『言うこと聞いて!』
「あー腰いた…」
「翔クン大丈夫ですか?」
「………誰のせいだと思ってんの」
「ハイハイごめんなーおれたちが悪かったなー」
「………はやく機嫌なおせ」
(じゃあもっとすまなそうにしなよ…!)
翔はそう叫びたかった。
しかし自分痛む喉や腰をいたわって心の叫びだけに止めておいた。
翔は降矢家の凰壮のベッドの上で泣く泣く伏せていた。
動けないのだ、耐え難い腰痛の為に。
先程降矢家の風呂場で三つ子に行われた無体な行為のせいで翔の体調は最悪だった。
腰は勿論、人にはとても言えない恥ずかしい部位がヒリヒリと耐えがたい痛みを訴えてくる。
逆上せたのだろうか、身体中鉛を背負ったように重く気だるい倦怠感が翔の気分を沈ませる。
気分が優れないのはそのせいだけではない。
それは悪びれもせず翔の側に侍っている三つ子達にも原因がある
翔が床に伏せているのはそもそも彼らが翔を無理矢理丸め込んで性行為に及んだからだ。
ーそれなのに彼らときたら…
伏せている翔を囲み、反省とは程遠い締まらない顔で翔を構いたおしているのである。
「まだ……痛むのか?」
たまらずはぁ、と小さな溜め息をつく翔を三つ子の長男、虎太が心配そうにのぞきこんできた。
虎太は翔のまだ湿っている髪を指で綻びながら彼の頭をずっとなで続けていた。
さも犬や猫のような愛玩動物を愛でているかのように自分に触れてくる虎太が少し癪に障ったが、
本人は悪気があってやっているようには見えない為、翔は彼に関しては目をつぶることにした。
問題は残った次男と三男だ。
「大分無理をさせてしまいましたからねぇ…翔クンには悪いことをしてしまいました」
(…っ…絶対そう思ってないでしょ…!)
竜持は一見自分の非を認め、翔に謝っているように窺えるが翔は到底信じることができなかった。
翔が斜に構えてしまうのは竜持の態度に問題がある。
翔の腰を撫であげる竜持の掌は一見痛みを労っているようにも伺えるが、
その手つきは何処か怪しく、そしていやらしい。
尻を掠めるように触ってくる竜持の掌の感触に翔はいちいちびくびくと反応を返してしまう。
それが竜持をかえって喜ばせ、彼の行為に拍車をかけてしまうことを翔は知らない。
ぺたぺたと際どいところに触れてくる竜持。
そんな彼の涼しげな顔をきっと睨み付けるも、返ってくるのは女性に向けるような蕩けるような笑顔。
まるで糠に釘だ。
「そうコワイ顔すんなよ、翔。おれたちこれでもマジで反省してるんだぜ」
ニヤニヤした下品な表情で翔の肩に触れてくる凰壮。
彼もまた下心を隠しきれていない。
肩から背中、腰に向かってするする降りてくる掌の感触は、擽ったさの中にぞわっとする感覚を覚え、
翔は口からついてでそうになる悲鳴をなんとか飲み込むことに必至だった。
先ほどの行為のせいで翔の身体は少しの刺激で敏感になっていた
服やシーツの布が肌に擦れるだけでも違和感を感じてしまうのに、不意に撫で上げらた時の
えもいわれない感覚に自分の身体が可笑しくなってしまったと感じた翔は不安になってしまった。
たまらず翔は重い身体を起こし、彼らの腕を振り払って拒絶した。
ベッドの隅に後退り、三つ子たちから出来るだけ距離をとるようにして掠れた声で弱々しく叫んだ。
「も、もう触んないでよ!…ぼく本気で怒ってるんだからね…!これ以上からかったら君たちのことキライになるよ…!」
ぎゅっと目をつぶり拒絶の意思をいい放った翔。場の空気が変わる。
三つ子たちの表情が一気に凍り付いたからだ。
翔から発っせられる「嫌い」という言葉は三つ子たちにはかなり堪えたようだ。
今までの締まりのない顔を引き締め、真剣な面持ちになった三つ子は口を揃えて翔に謝罪した。
「ごめんなさい…翔クンのことを考えず、ぼく達の趣欲のみで君に酷いことをしたことは謝ります。
だからどうか…嫌いだなんて言わないでください。」
「翔…すまねえ。おれ、おまえに嫌われたら…どうしていいかわかんねえよ」
「……どうすれば許してくれる」
らしくもなくしおらしくなった三つ子は、翔に言われた言葉に本気で傷つき、
まるで翔に拒絶されることを怯えているようだった。
同じ顔が同様の表情で懇々と謝るさまを翔は呆気にとられたように眺めていた。
まさかあの誰に対しても尊大で傍若無人な降矢三兄弟が自分に対して
あれほど真摯に頭をさげるとは思っていなかったのだ。
三つ子たちがどれほど翔を想っているのかを知らないからこそ、翔はその光景が信じられなかった。
勢いに任せて口をついて出てきた「嫌い」という言葉。
その言葉を発してしまったことを翔は少しだけ後悔した。
「ご、ごめん…!嫌いっていうのは言い過ぎたけどさ………も、もうちょっと…ぼくの言うことも聞いてよ…!
