masquerade
お台場ビッグスタジア
現在LBX世界大会『アルテミス』が開催されており、世界屈指の強豪が集い、それを観戦しに世界各国より訪れた大勢の観客がハイレベルなLBXバトルを楽しみに来ていた
その為開催場所の規模が大きく観客動員数も多い為トイレも多く配置されている
そのトイレの中でも、一番会場から遠く奥まった照明の落とされた男性トイレ
その最奥の個室から断続的にくぐもった声と水音が聞こえてきていた
ズッ…ジュポッ!ズ…
「ふっ…くぅ…むっ…んっ!」
卑猥な水音
湿った喘ぎ声
そこにいたのは犯されている少年と、その少年を犯すタキシードの男だった
黒い布で目隠しをされ、視界を奪われた少年は暗闇と襲いくる快楽に恐怖し、とめどなく流れる涙で布を湿らせるばかりだ
少年の呻き声とも嗚咽ともとれる言葉にならない声がとめどなく口から漏れ聞こえる
くぐもった声は口にタオルを猿轡のように噛まされているからだ
飲み込み切れない唾液が首で固定されたタオルに染み込み、ぐしょぐしょに濡れてしまっている
少年はトイレの壁に手をつかされてる所を後ろから男に犯されていた
少年の足はガクガクと痙攣しており一人で立たせようとすれば、すぐに膝を折って座り込んでしまうことだろう
しかし、男が少年の細腰をしっかり掴んでいる為、少年はただただ男の律動に合わせて揺さぶられるしかなかった
抵抗らしい抵抗をする力もなく、ただ譫言のように喘ぎ、いやいやと頭を振るだけだ
それでも性を覚えたての身体は快楽には逆らえないのか
男により露出させられた下半身は男の勃起した浅黒いペニスをその小さな蕾の中に美味そうに飲み込み、そして未発達な自身を腹につく程に反り返らせていた
少年はもうどれ位犯され続けたのであろう
少年の剥き出しの腹には自身の放った精液の痕がこびりついており乾燥して白く張り付いていた
臀部の辺りは、更に酷い
少年が放った精液のみならず、男が既に放った精液がアナルから溢れ出し、揺さぶる度に個室の床にボタボタと水溜まりを作っていった
アナルから流れ出る精液には薄赤い色も混じっており、無理な性行でアナルから出血したことが伺い知れる
パチュンッ…!パチュン!
汚れた大人の欲望を性に疎かった少年に打ちつける音
「むっ…ぅ…ん!んんん〜!!!!」
ジュボッジュボ!…ドピュッ〜!
少年が悲鳴とも呼べる呻きをあげた後、少年のはちきれんばかりに腫れ上がったペニスは白い液体を吐き出していった
もう何回か射精したのか、それの濃度は最初の頃よりも薄くなっていた
(ああ…バン、愛してるよ…バン)
射精と休みなく揺さぶられ続けた疲労感にぐったりしている少年を見て男は純粋な愛しさと背徳的な欲望に支配される
『男』山野淳一郎は自身の息子である『少年』バンを犯していたのだった
☆
「えっと…トイレどこかなあ…こう広いとわかんないや」
アルテミスBブロック観戦終了後
次はCブロック、バン達の出場するブロックの対戦である
緊張から感じた尿意に万全なコンディションで挑みたいからと、アミやカズに断ってトイレに急いだバン
しかし余りもの会場の広さ、そして初めて来る場所と相まって、何処にトイレがあるのか皆目見当がつかなかった
迷子の幼稚園児宜しく、上を向いてキョロキョロ見渡しながら広いロビーを無尽蔵に駆け回る
中学生で迷子…笑えない話である
だだ広いロビーを見渡してバンは途方に暮れた
(どうしよう…こんなことならカズについて行って貰えば良かったかな)
だが、それはそれで迷子と違った意味の恥ずかしさがある
この歳でツレションのお誘いかよ!と呆れて突っ込んでくる彼の姿が目に浮かぶ
それを想像してしまったバンは一人こっそり苦笑した
引き続きトイレを探すバン
バンがふとロビーの片隅に目をやれば、今彼の一番気になる人物の存在があった
(あれは…マスクドJ!)
