※レクバン18禁です
※言葉責めがえげつないです
※当て馬は拓也さんです
宜しければどうぞ!
『ココロを見せて』
「レックス、二番テーブル片付けたよ!」
「有難うな、バン。そこに置いといてくれ」
テーブル席に座っていたお客さんが帰った後、使用されたカップをレックスの所まで持っていく
少し大きめのエプロン姿の俺を見て、レックスは最高にカッコ良い笑顔でお礼を言ってくれた
俺はブルーキャッツの手伝いをしていた
今まではジュースをご馳走になっていただけだったけど、何回も来てるうちに悪いなって思ったからだ
最初はそんなに客の来る店じゃないし気にしなくていいって言われたけど…どうしてもレックスの役に立ちたいっていったら許してもらえた
バイト代は期待するなって釘をおされたけどそんなの関係ないし、いらない
だってレックスに会うための口実だもん
俺がこの店に何度となく通う理由は、俺の恋人レックスの経営しているお店だからだ
俺とレックスはイノベーターの陰謀に巻き込まれて知り合った
最初は知らない大人の人が総理暗殺計画阻止するとか、すごいことを言ってきて信用出来なかった
でも、危険なことをする俺達を助けにきてくれたり、父さんを探すサポートをしてくれたりと色々俺のことを気にかけてくれた
何でかはわからないけど…いつの間にか信頼してた
レックスのことが『好き』になってたんだ
でも最初からレックスが俺をそう言った『好き』で見てくれるとは思ってなかった
そもそも子供の俺の話なんて、満足に聞いてくれないかもしれない
それでも、俺は勇気を振り絞ってレックスに『好き』だと告白した
望みはないってわかってたきっとレックスは俺のことを笑って、「馬鹿なことを言うな」って相手をしてくれないと思っていた
だけど、レックスは笑わなかった
真剣な顔で「俺もだよ」って言って抱き締めてくれたんだ…
「どうしたんだ?バン…黙りして、一人考え事か?」
カウンターにカップを置いた後
レックスに告白した時のことを思いだして急に話さなくなった俺を変に思ったのか
レックスが俺の顔を心配そうに覗き込んでくれた
「あっ…ううん、ちょっとボーっとしちゃって…」
慌てて笑顔を作る俺に、レックスはごまかし方の下手な俺に苦笑した
「全くお前は…さっ、客足も途絶えちまったし、そろそろ休憩にするか」
そう言ってレックスはカウンターから出て、テーブル席に腰掛ける
「えっ!いいよ、俺大丈夫だから!」
「バン、いいからこっちに来い」
慌てて断る俺に関係なく、有無を言わさずレックスは俺の名前を呼んで、自分の膝をとんとんと叩いた
それは『膝に乗れ』という合図だった
「……〜っ」
俺は未だ感じてしまう恥ずかしさに頬が熱くなるのを感じながら大人しくレックスの所まで歩いていった
レックスの前まで来た所で振り返り、レックスの膝の上に腰を下ろす
「よし、いい子だ」
膝にちょこんと座った俺の頭をレックスはその節ばった大きな手で撫でてくれた
「そう拗ねるな、俺だってお前をもっと構ってやりたいさ」
そう言って後ろから俺を抱き締めるレックスの逞しい腕の力強さに胸のドキドキが抑えられない
壊れちゃいそうな程の音をたてて動く心臓に俺はどうしようもなく戸惑った
(ッ…レックスは…ずるい)
何だか自分だけが余裕が無くて焦ってばっかりで…俺ばかりがレックスを好きみたい
俺だけがレックスに夢中であたふたしているように感じてしまう
そりゃレックスは大人の男の人だ
今まで俺なんかよりも多くの経験を積んできていて…女の人とかともお付き合いをしたはずだ
でも、俺は恋愛感情で本気で好きになったのってレックスが始めてで…レックスが俺にしてくること全部にどぎまぎしてしまう
大人と子供
生きた年月を埋めることは出来ない
俺がレックスと同じ土俵に立つことは絶対無理なのかな…?