降矢くんたち、ぼくが何言っても全然聞いてくれなかったじゃん」
自然と出てきたのはそんな言葉だった
被害に合ったのは自分なのに、自分も謝ってしまっているのは翔も変だとは思ったが、
降矢三兄弟たちの珍しすぎる反省顔に圧倒されてしまった。
だが、そのあとの言い分は翔の主張のすべてだった。
もう少し自分の主張を聞いてほしい。
先ほどの行為のときだって翔は何度も嫌だ、止めろと三つ子たちに懇願した。
しかし彼らは、翔の言うことなどお構い無しに翔を好き勝手に犯した。
翔の抵抗などどこ吹く風で、翔の意思を無視して行為を強行した彼らを翔は許すことができなかった。
(ぼくはキャプテンなんだ!ここで一度はガツンといっておかなきゃずーっとなめられっぱなしだよ!!)
ここでキャプテンシーの話をするのは全くのお門違いだと思うが、翔にだってプライドがある。
彼らほどではないにしても男としての矜持はある。
いつまでも好き勝手されるわけにはいかないのだ。
だが、翔のこの一言がまたも厄介な事情を産み出してしまうことになる。
「つまり…翔クンの言うことを何でも聞いて、翔クンの命令に従えば許してくれるということですか?」
「え…う、うん?」
竜持の言葉に翔は条件反射的に頷いてしまった。
竜持の解釈は余りにも極端すぎるように見受けられたが彼の言い種は説得力があり、さも正当であるかのように思わせたからだ。
「へぇ…翔がサッカー以外でおれたちに命令ねえ…ま、たまにはいいんじゃねえの?」
こくりと頭を縦に振った翔を見て、凰壮は口元をつりあげてニヤリと笑った。
「わかった………今日一日おまえの言うこと聞いてやる」
「虎太クンもそう言ってますし…今日だけ限定できみの言うことを聞いてあげますよ。何でもお申し付けくださいね、キャプテン?」
その言葉に虎太も頷き、竜持も口角を弧のように吊り上げていつも通りの不敵な笑顔をみせた 。
(ぼ…ぼくもしかしてヘンなこと言っちゃったかなぁ…?)
先ほどのしおらしさは一体何処へ行ってしまったのやら。
水を得た魚のように生き生きと翔にぎらついた視線を送る三つ子たちを見て、翔は軽率な返事を返した自分を少しだけ恨んだ。
☆
「で、おれたちにどうして欲しいんだよおまえは」
「……へ?」
「へ?じゃねえよ!おまえが何かしら言わねえとおれ達も動けないだろうが!」
まだ状況をよく理解していない翔の呆けたような返事に凰壮はいつもの調子で翔を怒鳴った。
「まあまあ凰壮クン…翔クンだっていきなり命令しろって言われても急には思い付かないでしょうから」
「…何かして欲しいことはあるか?」
「え、えええ〜…」
「遠慮とかいらねえからさっさと言えよ翔。おれたちがやるっつってんだからさ。」
滅多にねえぞ、こんなこと
凰壮の呟きに翔は確かにそうかもと納得した。
ただ事ではない。
あの自己中心的で他人の指図を何よりも嫌う三つ子の悪魔が翔の言うことを何でも聞くと言っているのだ。
最近では三つ子たちにも漸く翔の試合の中でみせる観察力が認められ、プレイ中は自分の指示に耳を傾けてくれるようになった。
しかし、未だ同等には見られてないんじゃないか?どこか馬鹿にされてるんじゃないか?
…そういった雰囲気は否めないのだ。
自分のサッカーの技術的な実力は彼らには到底及ばないし、キャプテンとしても何分威厳があるとはいえない。
キャプテンになって日も浅く、まだまだ至らない点が多いため仕方ないといえば仕方ないのだが、
やはり同年代の同性に見下されっぱなしなのは翔とてそれなりに悔しい。
だからこそ三つ子に何の臆面もなく堂々と命令できるこの状況はまたとない貴重な体験ではないだろうか?
これは三つ子のきまぐれだ。こんなチャンスは二度とないかもしれない。
そう考えると翔は何故か嫌にわくわくしてきた。
(え、えーと何をお願いしよう?)
翔は少し考えて、そういえば先ほどから喉が渇いていたことを思い出す。
先の風呂場で三つ子たちに散々叫ばされる羽目になったので翔の自慢の声量は掠れ、
喉はからからで水分が足りない状態だった。
(これくらいならお願いしても大丈夫だよね)
「えっと……ぼく喉が渇いたんだけど」
翔は控え目に上目遣いで三人の顔を窺いながら最初の『命令』を下した。
命令とは到底呼べないほどの柔らかい懇願。
(((か、可愛い…!)))
