☆もしアミさんとカズさんが用心深い子供だったら(バン愛され会話文)
キタジマを出た3人のもとに、一人の男が立ちはだかった
金髪の特徴的な髪型のスーツの男
彼はバンの方を向き、口を開いた
「山野バン君だね」
「そうだけど…」
「俺は宇崎拓也、優秀なプレイヤーの君達にみてもらいたいものがある」
「おいおい待ってくれ!ちょっと話しあいを…バン、アミちょっと」
「…どうしたのカズ?」
「なあ…あのオッサン怪しくないか?」
「私も思ったわ。バン、あの人知ってる人なの?」
「え?ううん…知らないけど」
「益々ヤバいよな…何でバンの名前知ってんだよ…」
「バン、最近何かおかしなこと起きてない?例えば…知らない男の人に後からつけられてるとか…」
「君達聞こえてるぞ…」
「だっておかしいだろ!!見ず知らずの大人が何で一中学生の名前知ってるんだよ!」
「何処で調べたの?とか何でバンなの?とか気になるに決まってるでしょ!?確かにバンは可愛いけど!!」
「ちょっ…ちょっと!カズもアミも止めなよ…!」
「これが黙っていられるか!お前一人だったらどうしてたんだよ!」
「…ついて行っちゃうかも。だって悪い人じゃなさそうだし」
「だから危なっかしいのよバンは!昔から変な人に声かけられやすかったし…何時も追い払ってたの私なんだから!
「そうだっけ…?」」
「もしかしてお前お菓子くれる人だったら知らない人でも着いていくんじゃないか!?」
「つ、着いていくわけないだろ!疑うなんて酷いよ!俺だってもう中学生なんだからね!」
「じゃあLBXだったら?」
「…………う」
「ちょろい!ちょろすぎるぜバン!」
「そういう分かりやすい所がそういう人達に気にいられちゃうのよ!」
「君達…俺を誘拐犯と勘違いしてないか…?」
「えっ?違うのかよ」
「………」
「もしくは露出するタイプの人かなって。さっき見せたいって言ってたし。春になると多くなるのよね、そういう人」
「………」
「ま、まずいよ…あの人怒ってるよ…謝った方がいいんじゃない?」
「でも怪しいのは事実よ!着いていくのは止めた方がいいわ」
「だな!すみませーん俺達知らない人には着いてっちゃいけないって言われてまーす」
「す、すみません」
タタターッ!!
↑拓也が止める間もなく一目散に去っていった三人
〜ブルーキャッツ内〜
「くそっ!これだから!!これだから子供は…!うっ…!」
「拓也…(不憫だ…)」
☆26話小話(悠介→バン)
私は現在、霧野君とともにTO社エントランスに脚を運んでいた
結城君から、拓也がプラチナカプセルの解析を我が社で行うとの報告を受けた為だ
拓也は何故か結城君に口止めをしたらしいが、今はそれに関しては咎めはしない
それは拓也のおかげで漸く件の子供達と顔を合わせることが出来るからだ
其方の方が今の私にとって重要だった
(やっと…バン君と直接会うことが出来る)
私は子供達、特に山野バン君に会えることをとても心待ちにしていた
初めは、アキレスやハンター等の設計図を我が社に送ってくる謎の人物『J』を追い求めているうちに彼の情報を知るようになった
そして気が付けば、次第に彼に惹かれていった
神谷工業のエンジェルスターに忍びこんで父親を探す彼をLBX『パンドラ』を用いて助けたり、アングラビシダスにおいて暴走するVモードの制御プログラムを送ったりしたのは偏に彼を陰ながらサポートしたかったからだ
頑張るバン君を私が出来る限り助けたいと思った
「いよいよですね、社長」
エレベーターで移動中、霧野君が微笑んだ
彼女は私がバン君を仕事上のみでなく感情的に気にかけていたことを知っていた
「ああ…そうだな」
私は、感情が昂ぶっていることを彼女に悟られないように振る舞うことで精一杯だった
☆
拓也が社についたとの連絡を受けた結城君を追い、私はエントランスまで降りて来た
そこには結城君と話す拓也と三人の子供達の姿があった
その中で最も小さい栗色の癖毛の少年に真っ先に目がいってしまう
(あれが山野バン君か…)
写真やパンドラからの視界で間接的には何度となく彼を見てきたが、これほどまで小さく幼い少年だとは思っていなかった
バン君はあどけない表情で向かって来る私をじっと見つめている
何時も見る強い意思を持つ鋭い眼光は無く大きな黒色の瞳が不思議そうに私を視界に映すだけだった
初めて会う生身の彼の愛らしい表情に私は胸にこみ上げる何かを感じた
睨みつける拓也を素通りし、一直線に彼の元に向かう
そして私は彼の目の前に立ち、少しだけ屈んで挨拶をした
「初めまして、君が山野バン君だね」
そう言って手を差し出す私に、バン君はその手を戸惑いながら眺めていた
「えっ…あ、はい」
だが少し迷った後、バン君はおずおずと私の手を握り返してくれた
真っ白で小さくて柔らかい手
少しでも強く力をいれれば握り潰せてしまうそれを、私は優しく包み込んだ
(温かいな…)
子供体温なのかバン君の手は私のそれよりも温かく感じられた
小さな手を包み込んでいるのは私の方なのに、彼の手からじんわりと熱が伝わってくるのだ
その温もりが彼の本質に触れたように思えて、私を心地よくさせた
こんな小さな少年の手に世界の運命がかかっているなんて
とても信じられないが、彼は音をあげず、文句を言うこともなくLBXと山野博士…父親を愛する気持ちで乗りこえてきたのだろう
それを考えると私は、彼に愛しさを感じずにはいられなかった
「タイニーオービット社の宇崎悠介だ」
山野博士と同じく、私もこの少年を陰ながら支えていきたい、そう思った