デジタルワールドに来てもうどれくらい経っただろうか。
タイキ達一行は今日も、バグラ軍の攻撃をかわしつつ、コードクラウンを求め各フィールドを冒険し続けている。
本日も森林フィールドを歩き通しで、アカリとゼンジロウがもう動けないと音をあげはじめた。
ちょうど陽も暮れてきた所だったし、これ以上闇雲に進むのは危険と判断したクロスハートの司令官タイキは今日はここで休もうかと皆に提案した
歩き疲れてクタクタだった一行は満場一致で頷いた

毎日の野宿は皆もう慣れたものだ
アカリは女子なので最初はかなり野宿を嫌がっていたのだが今は夕飯支度の中心となって、てきぱきと準備にかかり、ピックモン達に的確な指示を出している
ゼンジロウもはじめは渋々といった感じだったが今では寝床の準備や薪集めにバリスタモンと一緒にせっせと取りかかっている
勿論、司令官であるタイキも自分の仕事に取りかかろうと思っていたが、尿意を催していた為先に済ませておこうと考えた。
木の上で食べ物を探しているシャウトモンに声をかける

「おーいシャウトモーン!」

「おー!どうした?タイキ!」

「ちょっとそこら辺で用たしてくる!…あっまた着いてくるなよ?」

「ハハハ!もうしねぇーって!!あいつらに言っとくからよー!早く帰って来いよなぁ!」

「ああ、すぐ戻る!」

そう言ってタイキは一人森の中を駆け出した

「あー…やば漏れそ…もうこのへんでいいかな?」

ここは未知なる世界、長時間の単独行動は危険だ

そう考えタイキが立ち止まった

「単独行動とは不用心だな」

その瞬間突如木陰から何者かに話しかけられた「誰だ!」

突然の来訪者にもしやバグラ軍の手先かとタイキは警戒し声をあげた
現れたのは意外な人物だった

「久しぶりだな、タイキ」

「お前は…キリハ!」

さらさらと靡く金髪、鋭くつり上がったアイスブルーの瞳、すらりとしたスレンダーな体型
木陰から現れたのは謎の美少年蒼沼キリハだった

この世界に来て初めて出会った人間
タイキに自分の配下になれと言ってきた青のクロスローダーを持つ少年だ

タイキはキリハを黙って睨みつけた

この世界に来て初めて出会った人間
タイキに自分の配下になれと言ってきた青のクロスローダーを持つ少年だ

タイキはキリハを黙って睨みつけた

タイキは、以前デジモンを道具のように扱い心の無いデジクロスをしたキリハに良い感情を持っていなかった
タイキは警戒心を解くことなく、少しずつ距離をとりながら話しかけた

「どうしてここに…?」

タイキはキリハから距離を取ろうとしたが、キリハも負けじとその距離を詰めようとする
その表情は口元のみ引き上げており、アイスブルーの瞳は冷たい眼光をたたえていた

しかし、その瞳の奥は不穏にもぎらついており、まるで燃え盛る青い炎のようだった

「やはりお前が欲しい。だから後をつけさせてもらった。お前が一人になるのを見計らってな」

「…っ何度来ても俺はお前の手下にはならない!」

「結構!もうお前の選択を待ってやるつもりはない。無理矢理にでも連れていくぞ、タイキ!」

「な、なんだって…!?…ぐはぁっ!!」

キリハは目にもとまらぬ早さでタイキとの距離を一気に縮めた
タイキが避ける前にタイキの鳩尾めがけて拳を打ち込む

気を失ったタイキの肩を難なく自分の左腕に受け止めたキリハは右手のクロスローダーを天にかざす

「リロード!メイルバードラモン!」

クロスローダーは光を上げ、その光はたちまち機械竜の姿を成す

「応!」

蒼の機械竜、キリハに忠実な直属デジモン、メイルバードラモンがキリハの元に姿を現した

「行くぞ、メイルバードラモン」

「ああ…おや、そいつは…」

「フッ…まぁな」

蒼の機械竜はキリハの傍らにいる存在に気がついたようだ
それは先日、会い見えた彼の指揮官の執着している人間だった「ほぉ…珍しいものだな」

「何か言ったか?」

「いいや?…行こうか」

「ああ」

この時機械竜は冷徹で排他的な主人が、力以外のものに執着を見せるのはなるほど珍しいものだと思っていた。
だが彼は、賢く知能の高いデジモンだったので主人の気分を害す事柄を敢えて指摘することはなかった。

そういって気を失ったタイキを横抱きにしたキリハは、メイルバードラモンに乗りこんだ

メイルバードラモンは此処ではない何処かに飛び去っていった

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