まるでおねだりするような翔の愛らしい仕種に三つ子の心拍数があがる。
三人とも興奮で頭に血がのぼっていた最中、翔の言葉に真っ先に反応出来たのは竜持だった。
「ッ…わかりました。冷たい紅茶ならすぐに出せますがそれでいいですか?」
「う、うんいいよ!お願いね?」
翔はこくりと頷いて竜持の目を見てにっこりと愛らしい笑顔を見せた。
(ハア…これだから翔クンは…だからこそぼくたちだって付け上がるんです)
無意識に男を喜ばせる所作をする翔を見て竜持は心中溜め息をついた。
(全く…翔クンにはドキドキさせられっぱなしですね)
だがここで終わるのが竜持ではなかった。
翔の顔をじっと見つめ蕩けるような笑顔を見せた竜持は、翔の手首を持ち上げ、彼の手の甲に恭しく口づけを落とした。
「仰せのままに、お姫様」
わざとらしくチュッとリップ音をならしながらキスをする竜持の恥ずかしい仕種に、
翔の顔はつい先ほど逆上せたときのように真っ赤になってしまった。
「おい竜持!!」
「…」
「フフフッ…はいはい怒らない怒らない、じゃあぼくは紅茶取りに行ってきますねー」
目くじらをたてながら竜持を咎める凰壮と虎太に構わず、竜持はひらひらと手を振りながら
いつも通りの飄々とした態度で部屋を出ていってしまった。
「クッソ竜持のやつ…!おい、おれたちはどうすりゃいいんだよ」
「え?え、えーと」
地団駄を踏みそうな勢いで怒りを露にしている凰壮の気迫に圧され翔はまた三つ子たちに下す『命令』を考える羽目になる。
「早く言えよ」
無表情だが先程の竜持の抜け駆けに苛立つ虎太の鋭い視線の威圧を感じつつも
翔はうーんうーんと唸りながら次の命令を決めかねていた。
ファミレスでメニューを選ぶとき翔はよく目移りしてしまうのだが、そんな優柔不断さが今は疎ましかった。
ウキウキしながらどの料理にしようか…そんな楽しい雰囲気ではないのだ。
目の前には翔の返事を今か今かと待ち構えている怖い顔をした降矢家の長男と三男が虎視眈々と睨みをきかせているのである。
どうしようどうしよう…考えているうちに腰がまたもズキズキ痛みだす。
腰が、痛む。
「…あっ!腰が痛いからマッサージしてもらいたいなぁ〜…なんて」
翔の口から咄嗟に出てきたのは思い付きのような『命令』だった。
丁度腰が痛かったことを思いだしたというだけの安直なものだった。
「い、いいのか…!」
最初に食いついたのは虎太だった。
なにを期待しているのか、両手をわきわきさせながらぎらついた獣のような視線を翔に向けている。
この手のことに鈍感な翔でも虎太の反応の意味はわかる。
虎太は、絶対間違った期待をしている。
マッサージと称して翔に性的な接触を謀ろうとしているのだ。
ぼんやりとそれを感じ取った翔はぶるりと身震いをした。
先程の竜持のように不埒な行為をほのめかすような触れられかたをされてはたまったもんじゃない。
「ちょ…!さっきみたいなへっ…変なことするのはぜーーーったいダメだからね!!!」
虎太の異様な気迫に怯えた翔だが、負けじと二人に向かって今できる精一杯の大声で釘をさした。
「変なことって具体的になんだよ?おれたち言われねえとわかんねえよ」
必死な翔に対し、ニヤニヤと笑いながら翔の言葉の揚げ足をとる凰壮。
からかうような凰壮の態度にムキになった翔が彼なりの牽制の言葉を発した。
「エッチっぽいこと!!!またやったら凰壮くんたちのこと嫌いになるから!!」
「チッ…またそれかよ」
髪をかきあげながら舌打ちをする凰壮を翔はきっ、と睨みつけた。
「文句あるならここから出てってっていうよ!?」
翔の珍しい怒り顔に凰壮と虎太は少したじろいた。
別に怒っている翔の顔が怖いというわけではない。
威圧感もないしむしろ、翔の大きな瞳で睨まれながら咎められ、あの愛らしい声でたしなめられようものなら
もっと怒っている翔を眺めていたいというものだ。
しかし翔の機嫌をこれ以上損なわせるわせては本末転倒である。
何しろ今回の翔の言うことをなんでも聞くという取り決めは『形式上』、翔のご機嫌とりが目的なのだから。
「わかったわかった、おまえの言うおかしな真似はしねえよ。普通にマッサージすりゃいいんだろ?」
「翔の身体…いたわってやる」
やれやれと肩をすくめながら凰壮は手首をならした。
虎太も静かに頷いて翔のマッサージをすることを了承した。
「わかればよろしい!!はいっ!そうと決まればはやくやるっ」
バーン!
