※ゲームエンディング後設定!ネタバレ注意!

※一応R18



















『狂宴は終わらない』










グチュッ、ブチュッ!

「ふあぁっ…!おく、やっ…おっき…!ひゃああぁあ!」

「…ッ、そんなに締め付けるな…もっと力を抜け…!」

とめどなく続く律動

体皮に滲む汗、剥き出しの肌と肌がぶつかり合う音

俺、宇崎拓也は今は亡き親友、檜山の恋人にあたる少年、バンを犯していた

あいつが死んでも尚、バンの身体はあいつを求め続ける

それにかこつけて、バンにこの行為を持ちかけた俺は最低の人間だ

一人で苦しむのならば俺も巻き込んでくれ、と

格好付けた言い回しだが結局はエゴ

バンを手元に置いておくための口実だった

「あひぃッ!あんッ、ハア…きてっ…!もっといっぱいついてぇ…ッ!!」

「…ッそんなに煽って…!どうなっても知らんぞ!」

舌をだらしなく出して涎を垂らしながら喘ぐバン

その淫らな表情に俺の陰茎は更に硬く育ち、腰を打ちつける速さも増した

だがいくら俺が熱くなろうとも、彼に愛を囁こうとも、想いが通うことはない

ただ互いの欲を発散するだけの非建設的な行為も同義

こんなことをし続けていても互いの為にならないことは重々承知している

それでも俺はこの少年を自分の元に繋ぎ止めておきたいのだ

死人に依存し続けるバン、そしてそんな彼に依存しているのは…他ならぬ俺なのだから



俺の親友、檜山蓮がサターンの爆発に巻き込まれて、すでに1ヶ月の時が経っていた

世界を恨んだ檜山の暴走を食い止めたバン

サターンから連れ戻そうとしたが、それに応じず、あいつはサターンに自らの意志で残った

後程それはバンの口から聞いた

それなのに、この少年は未だあいつが死んだことを自分のせいだと責め続けているアミやカズ達の前では何事もなく気丈に振る舞ってはいるが、バンの心は未だあの出来事に囚われているのだ



俺は、あいつとバンがそういった付き合いをしていたということは以前から知っていた

聞かされていただとか、あいつの親友だったからという理由ではない

それは、あいつと同じく、俺もあの少年に惹かれていたからだ

悪を許さない真っ直ぐな心、それを裏付ける離れ離れとなった父への想い

―性別も年齢も関係無かった

ただ、この小さな少年を守りたい

バンをどんな危険からも遠ざけてやりたい

その気持ちは檜山も同じなのだと勝手に思い込んでいた


同じ時期に出会ったにも関わらず、バンは俺よりもあいつを慕うようになった

バンのあいつに対する憧れが恋慕に変わるのは時間の問題だった

俺は、それを見て悔しがる程子供ではなかった

バンには檜山がいる、俺は保護役に徹しようと一度はこの想いを諦めた

しかし、檜山が亡くなったことによりその均衡は大きく崩れ落ちてしまったという訳だ



「んあっ…!レックス…レックスぅ…」

ふとバンの口から零れ落ちたあいつの名前

「…ッ」

(…またか)

ぐつぐつと煮えたぎる脳髄を感じながら、俺は心中で舌打ちをした

行為の最中、バンは必ず檜山の名前を呼ぶ

最初は、激しい行為で意識が朦朧となって俺とあいつとの区別がつかなくなってしまうのではないかと思っていた

しかし最近はそれだけではないと思い始めた

バンはこの行為自体に檜山の面影を探し求めているだけなのではないか?

つまりは、誰でも良いのだ…檜山との行為を思い起こすことが出来れば

(死んでも尚、バンを抱くのはお前なのか…檜山!)

俺は何もかも承知の上でバンにこの行為を持ちかけたはずなのではないのか?

それでも俺は、この状況を完全に割り切れず、檜山への嫉妬の念を自制出来ずにいた

(…ッ、抱いているのは俺だというのに…)
こんなにやるせないことは無い

(…俺はあいつの代わりにしかなれないのか?)


俺は苛立ちを振り切るように腰をうちつけた



「レックス…レックス…」

譫言のようにあいつの名前を呼び続けるバン

眼は虚ろで目線は虚空を彷徨うかのようだ

もしかしたら、バンには別のモノが見えているのかもしれないそう考えるとやり場の無い怒りが込み上げてくる

「違う…俺はあいつじゃない…っ!」

感情に任せてあげた怒声

「あ…?んぅッ…!」

それに呆気にとられ薄く開いたバンの唇

俺は貪るように噛みついた

「んっ…む、あっ…ん、ふぁ」

歯列をなぞり、絡ませて吸う

好き勝手に口内を蹂躙する俺の舌に、バンは翻弄され、鼻にかかったような喘ぎを漏らした

唇を離した俺は、伝う唾液を咎めず、虚ろになっているバンと無理矢理目線を合わせた

「バン…良く見るんだ、今君を抱いているのは誰だ?」

「…あ、………た…くやさん…?」

少し迷った後、バンは俺の問に答えた

バンは漸く現実に帰って来ることが出来たのだ

毎回この流れを通さないと、バンは檜山との思い出から帰って来ないのだ

何時もなら、このまま互いが達するまで行為を続けるのだが、今日は違った

「そうだ、俺だ…檜山じゃない…」

「あ、や…いや…や、やめて…たくやさ」

俺の口からあいつの名前を聞いたバンは青ざめて首を横に振った

俺が檜山の名前を行為に持ち出すのは初めてだったのだ

「…逃げるなバン、もう檜山は…」

「!?……いやあああっ…!!それ以上言わなっ…、で!ッごめんなさ、…ごめんなさいゆるしてたくやさっ…ああァッ…!」

いない、そう告げようとした時

バンは突然狂乱状態になった

頭を振り乱し、叫び声を上げながら狂ったように謝罪の言葉をその震える唇から唱え続けた

「ッ、謝るな!…謝る位なら俺にあいつを重ねるのは止せっ…!」

「ごめんなさっ…ごめんなさい…っ!」

(嗚呼…やはり駄目なのか)

壊れた人形のように謝り続けるバンに俺は年甲斐もなく泣きたくなった

バンは頭で理解していても、心の奥底ではまだ、檜山がすでにこの世にいないことを認めきれていない

だから、いざ現実を突きつけられてしまえば、忽ち情緒不安定になってしまうのだ

だが、それでも尚、彼を手に入れたいと考えている醜い自分がいる

それが彼の傷をえぐるような行為になったとしても

「ごめんなさいぃ…」

(すまないバン…それでも俺は…!)

狂宴は未だ終わらない
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