そこには仮面の紳士、マスクドJの姿があった
マスクドJ
アルテミス今大会出場者において、最も謎の多い人物
黒いタキシードに身を包み、素顔を仮面に隠した紳士
そのプロフィールは全くの詳細不明で、彼の素性を掴むことは不可能
ただ一つわかることは、凄腕のLBXプレイヤーということだけだ
先程のBブロックの試合でバンはその実力を伺い知ることが出来た
彼の操るLBX、マスカレードJ
まるで舞踊のような華麗な動きは、見る者を圧倒した
敵の動きを読んで、的確な回避
そして無駄な動き無く、敵の弱点を突く
一朝一夕で真似ることは到底出来ない頭脳プレイ
決勝戦で彼を相手にするとなれば、充分警戒しなければならないとバンは思う
だが、バンが彼を気にする理由はそれだけではなかった
(何か…あの人、似てる気がする…)
似てる…誰に?
わからない
だが、彼を見ていると何処か懐かしい気持ちになる
(全然知らない人なのに…変なの)
彼を見ているたびに更に興味が増していく
バンの身体は自然にマスクドJに向かって走っていた
☆
マスクドJ…否、山野淳一郎はロビーの窓から外の景色を眺めていた
世界中が沸くこの名イベントに人々は皆楽しそうな顔をしている
その空気に、彼は飲まれることなく客観的に
彼の目的は大会を楽しむことではない
彼のアルテミス出場目的とは、本大会優勝商品である『メタナスGX』を強奪しようと目論むイノベーターの監視である
この自分を利用して悪行を働いてきた機関だ
どんな汚い手を使ってくるか、淳一郎でもわからない
そして、イノベーターの狙っている『メタナスGX』にエターナルサイクラーの解読コードを入れたのは淳一郎自身
それを彼の機関に伝えたのも彼自身なのだから
淳一郎には何より守りたいものがあった
山野バン、彼の息子の存在である
五年前、イノベーターの策略により離れ離れになってしまった息子
片時も忘れたことなどなかった
LBXの開発途中だった時分、試作で作ったプロト体をキラキラした瞳で見つめていた息子が今でも目に浮かぶ
いつかまた息子に、妻に会えると信じて
悪質に使われようとしている研究にも耐え、ここまで来た
そして数日前、漸くその願いは叶えられた
13歳になった息子と対面することが出来たのだ
イノベーターの長、海道義光の邸に幽閉された自分を息子達やかつての部下が助けに潜入してきたのだ
淳一郎には考えがあった
その為無理に危険をおして助けに入らずとも良かったとは思ったけれど、それでも嬉しかった
バンの元気な顔を直に確認出来たから
淳一郎がアルテミス会場にいる理由はバンにある
自分が『メタナスGX』の件をイノベーター、海道に漏らしたのは、海道邸においてバンが危険に曝されたからだ
エターナルサイクラーの鍵の在処を自分から聞き出す為に人質にされた息子
未だ未発達で、小さく細い身体が屈強な男に手荒に扱われるのを見て、淳一郎は冷静な顔の裏で男に殺意すら覚えた成長した可愛い息子の表情が苦しそうに歪む
焦りとともに、えもいわれぬ興奮を覚えたのは何故だったか
アルテミスに扮装して出場したのも偏に、同じく出場するバンを自分の出来る最も間近な位置で見守りたいという理由からでもあった
息子は必ず決勝まで勝ち上がってくるだろう
メタナスGXを狙ってくるイノベーターの危険因子から息子を出来る限り退けてあげたい
淳一郎はそれ一心でこの地に立っているといっても過言ではなかった
(勝てよバン…お前には私がついている)
「あ、あの…」
その時、淳一郎の後ろから少し高めの声が聞こえてきた
ずっと息子のことを考えていて、気配に全く気づかなかった…とは言わないが直ぐに振り返らなかったのは不覚である
声の高さから恐らく少年、自分に呼びかけた理由は何となく分かっている
(またサイン…かな)
先程から此処に立っているが、何人もの観客が「貴方のファンになった」と言ってはサインや握手をせがんでいく
淳一郎はマスクドJとしてそれらに丁寧に応えていたのであった
「…何かな?」
今回もそれだろう
淳一郎扮するマスクドJは少年のいるであろう方向に紳士的に振り返った
淳一郎は自身のポーカーフェイスの上手さに感謝した
そこに立っていた少年は
先程まで思い起こしていた自分の息子、バンだったからである
☆