翔はうつ伏せに寝そべりマッサージの催促をした。
えっへんとでも言い出しそうな偉そうな態度で自分達を振り替える翔に凰壮ははぁと溜め息をついた。
「…………おまえ、結構ノリノリじゃね?」
「なんか言った?凰壮くん」
「…へーへーなんでもねーよ、翔サマ。おし、やるぞ虎太…変な気おこすなよ」
「………おまえもな」
凰壮と虎太による『健全な』マッサージが始まろうとしていた。
☆
「んっ、うぅっ…はぁ…」
「おや、凰壮クン、虎太クン…ぼくが居ない間にお楽しみ中ですか?…抜け駆けとは感心しませんね」
「…んなわけあるか、これじゃあ生殺しだ。」
竜持が部屋に戻ると、うつ伏せに寝そべる翔の身体の上に虎太と凰壮が跨がるように覆い被さっていた。
彼らの下でくぐもったうめき声をあげる翔に一見兄弟達が自分を差し置いてフライングでもしたのだろうかと竜持は苛立った。
しかし、それは直ぐに杞憂だとわかった。
全く乱れていない服装、せっせと甲斐甲斐しく翔の身体を揉みほぐしていくだけの兄弟達の手の動きに
すぐにそれがただの『健全な』マッサージだと判別できたのだ。
それはまあ…この兄弟達が『健全な』思考でマッサージを施しているとは到底思えないが、
凰壮の言葉からして邪な思考を圧し殺す努力はしていることが伺える。
もう一人の無口の兄などは態度にすぐ表れるので更にわかりやすい。
「そうでしょうね…虎太クンなんて滅茶苦茶欲求不満って顔に描いてますから」
「……翔…ハア、ハア……」
「ま、ご主人様にお預けくらっちゃあしょうがねえよな」
過度の興奮で頬が紅潮し息があがっている虎太を顎でしゃくりながら 凰壮は苦笑した。
そんな凰壮もまた、息が整っておらず真っ赤な顔で明後日の方向を見つめていた。
翔の言う『エッチなこと』禁止令を受けたままマッサージをさせられることになった虎太と凰壮。
彼らは竜持が来るまで、まさに天国のような地獄のような時間を過ごしていたのだった。
身体を揉みほぐすたび漏れ出る、翔の喘ぎまじりのいやらしい呻き声を目の前で聞かされながら
彼らは悶々と腕を動かし続けていたのだ。
暴れ出しそうな欲求を押さえつけて、ただ無心に翔の柔らかく細い肢体に触れ続けるのは
凰壮の言う通り『生殺し』状態以外の何物でもなかった。
「翔クン、起きてください。紅茶持ってきましたよ」
竜持は気持ち良さそうに目を閉じている翔の肩をつかんで、ゆっくりゆすり動かした。
「んん〜…もう朝…?」
「・・・本当に寝てたんですか」
寝ぼけ眼の翔が目をこすりながら覚醒した。
どうやらマッサージがお気に召したようで、気持ちよくうとうとしていたらしい。
虎太と凰壮の葛藤を思えば、随分と暢気なものだなと竜持は思ったがそんな鈍いところも翔の愛すべき点では
ないかと思い直し苦笑した。
「翔クンほら、紅茶です」
ハイ、とつめたいアイスティーの注がれたグラスを翔の目の前に差し出す竜持。
だが、翔はそのグラスを注視するだけで、一向にそれに触れようとしない。
「どうしたんですか、翔ク・・・」
なかなかグラスを受け取らない翔を訝しげに見つめた竜持は再度彼に呼びかける。
竜持の声に反応した翔は腕をそろっと虚空にさまよわせグラスのほうに腕を伸ばした。
しかし、翔がつかんだのはグラスではなく、竜持の手首だった。
「うぅーん・・・起き上がるのめんどくさい〜・・・ねえ、りゅーじくんが飲ませてぇ?」
まだ寝ぼけているのか、甘えたような舌ったらずな口調で翔は竜持に爆弾を投下していった。
とろんとした濡れた緑の瞳がじっと竜持を見つめている。
まるで早く早くと催促をしているかのように。
現在の翔は危険な思考を持ち合わせていた。
先ほどから三つ子達が翔の言いなりになっている為、自分が命令すれば彼らが何でも言うことを
聞いてくれると思い込んでしまっているのだ。
普段は人に頼まないようなことを、いつも人の言うことなど聞く耳を持たない彼らが
二つ返事でやってくれることに味をしめてしまい、気が大きくなってしまっていた。
その倒錯思考が翔の危機的意識を大いに鈍らせていた。
あの計算高い竜持が腹に二物三物持ち合わせていないわけがない。
「わかりました、飲ませればいいんですね。」
不敵な笑みを浮かべた竜持は持ってきた紅茶をそのまま口に含んだ。
目の前で自分に用意されたはずの紅茶を飲む竜持に呆気にとられた翔だが、
次の瞬間思いっきり瞳を見開いた。
「!?んぅっ…!?!」
竜持が翔の唇を自分のそれで塞いだのだ。
「んっんんん〜〜〜っ!?」
突然のキスと呼ばれる行為に翔は瞳を思い切りひん剥いて驚きを露にした。
驚くのはそればかりではない。
翔の口腔内に突如として多量の水分が流し込まれたのだ。
ほのかな渋みと甘さから、それは先ほど竜持が口に含んだ紅茶なのだと翔は混乱した頭で察知した。
彼の口内で少し温くなった紅茶が翔の喉に直接注ぎこまれていく。
