異次元 | ナノ


異次元 
【頂点捕食者】
 




植物の葉をバッタが食べる。バッタをカマキリが食べる。カマキリを小鳥が食べる。小鳥を鷲が食べる。


この世に存在する生き物の生態系について語る上で、食物連鎖という概念は外せない。他者を食うモノと食べられるモノ。要は捕食と被食の関係だ。


そんな食うか食われるかの関係性だが、その食物連鎖の関係性においてトップに君臨する生物がいる。


実質的に自分自身を捕食するものがいない、食物連鎖の頂点に位置する捕食者。それが『頂点捕食者』だ。


オオカミ、ライオン、ツキノワグマ、キングコブラ、オオワシ、ハヤブサ、ワニ、シャチ、ホホジロザメ、その他諸々。


陸生種、鳥類、水生種と集めれば様々な種類の頂点捕食者が存在するが、その中に虎もいる。


つまり─────この俺≠セ。


名無し。お前はどこまでも旨そうな、白い肉の塊。


お前が三成に抱かれているのを見た時に感じたあの興奮。体の奥底から突き上げてきたあの疼き。


俺はお前を餌≠ノしていたあいつを心底羨ましく、憎らしいと思った。そして同時に、俺もお前を喰ってみたいと思った。


それ以来、俺はお前を見ているだけで喉が渇く。腹が減る。どうしようもなくカラダが渇く。


こんなに美味しそうな獲物が自分の近くを何の警戒心もなく無防備なままでウロウロしているっていうのに、おあずけを食らわされる苦痛と満たされない体の疼き。


でも名無し、お前にはどうせ分からないんだろう?俺の絶望が。俺の欲望の滾りが。全身を苛む渇望感が。このままじゃ飢え死にしそうだ。


だが名目上、お前は喰ってはならない事になっている。俺の『仲間』という事になっている。俺の獲物にならないよう、お前は『女友達』という鉄壁の城砦を築き上げ、俺の侵入を防いでやがる。


だから俺は待つ事にした。お前が自らその城砦から出てくるまで。お前が自ら、俺の狩り場≠ノ堕ちてくるまで。そうなったらこっちのものだ。


俺のフィールドに立ち入ったが最後、追い詰めて、追い詰めて、どこまでも追い詰めて、そして永遠に塞いでやる。俺からの逃げ道を。


残念ながらお前は虎の前に躍り出た子鹿みたいな存在だ。お前が俺に勝つなんて到底無理な話だし、無駄な抵抗はやめた方がいい。


頂点捕食者の名にかけて、お前は俺が狩ってやる。俺の意地にかけてもな。



一度狙いを定めた獲物は、絶対に仕留めるのが俺の信条。




………逃がしはしないぜ。




─清正夢・【頂点捕食者】


[TOP]
×