「レックス…」
「?どうした」
「ねえ、今日は一緒にいて…?帰りたくないよレックス」大人と子供の溝が埋まらないなら、子供の特権を使うまでだ
レックスの膝に跨るように座りなおす
そして、レックスの太い首に腕を回し、その首筋にすり寄って甘えた
「おいおい…そんなことしていいと思っているのか」
だけどレックスは俺を引き剥がし、優しく俺を膝から下ろす
「悪い子供だな、明日も学校だろう?…親御さんが心配する。送ってやるから今日は帰れ」
そう言ってレックスは着替えの為に奥に引っ込んでいった
また大人の対応
俺の我が儘だってこんな風にすんなりとかわされてしまう
(そういえば…レックスって本気で怒ったりとかするのかな?)
いつも落ち着いた調子のレックスは感情を表に出すことって滅多にない気がする
まして、俺に怒るとか、感情をぶつけたりなんてことはまずなかった
父さんを探しにエンジェルスターにアミとカズと勝手に侵入した時も、心配こそすれレックスは俺達を叱りつけることはなかった
(子供扱いじゃなくて…対等に俺に接してくれたらいいのに)
レックスにばれないように、小さくため息をついていると、着替えに行ったはずのレックスがちらっと戻ってきた
「それと…俺の家はお前の連休前にでも来るんだな…精一杯可愛がってやるぜ?」
ニヤニヤとちょっといやらしい笑みを見せて裏に戻っていく
そんなレックスに俺の頬がまた熱くなったのを感じた
☆
「は?檜山が本気で怒った所?」
「はい、拓也さんなら見たことあるかなって思って…」
「悪いが、ないな…あいつは元々余り感情を表に出さない男だからな。俺もたまにあいつが何を考えているかわからない時がある」
「そうですか…」
次の日、またブルーキャッツに来た俺は昨日気になったことを拓也さんに聞いてみた
客は拓也さん一人だった為、レックスは買い出しに行ってしまったからこの事を聞くのに都合が良かったんだ
カウンター席に座って珈琲を飲む拓也さんの隣の席に俺は、腰掛けて尋ねた
拓也さんはレックスの古くからの親友で、シーカー絡みのことでレックスと話しに良くこの店に来ている人だ
悔しいけど拓也さんは俺よりもレックスといた時間が長いから…俺の知らないレックスのことも知ってるんじゃないかって思ったでも拓也さんも見たこと無いみたい…本当にレックスは不思議な人だ
「…だが、何故俺にそんなことを?檜山と何かあったのか?」
「いいえっ…ただちょっと気になっただけですから」
「そうか…バン、余り無理はするなよ。俺は心配なんだ」
「…っ」
やっぱり
俺は青ざめて言葉を失った
拓也さんは俺とレックスの関係のことを知っていた
俺みたいな子供とレックスが恋人同士だなんて、拓也さんからしたら親友が変な道に走っちゃったって思っても可笑しくないもんね
決して普通の恋愛ではないことくらい経験の無い俺にだってわかってるから
そんな俺の様子に拓也さんは静かにため息をついた
「…何を勘違いしているか知らないが、俺が心配しているのは君の方だ」
「え…?」
「バン…君が檜山を好きなことも…あいつが君を好きなのも知っている。だが、君が檜山のことで苦しむのは見たくないんだ」「拓也さん…」
「バン、何か悩みがあるなら一人で抱えこむなよ。俺で良ければ話を聞くから」
真剣な顔で俺の両肩を掴んでくる拓也さんに、どきっとする
でもレックスと一緒にいる時のそれとは違う
この動悸の理由は、俺がレックスのことで不安に思ってることが拓也さんに感づかれてしまったのではないかという焦りから来ていた
「あっ…お、お水出してなかった…っ!淹れてきますっ」
「待て、バンッ…!」
その困惑を悟られないように俺は、拓也さんの側を離れようとした
だけどそれはかなわなかった
拓也さんがとっさに俺の腕を引いたから
「わあっ…!!」
バランスを崩した俺はそのまま倒れそうになった