「あっ…あのマスクドJ!…さんですよねっ」
『マスクドJ』を前に緊張してるのか、走ってきて息が切れたのかか少し上ずった声で話し出したバン
「ああ…そうだが?」
表情を崩さず、淡々と受け答えするマスクドJ…いや、淳一郎
だが淳一郎は、内心目の前の息子のことで頭が一杯だった
(バン…私のバンがここに…)
あれ程会いたいと、会ってこの手で抱き締めたいと思っていたバンが今、自分の目の前にいるのだ
先日会った時は距離が遠く、積もる話もあるのに録に再会の喜びを味わえなかった為、淳一郎の感動は果てしなかった
間近にあるバンの妻似の愛らしい顔
前髪と眉は自分似だが、血を分けた息子の我が息子たる証だ
愛しくないわけがなかった
「お、俺!さっきのBブロック見てました!マスカレードJの戦術とかすごくかっこ良かったです!」はきはきと目を輝かせてバンは先程のBブロックの感想を興奮ぎみに淳一郎に伝えてきた
淳一郎の読みもそれ程外れていなかったらしい
バンは『マスクドJ』にファンコールしに来たのだ
今のバンの瞳は以前自分がLBXへの夢を語った時の彼の瞳に似ている気がして
淳一郎は胸が熱くなった
だが、息子はどう考えても『マスクドJ』を淳一郎だと認識していないらしい
我ながら気づかれてもおかしくはない、明解な変装だと自負していたが、息子は少し鈍い所があるのか自分の変装に気がついてはいないようだ
(こういう所は、妻にそっくりだ)
淳一郎はフッと笑顔を作り、そのままバンに礼を言った
「有り難う、君の応援があってこそ私は勝てたのだ」
あながち間違いではないことだけは、言っておこう
淳一郎の原動力はバンなのだから
「へへへ…そう言って貰えて良かったあ!…あ、そうだ!せっかくだし握手して下さい!」
照れくさそうに頭をかいたバン
そして何かを思いだしたようにその小さな手を淳一郎に差し伸べてきた
ふにふにとした、子供の手淳一郎の頭で警鐘が鳴る
此処でバンに、触れて良いのか
このまま触れてしまえば、更にもっと更にと醜い欲望が膨れ上がってしまう気がしてならないのだ
溢れ出す息子への愛おしさに淳一郎は気が狂いそうだった
だが、淳一郎は息子と触れ合う機会をみすみす逃すことなどなかった
「ああ、構わないよ」
そう言ってバンの小さな丸っこい手を優しく握りこむ
ふにふにとした柔らかい、感触
淳一郎の昔の記憶がまた呼び起こされた
息子の幼い頃、淳一郎は膝の上に息子を座らせ、絵本を読み聞かせていた
その時のバンは良く淳一郎の腿の上に手を添えて座っていた
絵本の展開に興奮した時には、早く早くと自分の腿をその小さな手でぺちぺちと叩いて話の続きを催促するのだ
(バン…)
目の前の息子と昔の息子が倒錯する
「手…温かい…父さんみたい」
握られた手を見つめたまま、はにかんで呟くバンに
流石の淳一郎も限界が近かった
「…君も出場者だね、試合はまだなのかな…?」
いけない、早く息子と離れなくては
このままでは自分は息子に何か取り返しようもないことを仕出かすかもしれない
淳一郎は自らバンを引き離すように仕向けた
名残惜しいが握手していたバンの手を放す「あ、有り難うございました!…そうだった!俺Cブロックだから次で…」
握手のお礼を言った後バンは自分の試合のことを思い出した
Cブロックの試合開始時間まで、もうそれ程時間がない
「こんな所で油を売っていていいのかな?早く行きたまえ、少年」
バンが自分の前から早く立ち去ってくれるように促す
「君の活躍、期待しているよ…さらばだ少年」
黒いマントを翻し、淳一郎は息子の前から立ち去ろうとした
しかし、それは適わなかった
「あ…あのすみません」
バンが淳一郎を呼び止めたのだ
淳一郎を見上げたバンは、何故か恥ずかしそうに身体をもじもじと動かしていた
「…どうしたのかな」
「えっと…その」
言いにくい内容なのか、口をもごつかせるバン
それを訝しげに見つめた淳一郎は話の続きを促してやる
息子の口から出た言葉は意外な内容だった
「あの…トイレってどこですか…俺迷っちゃって」
そう言って照れくさそうに頭をかいた息子を見たその時
淳一郎の頭の中で何かが切れる音がした
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