嫌がおうにも、強制的に流し込まれる液体に翔はパニックになり反射的に紅茶を吐き出そうとしたが、
竜持に唇を塞がれ出口を失った以上、それもかなわず泣く泣く嚥下するしかなかった。
「んんうぅぅ・・・うぇ・・・うっ」
飲み込みきれず嚥下しきれなかった紅茶が顎を伝い落ち、翔の服をしとどに濡らしていった。
竜持が唇を離すころには、唾液か紅茶か判別しがたい液体を口元にてらつかせ、襟元をそれらで汚した
翔が白痴のように呆けていた。
半開きになった濡れた唇から覗く赤い舌が艶かしく彼らを誘う。
「おれたちも飲ませてやる」
「今度はしっかり飲めよ」
翔の唇に誘われ虎太と凰壮も紅茶を口に含み翔に深い口付けを落とす。
「〜!?んーー!!んーーーー!!!」
交互にわざと翔の飲み込みきれない量を流し込み、翔の反応を楽しもうとするあたり、流石三つ子の悪魔である。
混乱して鼻で呼吸することを忘れた翔はだんだん息が苦しくなり、どんどんと今覆いかぶさっている虎太の背中を叩く。
それでも虎太の身体はびくりともせず翔の顎をつかんで離そうとしない。
しかし、ついに翔にも限界がきてしまった。
「ぐがっ!!かはっ…!かっ!ケホッ、ケホッ…!」
気道に異物が入りそうになったときに反射的に起きる咳そう反応…所詮翔は噎せてしまったのだ。
「…!」
流石の虎太もこれには驚いて口を離し苦しげに咳をする翔を黙って見守った。
咳によって口に含まされた紅茶を撒き散らし、その飛沫がビシャビシャと翔の服やシーツを汚していく。
「おい、大丈夫か!」
「わりぃ…調子にのってやりすぎた…ごめんな翔」
心配そうに翔の背中を優しく撫でさする虎太と凰壮に翔は苦しそうながらも健気に笑顔で返事をしてみせた。
「はぁ…はぁ…ゴホッ…い、いいよ…ぼくも飲ませてなんて変なこと言っちゃったし…それよりもシーツと服、汚しちゃってゴメン」
しゅんと肩をおとす翔。
見かねた竜持が励ますように彼の肩にポンと手をおいた。
「構いませんよ、これくらい洗えば落ちます。それよりも早く着替えないと…このままでは風邪を引いてしまいます。」
…ちょっと失礼します。
そう言って竜持は汚れてしまった翔のTシャツの裾に徐に手をかけた。
そしてそのまま上にめくりあげ翔の服を脱がせようとしたのだ。
Tシャツを一気に捲られ、慌てた翔は服の裾を懸命に引っ張って元に戻そうとする。
「いっいいよ!!自分で着替えられるから!!着替えだけ貸し…!」
「まあまあ、いいじゃないですか…ホラ翔クン、バンザーイ」
「わあぁ!!」
有無を言わせず、竜持は翔の両腕を無理矢理挙上させ、衣服を下着ごと素早く引き抜いた。
翔はたちまち三つ子たちにむき出しの上半身を晒すことになってしまった。
翔は羞恥に耐え切れず頬を赤らめて三つ子たちを睨み付けた。
「もぉっ…急に脱がすなんてひどいよぉ…!」
「いいじゃねえか。濡れたままの服着続けてるのも気持ち悪いだろ?」
「…そりゃそうだけどさ…!」
確かに凰壮の言葉にも一理あると思う。
濡れてぴっちりと肌にはりついた服は決して気分のよいものではない。
濡れて冷えた服は身体の体温を急速に奪うため竜持の言ったとおり風邪をひくかもしれない。
…だからと言っても横暴すぎでしょう!?
翔はそう怒鳴りたかったのだが、本能的にこの状況で彼らに逆らってもいいことはない気がしたため、泣く泣く意見を圧し殺した。
「おい…下はどうなんだ」
虎太の指摘に全員の目線が翔のズボンに集中した。
翔のズボンは紅茶の飛沫がこれでもかと飛び散っており濡れたあたりのズボンの色が濃くなっていた。
ずぶぬれの翔のズボンをまじまじ見つつ、凰壮がわざとらしく呟く。
「あーあ、下もビショビショだなこりゃ…これじゃ下着まで貫通してんじゃねぇ?」
どうする虎太?
凰壮は後方でむっつりしていた虎太をニヤつきながら振り返る。
虎太の返事は聞かずともわかっていたが、無口な彼が主張したくてうずうずしているのが解かったため
あえて聞いてみたのだ。
「全部脱がすしかないだろ」
虎太の意見は予想通りの肯定だった。
凰壮は更に笑みを深め、嬉々とした表情で翔に覆いかぶさった。
「リョーカイ、そうこなくっちゃな!そらっ」
「え、うわっちょ、ちょっと待ってよ凰壮くん!わわわっ…!!」
性急に翔のズボンに下着ごと手をかけた凰壮は、そのまま思いっきり引き摺りおろした。
勢いで露出した翔の小さな陰茎がぷるんと存在を主張する。
「うわわっ…!!」
「すっきりして良かったですねえ、翔クン」
外気に触れすーすーする局部に焦り、慌てて両手で股間を隠す翔に竜持が目を細めた。
「良くないよ!もう…!!なんでもいいから早く服着せてよっ…!」
涙目で三つ子たちを睨みつけ文句を言う翔に三つ子たちはたまらず欲情してしまう。
それもそのはず、三つ子達に着ていた服をすべて脱がされてしまった翔は、彼らのめのまえで一糸纏わぬ姿なのだ。
生まれたままの姿でベッドの上に転がされる翔。
