異次元 【略奪遊戯】 「バッカだなー、正則さんは!何があの日だよ!」 「ああ!?」 「それ絶対君に対してだけだって!その子、そんな事言いつつ陰では絶対に悪さしてるんだって!君に大金を貢がせつつ、『あの日』とか言ったその日の内に君の知らない所で他の男とはバコバコにヤリまくってるんだって!間違いない!!」 「ンガ────!!んだとコラァ!!人の元カノを悪く言うんじゃねー!!しばくぞゴルァ────!!」 怒りのリミットゲージが満タンに達し、半兵衛に向かって無双攻撃を発動させようとしてガバッと立ち上がった正則に、すかさず宗茂が足払いをかける。 「ギャ────!!」 男の長い足で足下をすくわれ、お約束のようにして転ぶ正則を、クールな目付きで宗茂が見下ろす。 「悪いが俺も半兵衛の意見に賛成だな。お前、その女にいいようにして弄ばれたんだよ。一度もセックスしないのに優しくして貰える、貢いで貰えるなんて女にとって最高に都合のいい男だろうが。その上半年で他の男に乗り換えられたとか、どう見てもただのメシ男か貢ぐ君にしか思えん。以上で話は終了だ。解散していいか?」 「ああん!?てんめえええこのヤロウ!!相変わらず腹立つような美形面して冷静な発言キメやがって、宗茂!!テメエは何様だ!!イケメン様か!!」 怒気を孕んだ正則の声にも何ら怯む事もなく、宗茂は相変わらず涼しげな顔でそんな正則の反論を受け止めている。 「それで、だ。さすがに『今までお前につぎ込んできた金を全額返せ!』というのは男としてみみっちい行為だと思うが、どうせ他の男にくれてやるなら一回くらい押し倒して望みを叶えたらどうだ?150万も費やしたんだ。最悪強姦まがいの暴挙に出たとしても、罰は当たるまい」 正則が暴力を振るえないように器用に手足を押さえ付けながら、淡々とした物言いで宗茂が語る。 「そうだよ、正則さん!そんなおキレイぶったブリっ子女、一回痛い目に遭わせてやりなよ。最後の思い出に…≠ニか言って上手い事呼び出して、薬を混ぜた飲み物でも飲ませて無抵抗状態にしてヤッちゃいなよー。それかもっとキツイお仕置き方法として、適当なチンピラを4,5人集めて輪姦しちゃうとか。男の純情を弄んだ女なんだもの、それくらいの事はやられて当然っしょ?」 「ぐおおおお……さっきから聞いてりゃテメエら二人揃って人の女に対して言いたい放題……!しかも強姦まがいだのチンピラを集めて輪姦だの、テメエらは悪魔かよ!!極悪非道のヤクザもんか!!」 ひときわ声を大にして正則が言い返した瞬間、半兵衛の手によって正則の目の前に強引に酒と盃が置かれた。 「いやー、こんなに元気一杯叫ぶ気力がまだ残っているなんてさては飲みが足りてないなー?ねっ、正則さん!」 ニッコリと天使のような笑顔を見せ、半兵衛が正則にさらなる飲酒を勧める。 「はあー!?何勝手に話を変えようとしてやがるっ。まだ話があんだろ話が!!」 静まりかえった部屋の中、ほとんど叫ぶような正則の声が響き渡る。 「ほーうそうか。俺達と飲み比べをするのは嫌だと言うんだな。男が戦いに背を向けるのか。敵前逃亡とは、お前はそういうシャバい男か…」 低い声で言い捨てると同時に、宗茂は正則の体から手を離して彼の手足を解放した。 すると正則は喧嘩を売られていると判断したのか、ガバッと勢い良く起き上がると宗茂に食ってかかった。 「あぁ!?んだとぉ!?人の事勝手にシャバゾウ扱いしてるんじゃねーよ!上等じゃねえか宗茂コラ。どんどん注ぎやがれっ。この勝負、受けて立つ!!」 ドカッとあぐらをかきなおし、盃を宗茂の目の前に突きつけながら正則が言う。 「ほう…。今の言葉、忘れるなよ?」 「おうよ!」 男前な顔でニヤッと人の悪い笑みを向ける宗茂に、正則は威勢良く応戦した。 「いやあ、さっすが正則さん!男だねえ〜。じゃあ男三人で飲み比べ大会といきましょうか。女の子がいなくて華がないのが残念だけど…。それでは、始めっ!」 陽気な声でそう言うと、半兵衛は自分と宗茂、そして正則の盃に順番に酒を注いでいく。 「カーッ!キタコレェ!やっぱ酒はうめえなー!次だ次!どんどんきがやれー!」 「わはは!正則さん、君って結構イケる口だねー!」 一気に酒をあおり、あっという間に飲み干した正則の杯に、半兵衛が即座に二杯目の酒をたっぷりと追加する。 こうして男3人の小宴会は盛り上がり、夜は一層更けていくのであった……。 飲み比べ開始から2時間後。 騒がしかった室内はようやく落ち着き、元の静けさを取り戻していた。 「やっと潰れたようだな。完全に」 盃を口に付ける宗茂の視線の先では、畳の上で寝転んでぐったりしている正則の姿がある。 酒がなくなったら注ぐ。またなくなったら注ぐ。 この一連の行為を延々と繰り返していき、どんどん飲酒量とスピードを上げていくにつれ、さすがの正則もついに限界を迎えてしまったようだ。 正則は決して酒が弱い訳ではなく、世間一般の基準に比べてみればむしろ強い部類に入る方の男性だが、気心の知れた仲間内での飲み会で気が緩んでいた事もあるのだろう。 自らの恋愛に関する嘆き、元カノへの愚痴と後悔の念を大声で散々まくしたてた結果、騒ぎ疲れてしまった面もあるのかもしれない。 全身からアルコールの強い匂いをプンプンと漂わせている正則は、部屋の隅で気持ちよさそうにグオーッと大きないびきをかいていた。 「正直、正則が惚れた女に対してはこうも純情路線を突っ走る男だったとは新鮮な驚きだったな。もっと強引に迫ってばかりの男かと思いきや、こういうのがツッパリの純情≠ニかいうやつか」 真顔でしげしげと述べる宗茂に、『そうだね』と半兵衛も頷きながら同調した。 [TOP] ×
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