはずがない……。 そう思って唇を震わせる名無しの頭上から、彼女にとって、全く予想外としか思えなかった司馬師の返答が降ってくる。 「ふ…、くくっ…そう来るとはな。自分から体を洗いたいと願い出るという事は、嫌がっているようなフリをして、実はやる気満々なのか?」 「─────!?」 司馬師はわざといやらしくそう言いながら名無しの胸元に手を伸ばし、衣服の上から長い指先で彼女の乳首を愛撫する。 「あっ…!んっ…やだっ…」 名無しは司馬師の巧みな指の愛撫に翻弄され、その動きに合わせるようにして自然と腰が揺れていく。 「あぁもう…可愛いなあ名無しは。感じてるくせにそうやって恥ずかしくてたまらないって表情するとこ、ホント好き。俺達をもっともっと喜ばせるために、準備する時間が欲しいって言いたい訳?」 「や…ぁ…。そんな…子上…私…っ」 名無しの可愛くて健気なおねだり≠ヘ、さらに二人の情欲をそそるだけだった。 弟の発言と同様、可愛くてたまらないといった様子で甘い眼差しを名無しに向けながら、司馬師は名無しの耳に唇を近付ける。 「では…、もっと可愛い声で私や昭におねだりしてみるがいい。お願いですから、体の奥までお風呂で綺麗に洗わせて下さい。子元や子上が楽に挿入できるように自分の指でグチャグチャにかき混ぜて、セックスの準備をさせて下さいと」 「あっ…あっ…あぁぁ…!」 普段よりもずっとずっと敏感になった耳元直接注ぎ込むようにして淫靡な命令を告げられて、あまりの刺激の強さに名無しは司馬師の声だけで感じてしまった。 それを合図とするように、司馬師と司馬昭は名無しへの愛撫を再開させる。 「い、いやっ。やめてぇぇ…」 涙ながらの懇願も虚しく、名無しの衣装は司馬師と司馬昭によっていとも簡単に脱がされていく。 どこからどういう風に、どのタイミングで、誰の手が伸びてくるのかも全く分からないのだから、名無しでなくてもこの状況で服を脱がされないように抵抗するのは困難であろう。 「見られると興奮するんだな、お前は」 からかうようにクッ、と喉の奥で笑った声が、甘く掠れる。 今のは司馬師の声だ。どっちから聞こえたのだろう。後ろ?それとも真横? 現在の位置関係を少しでも把握しようと思考を巡らせていると、男の掌が彼女の胸の感触を確かめるような手付きで輪郭に沿って丸く揉み始める。 中指の腹で押し潰すようにして乳首を弄られた瞬間、名無しの上半身がピクンッと跳ね上がり、赤く色付いた唇が上下に開く。 「あああ……」 名無しが上体を揺らす度に彼女の乳首がプルンッと震え、美味しそうなその見た目に誘われて男が唇を近付ける。 「あっ…だめ…そんなことっ」 男の行為に気付いた名無しは必死で体を捩ろうとするが、決して逃がさないと言わんばかりに彼女の腕や足を押さえる男達の手によって脱出経路が塞がれる。 「可愛い…名無し」 男の欲望に染まった司馬昭のセクシーな声が聞こえてきたかと思うと、何の予告もなく彼女の赤い乳首が『誰か』の唇に含まれた。 [TOP] ×
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