異次元 | ナノ


異次元 
【魂喰いvol.2】
 




「俺、明日早いんだわ。仕事疲れも残ってるし、今日は早く寝たかったからお前らも帰っていいよ」
「え…?そんな…。でしたら、私共で良ければ添い寝させて頂きますっ」
「はい。司馬昭様がゆっくりとお休みになれますように、全身マッサージをして…」

『明日早い』という理由を述べる男の言葉に若干の安堵を抱きつつも、それでもやはり自分達が何か粗相したのではないか≠ニ不安になり、女達は尚も食い下がる。

「いいって。自分の部屋の方がよく寝られるし」
「…え…」
「見送りもなくていいから。じゃあな」

心配する女達をよそに、司馬昭は手早い動作でもう着替えを終えている。

「し…、司馬昭様っ。来月の土曜日も、また会いに来て下さいますよね…!?」

扉に向かって歩き出す男の背に向かって、魅姫がたまらずに高い声を張り上げた。

魅姫に聞かれた司馬昭は、扉に伸ばした手を一瞬止めた。

何かを考えるようにして2,3秒立ち止まった後、ゆっくりと振り返る。


「────分かんねえ」


素っ気ない司馬昭の返答。

さっきまで情熱的に抱いてくれていたはずの男が突然見せた態度の変わりように、女達の瞳に動揺と哀しみの色が宿る。

未練を拭えずに縋るようにして見つめる女達の視線を背中に感じながら、司馬昭は部屋を出た。

バタン。


「…名無し…」


扉を閉めた直後、ポツリ、と司馬昭の口から女性の名前が零れる。

未消化のままの体と不明瞭な思いを抱きながら、司馬昭は建物の出口へと向かって行った。






司馬昭が女を抱いていた部屋からそう遠く離れてはいない場所。

同じ建物内の別室で、数人の女達が司馬師の調教を受けていた。

今度の相手は風俗嬢に売れっ子ホステス、以前調教を受けてからすっかり彼の虜になった貴族令嬢、そして人妻という構成である。

年は十六才から三十五才。

高級ソファーに悠々と腰掛ける司馬師の足元に跪き、股間に顔を埋めて奉仕しているのは二十三才の美人ソープ嬢。

調教台の上で男性器を象った道具を秘部に挿入されて喘いでいるのは十六才の貴族令嬢。

顔は中の上といった所だったが、スラリと伸びた美しい手足やピンク色の綺麗な乳首、感度の良い肉体はなかなかの良品だった。

猿ぐつわを嵌められた状態で乳首クリップの責め苦を受け、涙ながらに身悶えているのは二十六才のキャバクラ嬢。

ワガママで高慢な態度が若干鼻につくタイプだが、スタイルは抜群だし、他の男性相手の時はどうしているのか知らないが、司馬師の前ではこの通り従順なM女振りを披露する。

調教台の上で両足を大きく左右に割り開いたM字開脚の格好で、自分の両手を使って乳首と女性器を弄るオナニーショーを披露しているのは三十五才の人妻。

ある有名な資産家の妻である彼女は、淡泊な夫とのセックスに不満があるようで、夫とはもう5年もセックスレスだという。

普段は肌の露出も許さないキッチリとした衣装を身に纏い、ナチュラルメイクの似合う古風で清楚なイメージの美人だが、愛する司馬師の命令とあれば人前での自慰行為だって出来る。

司馬師は、そんな女性達一人一人を視界の端に留め、彼女達の痴態を観察しながら思う。


顔も体も心も出身も身分も、その全てがパーフェクトで、完璧な人間など滅多にいないのだと。


顔は非常に好みでも性格は全く好みではなかったり、妻にするのに相応しい身分でも外見が好みではなかったり。

顔も体も性格も好みでも、セックスの相性が最悪だったり、言葉遣いや立ち振る舞いが気に入らなかったり、どれかが良くても、どれかが駄目。

何から何まで全部自分の好みに合う、または全てにおいて平均値以上の高得点を叩き出す程に、本当の意味で自分と相性の良い相手を探し出すのは、司馬師でなくても非常に難しい事だ。

そんな事など、百も承知で遊んでいたのに。

「んっ…、しばし…さま、気持ちいいですか…?」

太い男根を喉の奥までくわえ込みながら、美女が上目遣いに司馬師を見る。

濡れた舌先で司馬師の分身の先端を舐めながら、竿の部分に沿って上下移動しつつ根本まで這い回るその感触は、さすがはプロのソープ嬢だと思わざるを得ないものだった。

女の唇が動く度に淫らな音がして、それが男心を一層駆り立てる。

「あああ…好き…愛しています…。どうかこの口に…私の中に出して下さい…司馬師様…っ」

女は甘い声でそう言うと、口を開き、司馬師の分身を今までよりもさらに奥まで飲み込む。

肉と肉が擦れる度に、チュパッ、チュパッという水音がする。

(この音がたまらない)

どうすれば男が喜び、どこをどう責めれば気持ち良くなるのかを知り尽くしているかに思える彼女のフェラは、司馬師から見ても一級品だった。

普通の男ならあまりの快楽の強さに腰が震え、あっという間に彼女の口の中に己の精を放出している事だろう。


……だが。


「んん…、んぅーっ…!」

猿ぐつわを装着している女性が、乳首クリップの痛みに耐えかねて泣きながら首を振る。

「あぁぁ…もう…だめですぅ…。イッちゃいます、司馬師様ぁぁ…」

まだ幼さの残る体の奥深くまで男性器の形をした異物をねじ込み、自分で動かすことを命じられた十六才の少女が秘部からグチャグチャという音を立てながら身悶える。

「あっ…あっ…イク…イッちゃう…、司馬師様…もう…!」

調教台の上で足を大きく開き、司馬師によく見えるようにと局部を晒している妖艶な人妻が、司馬師に命じられた自慰行為を続けながら今にも果てそうな声を上げる。

自分好みの性奴隷のはずだった。元々は、四人とも。

しかし、普通の男性からすれば黄金郷のような光景を目にしていながら、司馬師の耳には誰の声も届いていなかった。

額に影を落とす艶やかな前髪の奥から、調教台の上でイキそうになっている女達に冷めた視線を注ぎ、それらの上にある女性≠フ姿を重ねていく。

『そんなぁ…子元…恥ずかしいよぉぉ……』

情け容赦のない司馬師の言葉に、声を上げて泣きじゃくりながら、それでも名無しはもっと妖艶に、可愛らしく喘いだ。

『ここに…一杯して欲しいの……。一杯…入れて欲しいの……』
『ああん…子元…早く来てぇぇ……』

込み上げる羞恥で頬を赤く染め、睫毛を涙で濡らしながら、白いお尻をブルルッと震わせながら懇願する姿はたまらなく淫靡で悩ましかった。

お願い、許して、と言いながら、司馬師に貫かれてイキ果てる名無しの切なげな泣き顔は司馬師のサド心を非常に満足させた。

今までに何百人という女を調教してきたが、女を抱いてあれほどゾクゾクしたのは初めてだ。


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