異次元 【籠の鳥】 「蘭丸…だめぇぇ…イッちゃう……」 「だーめ。私がイクより先にイッたりしたら、後でお仕置きをしますので」 冷たい声でそう告げて、私は名無しの中に深々と指を突き刺した。 その瞬間、名無しの一番奥の柔らかい部分に私の指先が届き、名無しの腰が目に見える程に大きく跳ねた。 「あっ…ああ―んっ…。イッちゃう───っ」 身体中を大きく痙攣させて、名無しは私の顔の上でイッてしまった。 絶頂に達した時の名無しの嬌声はたまらない程に色っぽくて可愛くて、私の頭上でビクビクッと腰を震わせてイク名無しのあまりの悩ましさに私はすっかり興奮していた。 「あああん…イッちゃう……」 達した後もすぐに手を止めずに動かし続けていた私の舌と指先に、名無しが続けざまにまたイッてしまう。 絶頂を極めた際の脱力感でヘナヘナっと私の上でしゃがみ込もうとする名無しの姿が淫らで可愛くて、私はすぐにでも彼女を犯したい衝動に駆られたが、寸での所で我慢した。 (くそ〜っ…。ここで名無しを貫いてしまったら、全然お仕置きにならないっ……) 込み上げる欲望と悔しさに軽く唇を噛み締めたが、物事は何事も最初が肝心なので、ここは筋を通すべきだと判断した。 自分が追い立てたにしろ、名無しは私の命令に背いて二度も勝手にイッてしまったのだから、それなりの罰を与えなければ私としても示しが付かない。 「何で…勝手にイッたんですか?名無し…。私は貴女にイッていいなんて一言も言っていませんよ?」 「あぁん…だって…だって……。ら…蘭丸のが気持ち良すぎてイッちゃったんだもん…。ひっく…ごめんなさい……」 「言い訳してもだめです。私の言い付けを守れなかったんだから…どうしましょうかね?」 強い口調で名無しの意見をピシャリと跳ね付けて、彼女の言い訳を封じ込める。 名無しの顔から目を背けるようにして意地悪く言い捨てる私だが、涙を一杯溜めた瞳で切なそうに私を見つめる名無しの顔が視界の端に入り、胸がドキドキしてしまう。 だめだ。調子が狂う。 これ以上時間をかける事は名無しの為にも自分の為にもよくないと気付いた私は名無しと自分の体の位置を入れ替えた。 名無しの体を布団の上に横たえると、私は名無しと向き合う形で彼女の上にのしかかる。 「じゃあ…名無し…言ってみて。本当は蘭丸が欲しいんですって。指じゃなくてもっと大きくて太い物が欲しいんですって、言って下さい」 「ら…蘭丸……?」 耳元で囁かれる淫らな『お仕置き』の内容に、名無しの肌が上気して、薄紅色にサーッと染まる。 指の腹で名無しの入り口を上下にゆっくりとなぞってやると、収まりきらない名無しの体液が私の指にヌルリと絡む。 「さあ…言いなさい、名無し。ココに蘭丸のを入れて下さいって、可愛くお願いしてみなさい」 「あぁぁ…、蘭丸……っ」 私の冷たい口振りと強い視線に耐えられず、名無しは両目からポロポロと涙の滴を零していた。 そんな名無しの切ない泣き顔を見ていると、いつしか私の心の中からは他の女性の影が追い出されていく。 情事の際に涙に濡れた瞳で私を見上げる名無しの姿は滅茶苦茶可愛くて、私の心はもはや名無し一色で染められてしまっていた。 「名無し…欲しくないんですか?」 「あんっ…」 指の代わりに熱い塊を名無しの中心に押し当てると、名無しの口から甘ったるい声が出る。 わざと焦らすように先端を何度も名無しの濡れた入り口に擦り付けるようにして、私は名無しの耳の穴にヌルリと舌を差し込んだ。 「言わなきゃずっとこのままですよ。これを…どうしたいの?」 「いやぁぁ…。蘭丸…許して……」 名無しは泣きながら私に許しを求めていたが、肝心な事を口にしない限り私は絶対に名無しを許そうとはしなかった。 限界まで追い詰められた体を途中で放り出された名無しは切なくて苦しくて、震える唇を無理に動かして、この状態からの解放を望む言葉を口にする。 「ほ…欲しい……」 「え…。何ですって?名無し。よく聞こえない」 至近距離のせいではっきり聞こえているにも関わらず、私は名無しの耳たぶを軽く甘噛みしてもう一度彼女の口を割らせようとする。 すると名無しは唾液で濡れた赤い口を上下に開いて、泣きながら懇願した。 「あ―んっ…お願い蘭丸……。ら…蘭丸が…ここに欲しいの……」 「は……っ。名無し…そんなに私が欲しいの?」 「ひっく…。ほ、欲しいの…お願い…早く入れてぇ……」 「名無しっ……」 名無しの口からこんな卑猥な言葉を聞けるなんて、私は内心嬉しくてたまらない。 私に許しを求めて『お願い』している時の名無しは他の女の誰よりも淫靡で艶めかしくて、もう本心ではすっかり名無しにメロメロ状態の私であった。 《恋愛って言うのはね、本当は女が自分の方に男を振り向かせようとして、全力で狙いを定めている状態の事を言うのよね》 以前宴の席でほろ酔いになった濃姫様が私に語って聞かせた話の内容が、何故かこの時脳裏に蘇る。 《一見私達女の方はじっとしていて、男を待っているだけのように見える。貴方達男は自分の意志で女を選び、積極的に追い掛けているように見える》 《でもね蘭丸。それは食虫植物がじっと身動きせずに、何も知らない獲物を自分の方へとおびき寄せるのと同じ狩り方なのよ。ふふふっ…》 (……そうかもしれない) 私は、私の望み通りに自ら進んで両足を開き、淫らに腰をくねらせている名無しの媚態を見てそう思った。 普段の彼女からは想像も付かない程の悩ましい表情と甘い喘ぎ声は私の下半身を一気に奮い立たせていく。 別に女に不自由しているという私でもないのに、名無しを見ていると何かに吸い寄せられるように彼女の体を貫いて、食らい付きたい位の衝動に心が熱くなっていくのだ。 (まあ…それもそれでいいかもしれませんけどね) つまらない女に引っ掛かってしまう位ならいっそ死んだ方がマシですが。 愛する女性が自分を捕らえる為に網を張り巡らせていたと言うのなら、自分から飛び込んでいくというのもそれ程悪くない。 [TOP] ×
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