恥じらいながら両手で股間を抑えて隠そうとするその姿は、彼らの劣情に訴えるものがあった。
『おいおい…これって据え膳ってやつじゃねーの?ここでヤらなきゃ損じゃねえ?』
『そんな簡単に盛らないでくださいよ、凰壮クン…ぼくも虎太クンも我慢してるんですよ』
『ッ…服着せてやれ、はやくしねーと襲いたくなる…』
寝そべっている翔に聞こえない程度の声量で、彼の周りに座り込んでいる降矢三兄弟は
悶々と襲いくる性的欲求を耐え忍んでいた。
このまま全裸の翔を見続けるのは非常に眼福なのだが、いかんせんまた性的行為を迫って
しまい、翔の身体に負担をかけさせるのはなんとも申し訳ない。
とにかく服を、服を着せなくては。
「おい翔!とりあえずこれ着てろ!!」
「あ、うん有難う凰壮くん・・・」
焦った凰壮は徐に自分の着ていたフリースを脱ぎ、翔のほうへと投げてよこした。
翔のほうを見ようとしないのは勿論素っ裸の翔をこれ以上見ないためだ。
竜持や虎太も視線をさまよわせ翔のほうを見ようとしない不自然な状況に翔は首を傾げる。
先ほどから彼ら同士で内緒話をしていたみたいだし変だ変だとは思っていたのだが
今はそれよりも服を身につけることが先決だ。
翔は凰壮の服を羽織り、ファスナーを閉めてみる。
上半身の肌寒さはなくなったが、下半身は何も身につけていないためやはり寒々しい。
「あのさ…えっと、下のほうの着替えはないの?」
たまらず、翔は自分を見ようとしない三つ子に声をかけた。
いっせいに視線を向ける彼らの気迫といったらなかった。
同じ顔が同じ顔で驚愕しているさまはまさに圧巻だった。
「しょ…翔!?」
「!これは……」
「ますますいやらしいですね………」
驚愕もする。凰壮の上着を一枚纏っただけの翔は想像以上に刺激的な格好だった。
一回りサイズの大きい凰壮の服は翔の中心部を覆うことには成功したが、
少しでも動いてしまえば尻や大事な部分が見えてしまいそうになるのが何とも心許ない。
翔の剥き出しのほっそりとした生足がシーツの上に投げ出されている光景はなんとも艶かしい。
全裸以上のインパクトが三つ子たちの股間に直接訴えかけてくる。
「あー、やべ…今すぐヤりてえ…足にぶっかけてえ」
凰壮の興奮は最高潮、今にも自身を取り出して扱き出しそうな勢いだった。
無理も無い、翔が着ているのは凰壮の服だ。
好きな子が自分のぶかぶかの上着を着てかつ自分のベッドの上で縮こまっているのだ。
先ほど彼のいっていた『据え膳』とはまさにこのことかもしれない。
「こらこら凰壮クン、いかがわしいことをしたら翔クンに嫌われてしまいますよ」
「おれだって我慢してんだ…勝手に暴走すんな」
「チッ・・・」
しかし彼らは、先ほど翔に対して、性的な接触を強要して嫌われかけたばかりである。
欲望のまま翔に情をぶつけてしまいたいが、翔に嫌われるのだけはなんとも避けたい。
他の兄弟たちに咎められ、凰壮は苛立たしげに舌打ちをした。
そんな凰壮の耳元に竜持はこっそり囁いた。
「今は耐えてください。しばらくしたら、もっと楽しいことがおきますよ。普段は見れない翔クンをたっぷり堪能できますから」
楽しみにしていてくださいね?
(…こいつぜってえなんか企んでやがる)
意気揚々と含み笑いをする竜持に凰壮は一抹の不安を抱えながら、これ以上刺激的な翔を見ないようにと明後日の方向を向いた。
「あ、あのさ・・・その・・・えっとぉ」
変化は意外とすぐに起きた。翔が突如そわそわとし始めたのだ。
しどろもどろに話しかけてくる翔に虎太が返事を返してやった。
「どうした」
「な、なんか急に・・・!おしっこいきたくなっちゃって・・・!」
もじもじと股を擦り合わせて翔は尿意を催した。
かなり切羽詰ったような苦しげな顔をしている翔。よほどに強い尿意なのだろう。
我慢している顔がつらそうだ。
訴えかけるような上目遣いの懇願に何故か竜持の笑みが深くなる。
「フフッ…そろそろ効いてきましたか…」
「紅茶のことか」
竜持の言葉に虎太はいぶかしげに問いかける。
紅茶は確かに利尿作用のある飲み物である。大量に飲みすぎると頻尿ぎみになってしまうのは
あまりにも有名だ。
しかし、虎太は頚をひねった。翔は紅茶をそれほどまでに飲んでいただろうか?
最初の竜持の口移しでは嚥下していたことがうかがえたのだが、自分が後からやったときはどうだったろうか。
噎せてほとんど吐き出していたように思える。それなのにこの異常な催し方は一体なんなのだろうか?
凰壮もまたそれがひっかかったらしく、竜持の言葉を脳内で何度も噛み砕く。
(効いてきましただ…?効いてきた…くすり…薬!?)
『おい竜持、ひょっとして紅茶に盛ったのかよ…?』
凰壮は竜持にだけ聞こえるような小声で耳打ちをした。
竜持の言う『効いてきた』とは紅茶自体の利尿作用ではなく、紅茶に忍ばされた薬物の効果のことだとしたら…?