ギュッと瞼を閉じて、うちつけられる衝撃に耐えようとしたけど、不思議と床の痛みはなかなか訪れなかった
恐る恐る眼を開けると、そこにはアップで映った紺色の背広
俺は拓也さんの胸元に引き寄せられていた
「拓也さん!?」
「バン…何故俺から逃げる!?檜山に不満があるのが図星だからか…?」
「ち、違うってば!拓也さん…っ離して!」拓也さんの腕の檻から一生懸命出ようとするけど、拓也さんの厚い胸板は俺の力じゃびくともしない
「拓也さ…ッ」
――カランカラン
俺が更に抵抗しようとしたその時、客の来店を知らせる鐘の音が鳴った
お客さんではなかった
其処にいたのはこの店のマスターで、俺の恋人
今まで話題の中心にいたレックスだったんだから
「俺の店で俺のモノに手を出すとはな…いつからそんなに大胆になったんだ?拓也」
「ッ檜山…
買い物袋を手から提げ拓也さんに笑いかけるレックス
口元は笑ってるんだけど、眼が全然笑ってないから恐い
「いつまでそうしてるつもりだ?それとも俺に見せつけているのか」
「………」
レックスの冷めた口調に、拓也さんは慌てて俺の腕を離した
その後のレックスは…普通だった
「…拓也、例の件のことだが仲間達からまた連絡が入った」
「あ、ああ…聞こう」
「バン、すまないが席を外してくれ。事情が纏まり次第お前達にも話す」
「う、うん…」
先ほどの事なんて何事もなかったように拓也さんにシーカーの話をするレックスに、俺は言われた通り出て行くことしかできなかった
☆
アングラビシダス会場に降りた俺は一人、先の出来事について考えていた
降りずに、会場内を見渡せる椅子に腰掛けて、閑散と並んだ強化ダンボールを上から眺める
今日は開放日ではない為、今この場にいるのは俺だけだ
(レックス…怒らなかったな)
拓也さんと俺が抱き合ってたのにレックスは怒ったり嫉妬したりしなかった
最初は冷たい目をして、拓也さんや俺を見ていたけど、すぐに元のレックスに戻った
もしレックスと他の人が抱き合ってたら俺は嫌だ、俺だったらその場から逃げ出してしまうかもしれない
でもやっぱりレックスは俺より全然大人だった
感情が読めない、俺にはレックスが何を考えてるかわからない
(やっぱり俺じゃレックスと釣り合わないのかな)
別に泣きたくもないのに目頭がじんと熱くなってくる
けれど、その涙が落ちることはなかった
「やはりここにいたか」
「レックス…」いつものパーカーに着替えたレックスが俺の目の前に現れたから
「レックス…俺」
――拓也さんとのことを説明しなきゃ…
このままでは拓也さんと浮気していたと思われちゃうかもしれない
俺が口を開こうとすると、レックスは踵を返して歩いていった
「…レックス?」
「もう遅い、今日は俺の家に泊まれ」
(えっ…何で?)
俺は耳を疑った
今日は水曜日だったからだ
レックスはいつも連休前にしか俺を家には呼ばない
連休前に家に呼ばれるのには理由があった
レックスの家に行くと…必ずそういうことになるから――
だから中学生の俺を気づかってくれて、レックスは次の日が平日の時は俺を泊まらせない
「えっ…でも、明日学校…」
「言う通りにしろ、これ以上俺を怒らせたくなければな」
戸惑い抗議の声をあげる俺にレックスの非情な声が降りかかる
感情のこもっていない、冷たい声
(………ッ!)
その声に俺は震えあがりそうになった
俺は黙って頷いてレックスの後をついて歩くしかなかった
クスの家に行くと…必ずそういうことになるから――
だから中学生の俺を気づかってくれて、レックスは次の日が平日の時は俺を泊まらせない
「えっ…でも、明日学校…」
「言う通りにしろ、これ以上俺を怒らせたくなければな」
戸惑い抗議の声をあげる俺にレックスの非情な声が降りかかる
感情のこもっていない、冷たい声
(………ッ!)
その声に俺は震えあがりそうになった
俺は黙って頷いてレックスの後をついて歩くしかなかった
>>next