異次元 | ナノ


異次元 
【頂点捕食者】
 




「ひっ…えっく…、清正…っ、おかしくなっちゃうぅぅ…」

子宮まで届くほどにズンズンッと突き上げられ、快楽のあまり泣き出してしまった名無しが鏡に映っている様を見て、清正は鋭利な目を細める。


もっとおかしくなればいいんだよ。


むしろ、俺はお前に精神崩壊直前レベルまで壊れて欲しいくらいなんだよ。名無し。


余計な事を何も考えられなくなるくらいに。余計な理性や道徳心なんて粉々に吹っ飛ぶくらいに。俺の言葉しか耳に入らなくなるくらいに。


俺はお前が狂うのを、ずっとずっと辛抱強く待っていた。


「名無し…そろそろ出すぞ」
「……!や…ぁ…だめぇぇ…出しちゃ……っ」

宣言されるのと同時に、膣の奥の最も柔らかい部分を硬い肉棒で押し上げられ、名無しは弱々しい声で鳴いて涙を流した。

「……俺はずっとこうしたかった」

宥めるようにうなじから耳の付け根まで舐め上げられ、男の逞しい両腕に捕らわれて逃げ出す事も叶わないまま、名無しは清正に一層深く腰を打ち付けられる。


「お前の裸を見てから、生で思い切り中出してやりたいと思っていた」
「いやああん……清正ぁぁ……」


清正の卑猥な台詞にすらゾクゾクするほど感じてしまい、名無しは夢中で腰をうねらせた。

「あっ…いやっ…やめて…もう…死んじゃう……」

粘液を絡めた男のモノが名無しの奥深くまで突き上げ、ズルズルッ…と引き抜かれていくリズムに合わせ、名無しのよがり声も甘く淫らに乱れていく。

グチャグチャと清正の男根が名無しの肉壺を掻き混ぜる度に、もっともっと名無し自身も淫らな存在になっていく。

「あぁぁぁぁ────イクぅぅ────っ」

清正によって高みへと追い上げられる淫蕩な己の姿が鏡に映っているのを知りながら、名無しはイキ果てた。

これで何回目の絶頂なのか、そんな事など名無しにはもう分からない。

イッた瞬間、名無しの内壁は清正の男根をきつく締め付けたままで、まるで清正の物を搾るように蠢いた。

キュウキュウと小刻みに動くイソギンチャクのような名無しの膣の心地良さに、清正も堪えきれずに絶頂を迎える。

再奥を叩くような勢いで放出された清正の精液が、名無しの中をたっぷりと満たしていく。

「…っ、く…」

清正は微かに眉間を寄せて絶頂の余韻に浸っていたが、射精はまだ終わらない。

一週間禁欲生活を送っていたというだけあって、この日の清正はいつも以上に大量の精液を名無しの膣内に放っていたようだった。

一度精を放出した後でも、清正の先端からはドクドクッ…と、少しずつ白濁液が漏れ出している。


「は…ぁ…。名無し……っ」


ああ…、気持ちが良い。満たされる。最高だ。


これこそ俺が求めていた狩猟の喜びだ。勝利感だ。征服感だ。他の何物にも代え難い心地良い陶酔感。


……でも。


(足りない)


名無しの中でイッたばかりだというにも関わらず、清正はもう飢餓感を覚えていた。

ようやくありついた名無し≠ニいう名の餌を前にして辛抱堪らないといった感じで、清正の中で再度名無しに対する性欲と独占欲がムクムクと湧き上がる。


────これでは足らない。


「あぁぁぁ…清正…もう…もう……」

泣きながら許しを求める名無しを、清正の怜悧な双眼が見下ろす。

「冗談だろ?名無し。こっちは待ちに待ったご馳走なんだ。こんなんじゃ全然喰い足りないぜ……」
「…ひ…、ぁ…っ。清正………」
「この清正様が一回や二回で満足するなんて、そんな都合のいい話があるはずがない。俺に抱かれるっていうのはそういう事だ。夢の中で十分身に染みただろう?何度でも……可愛がってやるよ」

名無しの体内から己の物を引き抜こうという気配すら見せず、血に飢えた獣のように獰猛な男の双眼がニヤリと笑う。


「俺が存分に腹を満たすまで、自由は与えない。お前を手放す気はないぜ────名無し」
「あぁん……清正ぁぁ……。そんな………っ」


絶頂の余韻でグッタリしたまま動けないでいる名無しの内部で、再び清正の分身が緩やかに動き出すと、名無しの全身はビクビクッと跳ね、彼女の口から悲鳴にも似た喘ぎ声が漏れ始める。

清正は今まで募らせてきた名無しへの思いを全て発散させるようにして彼女の肉体を犯し抜き、名無しの部屋では明け方近くになるまで甘い喘ぎ声が途切れることなく続いていた……。



数日後。

『見事成功した暁には、そのしおりは自然にあなたの前から消滅しますゆえ……』

老婆の言葉通り、名無しを現実世界で抱いた日を境にいつの間にかしおりがなくなっている事に気付いた清正は、名無しの件に関する礼を述べに老婆の店を訪ねようと思っていた。


だが、後日清正が再びあの店を訪れた際。


確かにそこにあったはずなのに、老婆の店はまるで最初から存在などしていなかったかのように、その場所から忽然と姿を消していた───────。




実質的に自分自身を捕食するものがいない、食物連鎖の頂点に位置する捕食者。それが『頂点捕食者』だ。

オオカミ、ライオン、ツキノワグマ、キングコブラ、オオワシ、ハヤブサ、ワニ、シャチ、ホホジロザメ、その他諸々。

陸生種、鳥類、水生種と集めれば様々な種類の頂点捕食者が存在するが、その中に虎もいる。


つまり─────この俺≠セ。


名無し。お前はどこまでも旨そうな、白い肉の塊。

こんなに美味しそうな獲物が自分の近くを何の警戒心もなく無防備なままでウロウロしているっていうのに、おあずけを食らわされる苦痛と満たされない体の疼き。

だが名目上、お前は喰ってはならない事になっている。俺の『仲間』という事になっている。俺の獲物にならないよう、お前は『女友達』という鉄壁の城砦を築き上げ、俺の侵入を防いでやがる。

だから俺は待つ事にした。お前が自らその城砦から出てくるまで。お前が自ら、俺の狩り場≠ノ堕ちてくるまで。そうなったらこっちのものだ。

俺の領域に立ち入ったが最後、追い詰めて、追い詰めて、どこまでも追い詰めて、そして永遠に塞いでやる。俺からの逃げ道を。


残念ながらお前は虎の前に躍り出た子鹿みたいな存在だ。お前が俺に勝つなんて到底無理な話だし、無駄な抵抗はやめた方がいい。


頂点捕食者の名にかけて、お前は俺が狩ってやる。俺の意地にかけてもな。



一度狙いを定めた獲物は、絶対に仕留めるのが俺の信条。




………逃がしはしないぜ。




─END─
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