普通の小学生では到底ありえない思考だが、この兄弟なら臆面もなくやる気がする。
自分たちは同じ腹で発育してきた存在、なんとなくわかるのだ。
『別に大したものじゃないですよ。ちょっとした利尿薬です。』
市販の薬局でも簡単に手に入るクリーンなものですから。
案の定だった。
悪びれもせず堂々とウィンクまじりに己の犯行をひけらかす竜持に凰壮はため息をついた。
『やっぱりな…でも薬ってお前・・・流石にやりすぎじゃね?』
竜持の度肝を抜かされるような行動に、凰壮は呆れ過ぎて開いてる口が塞がらない。
凰壮は三つ子の中でもなんだかんだ一番世話焼きで面倒見が良い。
特に大好きな翔に対しては非常に気にかけているため、彼の身体が心配なのだ。
だからこそ用法用量を間違えてしまえば簡単に健康を害してしまう薬物を遊び半分で投与してしまうのは
どうだろうと考えたのだ。
しかし、凰壮のこの真っ当な思考は竜持の誘惑にすぐ、ぐらつくことになる。
『凰壮クンは見たくないんですか?翔クンのお漏らしするところ』
『…そりゃあ、まあ…』
竜持の悪魔的な問いかけに、凰壮は決まりの悪そうな顔で曖昧な肯定の返事を返した。
普通同級生の排泄を見る機会などトイレではちあったときにチラッと見てしまうとかそれくらいである。
間違っても好き好んでまじまじと見物するものではない。
凰壮は特に他人の排泄する所に興味がある趣向ではないし、むしろそういった趣向は常識の範疇から考えて異常だと思う。
(翔のだったら…見たくねえって言ったらウソになるけどよ)
しかし、それが不特定多数ではなく、想いを寄せる人物のものであるなら話は変わってくる。
好意をよせている人物のどんな姿でも見てみたいというのは人間の欲求として当然のことではないだろうか。
特に排泄など他人に普段見せない、見られてはいけない行為をしかもトイレ以外の場所で晒す非日常。
羞恥に頬を紅潮させながら自分達の前で放尿してしまう翔を想像すれば自然と身体の中心に熱が溜まっていくものだ。
凰壮はゴクリと固唾を呑んだ。
隣で虎太も生唾を飲む音が聞こえる。虎太も同意見のようだ。
静かに興奮する兄弟たちを一瞥した竜持はフッとほくそ笑んだ後、翔にわざとらしい声量で話しかけた。
「翔クン、オシッコしたいですか?」
「そ、そりゃあ!勿論…!!このままだと漏らしちゃうよ!」
「わかりました、ちょっと待ってくださいね」
首が外れるんじゃないかというくらい頷く翔に苦笑しつつ竜持は部屋を出て行った。
戻ってきたのはすぐだった。
なにかの容器と敷物を持ってきた竜持はフローリングにそれらを並べ組み立てる。
「お待たせしました。はい、それでは此方にどうぞ」
そう言って竜持が示したのはビニールシートの上に大きめの洗面器をのっけただけの簡易な便器だった。
最低限、液体を受け入れるだけの容器と飛び散っても大丈夫な配慮がなされただけの便器。
果たしてこれを便器と呼んでいいのだろうか?
「や、やだっ!!」
翔が悲鳴をあげる。当たり前だ、いくら急激に催したとはいえ、こんなオープンな場所で排泄したくない。
「お前…最初からこのつもりだっただろ」
「当たり前じゃないですか、野暮なこと聞かないでくださいよ」
あまりにもの用意周到さに虎太が突っ込みをいれるのを竜持は薄笑いで流した。
翔はこの洗面器に排泄する自分を思い浮かべ身震いをした。
このままこの便器まがいのもので排泄するわけにはいかない。
翔は竜持に本物のトイレにいきたいと懇願した。
「竜持くんいやだよ…ぼく、こんなところでしたくないよ・・・!お願い、トイレに行かせて・・・!?」
「行けるなら行ってもいいですけど、まず歩けます?そのカッコでトイレまで負ぶってあげてもいいですけど・・・
家の者に見られたらどうしましょうか?そもそもトイレまで持ちますかねぇ?ぼくの上で漏らしちゃうんじゃないですか?」
「ううぅ…!」
歌うように楽しげな口調で絶望的なことを言ってのける竜持に翔の顔は青ざめる。
結局三つ子達は何度言っても下に着るものを貸してくれなかった。
いきなり出せないやらサイズがないやら全て言い訳がましい理由だったのに苛立ったが、この異常な尿意の最中
トイレに行く道中で果ててしまうかもしれない為服以前の問題であった。三つ子達に連れて行ってもらっても同じことだ。
そしてこの状況を降矢家の家人にどう説明すればいいのか?竜持の背中の上で漏らしてしまった日にはもうどんな顔をして
彼と向き合っていいかわからなくなる。
普通のトイレに行く選択肢がもうなくなってしまった。迫りくる尿意に翔は背中に変な汗が吹き出ているのを感じた。
「ど、どうしよ・・・」
「このままだとどっちみち漏らしちまうぜ、翔。おれのベッドの上で漏らす気かよ」
「そ、それもいや!」
もたもたしていると凰壮の言うとおり、彼のベッドで粗相をしてしまう可能性だってあるのだ。
ただでさえ噎せて吐き出した紅茶がシーツを点々と汚しているのに、お漏らしまでしてしまったら・・・暫くは凰壮と向き合えないだろう。
翔は首をぶんぶんと横に振って拒絶した。
「じゃあこっちでしろ」
「わぁ!!?」
