「ほれ、アイス」
「え?いいの?」
「いいからやるって言ってんの。さっさと食えよ、早くしねえと溶けるぜ」
「…ありがとう凰壮くん!」
帰宅してすぐ、クーラーを全開でつけたものの、まだ部屋全体に行き渡らない凰壮の部屋。
なにか手っ取り早く涼を得られるものはないかとキッチンの冷凍室を漁っていたら出てきた残り物のアイス。
丁度二本余っていたので凰壮はしめしめとアイスをわしづかんで持ってきた。
翔にあげたと言えば兄弟喧嘩も避けられるだろう。
未だ冷房の効かない部屋で待たせていた翔に徐にそれを差し出す。
最初は遠慮がちな視線を凰壮に向けていた翔だが、凰壮の諾の言葉に喜んでアイスを受け取った。
外はアスファルトの照り返しが激しい灼熱地獄。暑さに体力を消耗した身体に冷えた食べ物は本当に有り難い。
翔は喜びいさんでビニールの包装を破った。
凰壮も翔にならって包装を破り、中から出てきた棒状のそれに思いっきりかじりついた。
所詮アイスバーと呼ばれるそれは、木製のバーに棒状のアイスがまとわりついてる状態のもので、上からかじりつくなり舐めるなりして食べていくものだ。
(つめてー…)
熱に侵された身体を内側から冷却してくれるアイス。
頭がキンキン痛くなるくらいに冷えたそれを貪る快感に凰壮は酔いしれていた。
同じくその快感に浸っているだろう翔に視線を移した凰壮。
凰壮はアイスを床に落としそうになった。
翔は棒アイスに舌を這わせていた。
赤い舌がちろちろと溶けたアイスを掬い上げていくさまは凰壮の目には酷くいやらしく映った。
溶け出しそうになったアイスを慌てて口にくわえ、ちゅぱちゅぱと吸い上げるように舐めていく翔。
小さい口いっぱいにアイスを含んでゆっくり食べていく翔は凰壮の劣情をこれでもかと煽ってくる。
(エロすぎだろ…)
翔がくわえている棒状のそれが凰壮には別のものに見えてしまい、凰壮は気の毒なくらい顔が熱くなった。
「ほーぞうひゅんほーひひゃの?」
茹で蛸のように真っ赤になった凰壮を翔は心配したように上目遣いで案じた。
アイスをくわえたまま喋るので舌たらずの口調になってしまうのがまた、よくない。
そんな翔を見ないようにしながら、凰壮は吃りながら翔に叫んだ
「な、なんでもねえよ!そっそれよりおまえトロトロ食いすぎなんだよ!溶けちまう「あっやばいやばい!…溶けちゃってるよー!!」ぞ………」
アイスが溶けないうちに早く食べろおれの理性がもたない
言外にそんなメッセージをこめて催促しようとした凰壮だがすでに遅かった。
翔のアイスは溶けだし、とろとろとバーを伝い翔の手を汚していた。
ミルクアイスなのがまたいけなかった。
翔の手にだらだらと垂れているミルクアイスだった白い液体がまるで別の白濁液のように卑猥に映ってしまい凰壮は翔の手を食い入るように見つめた。
「おまえ…手」
「ああっ!うわあーベタベタする」
「待ってろ!拭くもの持って来…」
「ヘーキヘーキ!これくらい舐めれば大丈夫だって!」
そう言って翔は自身のアイスで汚れてしまった手にゆっくり舌を這わせていく。
手についた白濁を小さな赤い舌が綺麗に舐めとっていく光景は今までに輪をかけて刺激的だった。
凰壮は自身の股間にどくどくと熱い血潮がたまっていくのを感じた。
「ッ…悪ィ!お、おれちょっとトイレ!」
勃起した己自身を庇いつつ前屈みの不格好な態勢で凰壮は席を外した。
「凰壮くん大丈夫かなあ…」
一気に冷たいもの食べてお腹壊しちゃったのかも?
本当のところ凰壮がどうなってるかなど知るよしもなく、翔は見当外れの心配をしながら、残りのアイスをぱくついていた。