最初は無理矢理された行為だった
何も知らない俺にあいつは色々恥ずかしいことをしてきた
でも俺のことを好き、とか言ってきて…
あの時のこと、あの時のあいつの真剣な顔を思い出すと何だか…身体中が熱くなるんだ
俺…やっぱり病気になっちゃったのかな?
『ろんりーはーと』
クロスハート一行は、今日もコードクラウンを探す旅を続けていた。
一行の様子は一見何も変わらないように思えるが、クロスハートのジェネラル、工藤タイキの心中だけは曇り空のようにどんよりとしていた。
タイキがキリハに拉致された日からもう幾日か経っていた。
それでも、その日キリハから受けた行為、キリハのタイキに対する真摯すぎる想いは、タイキの心の許容範囲を大きく上回るものだった。
性知識の乏しい自分に同性のキリハが無理矢理、性的行為に及ぼうとした衝撃
自分のことを好きだといったキリハの熱を帯びた真剣な眼差し
熱い彼の分身が自分のナカを貫く信じられない程の快感…
目と鼻の先の、冷酷だと思っていた彼の表情はすごく柔らかかった…
タイキはボンっと音がたつ勢いで赤面した(あ〜…!!もう!どうしてキリハのことばっか考えてるんだ俺!!)
タイキはあの日から無意識にキリハのことを考えてしまう時間が増えていた
そして思い出しては一人頬を赤らめ、自己嫌悪に陥るのだった
タイキは頭の中からあの日のキリハを追い出そうと、勢い良くぶんぶんと頭を振った
「タイキどうした?そんな頭振ってよぉ」
隣を歩いていたシャウトモンが不思議そうに声をかけた
「…ん?あっ!いやぁ〜!ちょっと眠かったからさ!眠気を覚まそうかと…」
慌ててタイキは言葉を繕った
しかし、シャウトモンは訝しげな顔をしながらタイキの顔を窺った
「そーかぁ?…最近タイキ元気ねぇーからよォ、ちょっとシンパイしてんだぜ〜?」
「…ありがとな、でも大丈夫だからさ!」
シャウトモンの言葉にタイキは苦笑し、それでも気丈に振るまった
(はぁ…こんなことじゃいけないのに、どうしよ)
タイキは誰にも気づかれないように静かにため息をついた
「空がだいぶ暗くなってきたっキュ…」
「だな…そろそろうろつくのは危険だぜ…どうする?タイキ」
ドルルモンの頭上に乗ったキュートモンが辺りを見回して不安そうに呟いた
それに同意したドルルモンがジェネラルの指示を仰いだ
「ん?ああ…そうだな、今日はこの辺で休もう」
「そうするっキュー!」
ドルルモンに乗っていてるのもやはり疲れるのか、キュートモンはドルルモンから飛び降り、ピョンピョン動いて休息を喜んでいた
「はぁあ〜!疲れたああ!今日も歩いたなあぁ〜!!」
「もー、煩いわね!アンタだけじゃなくて皆疲れてんのよ!」
「…アカリちゃんコワイっ!!」
「アカリ、コワイ」「おめぇらだらしねぇなあ!俺はまだまだいけるぜ!!でもジェネラルが休むといったからには休む!!早く支度しようぜ!」
皆、思い思いの感想を述べて休息に入っていく
「タイキ」
タイキも皆に習って準備に取りかかろうとしたが、ふいにドルルモンに呼び止められた
「…なんだ?ドルルモン」
「お前…何かあったのか?」
「えっ…?」
突然身を案じられ、それに心辺りがあったタイキは眼を大きく見開いた
ドルルモンは言葉を続けた
「四六時中どこか上の空、心ここにあらずって感じだぞ。ジェネラルがそんなんじゃバグラ軍に舐められちまう」
「…!」
「このままだと軍の士気にも関わる。腑抜けたお前見てるとイライラするぜ…いいかげんにしないとキュートモンと一緒にこの軍抜けちまうぞ」
「ドルルモン…」
「俺が言いたいのはそれだけだ…先行ってるぜ」
ドルルモンはそう吐き捨ててキュートモンの所に行ってしまった
(このままじゃ…このままじゃいけない、けど)
キリハが、キリハの存在が頭に住み着いているようなのだ
(キリハ…ッ)そして彼と過ごしたあの夜が…あの日の身の内を蠢くような快楽が忘れられなくて
タイキのフラストレーションは募っていくばかりだった