ごねる翔に痺れを切らした虎太は翔を横抱きに担ぎ上げ洗面器の置いたフローリングのほうまで彼を運んでいった
急に担ぎ上げられて驚きをあらわにしている翔に構わず虎太はスタスタと負担なく歩いていく。
洗面器の前で翔を下ろそうとした虎太に竜持が声をかける。
「あっ虎太クン、そのまま翔クンの脚を広げるように抱きかかえられますか?」
「ああ」
「えっ・・・ちょっと!ひゃぁっ!!」
虎太は頷き、翔の膝の裏に手を回して脚を広げさせるように担ぎ上げた。
翔が素っ頓狂な声をあげたのは無理も無い。
それはさも幼児におしっこをさせるような恥ずかしい体勢だった。
両脚を固定されているため脚を閉じることもできず、長めのはずだった上着の裾は捲れ、
完全に翔の小ぶりなペニスは白昼の下に露出していた。
外気に晒されふるふると震える翔のペニスはへにゃっと縮こまっており本人同様萎縮している様子が丸見えだった。
「や、やだぁ〜…」
「はい、いいですよ。まさに絶景です・・・これは撮り甲斐がありますね」
竜持の手元にはいつの間にか以前花島コーチのことを調べるときに見たipadが握られていた。
彼は翔の排尿シーンを撮影するつもりである。
「なあ、おれは見てるだけでいいの?」
「そうですね、撮影の邪魔にならなければ何しててもいいですよ」
「オーケー、じゃあ映らねえあたりでじっくり見てるかな」
凰壮はカメラを避けつつ洗面器の正面に座り込み、翔の顔と陰茎を交互に見比べまじまじと見つめた。
後ろから翔の局部を覗き込んでくる虎太、前方でipadを構える竜持、洗面器の目の前で
翔の局部をじっくり観察する凰壮。
同年代の同性にまじまじと局部を凝視される恥ずかしさに翔は両手で顔を覆った。
「そっ・・・そんなじろじろ見ないでぇ・・・!!」
「いいから早く、だせ」
「翔クン、我慢は身体に毒ですよ」
「そうだぜ、翔。おれたちがおまえがオシッコするとこちゃーんと見ててやるからよ」
三つ子たちの催促に首をいやいやと振るばかりの翔。
「手伝ってやるよ」
そう言って洗面器の近くの凰壮が翔の陰茎に手を伸ばす。
そのまま先端部付近の尿道らしきところを指の腹でえぐって刺激を与えた。
「やぁ、あ、あああ…ーーーーっ!!」
チョロ…チョロチョロ…シャーーーーーー!!
翔は箍が外れたように、排尿を始めた。
最初は控えめだった勢いが次第に強くなり、小ぶりな陰茎から大量の尿が排出されていった。
次々と流れ出てくる尿は、放物線を描き洗面器にビシャビシャと音を立てて溜まっていく。
あまりにもの勢いのよさに洗面器を跳ね返る飛沫が一番近いところで見ている凰壮の顔にひっかかるくらいであった。
アンモニア独特のすえた臭いが部屋に充満していく。
「やだっやだっ…!だめぇ!!おしっこ出るの見ちゃだめえぇ…!!」
「・・・翔のオシッコどんどん洗面器に溜まっていくな・・・」
「すげえ勢いだぜ・・・!おまえの生温かいオシッコでおれの顔ビショビショになるんじゃねえ?」
「気持ちよさそうにおもらししてる翔クン、とってもそそりますね。ぼく勃ってきちゃいました。」
頭を振り乱して嫌がる翔とは裏腹に三つ子たちは翔の痴態にえもいわれぬ興奮を隠せず息を荒げながら口々に感想という名の
言葉責めをしていった。
「ひっ…うっ…うっうぇっ」
キャパシティ以上の羞恥に翔は幼児のように泣きじゃくってしまった。
それでもいまだ翔の陰茎からはチョロチョロと尿が排出されており、翔は本当にお漏らしをして泣き出した幼子のよう
であった。
暫くして漸く排尿は止まったが、普段では感じることのない残尿感と尿意が未だに残っている不快な状態が続く。
「あ・・・う、うそ・・・またおしっこしたい・・・!」
「おい竜持!!流石にこれは異常だろ!」
「おや?用量間違えちゃいましたかねぇ?」
「竜持…ぜってえわざとだろ」
「翔クンのお漏らしをたっぷり撮影できるなら、ぼくはどんな言葉も甘んじて受けますよ」
(そうそうお薬の説明書に飲んだ後10分から3時間は大量にオシッコが出るって書いてましたからね)
まだまだ楽しみましょうね翔クン?
竜持はipadを操作しながら心中動画編集のことで頭がいっぱいだった。
「もぉ!!!降矢くんたちバカなんでしょ!?ぼく何回もイヤだって言ったよね!?もう信じられない!バカ!バカバカバカ!!」
かれこれ数時間迫りくる尿意に耐え切れず、三つ子たちに見守られながら放尿をし続けた翔。
やっと尿意も治まったが、三つ子に対する怒りが今度は収まらず、翔は収拾がつかないぐらい取り乱していた。
普段は穏やかな性格の彼がバカバカとわめき散らしながらクッション類を手当たりしだい三つ子に向かって投げつけるさまは
見ものであった。
「翔クンにバカバカ言われるのってもっとイラってくるかなって思ったんですけど、案外気持ち良いものですね」
「名誉のバカってやつ?おれも清々しい気分だぜ」
「……………悪くねえ」
翔が投げつけてくるクッションを軽々避けつつ三つ子達はとても満足した表情で翔の怒りを甘んじて受けていた。
全く懲りていない様子の三つ子の悪魔たちは次に来るチャンスに向けて期待の眼差しで翔を見つめるばかりだった。