決意も新たに元就様の後に続いて狭い道を進みます。兵が三人ほど横に並べるぐらいの幅しかありません。ここに敵が来たら乱戦に陥るでしょう。

「いたぞ!!毛利軍だ!!!」

「やっちまえ!!!」

傍迷惑なタイミングで長曾我部軍が襲来です。

「元就様」

「我が行く。下がっておれ」

毛利軍一斉に下がりました。無論私も下がる、もとい避難します。元就様は熱中すると周りが見えなくなるというかなんというか…経験上、近くにいると確実に巻き込まれます。怯えた様子の毛利軍を見ればどれほど恐ろしく、痛いのかよくわかります。

元就様は道の幅いっぱいに技の「発」を仕掛けます。元就様の「発」は 時限式地雷で触れれば最後、ドカンです。そんなこととは露知らず、長曾我部軍は素直に突っ込んでいきます。地雷が爆発、吹っ飛びます。止まろうにも後ろから仲間が押し寄せてくるので不可能です。十分引きつけてから一気に爆発。長曾我軍が混乱している間にまた「発」を仕掛ける、その繰り返しで実に無駄がありません。さすが元就様。この方だけは敵したくありません。

まるで間欠泉にはまったかのように次々と天へと突き上げては、ばたばたと倒れていく紫と緑の物体…紫はいいのですよ。長曾我部軍の兵士達の鎧の色ですから。しかし緑って…緑………あれ?

「元就様」

「はっはっは!!馬鹿め!!!」

「(楽しそう!!!)も、元就様?」

「散れ!!!」

駄目だ!!自分の世界に入ってしまわれている!!

「椿、椿!!!」

「はい!!!」

振り返ると焦っている宍戸様がおりました。というより皆さんいつの間にそんなに下がったのですか?元いた位置からさらに一尺ぐらい離れておりません??私も避難させてくださいよ!!!急いで宍戸様の元へ近寄ります。

「元就様を止めろ!!」

「無理です!!」

「このままでは小一隊が全滅する!!」

「小一隊?」

「元就様が様子見に使わせたのだ!!」

忘れてる!!あの人完璧に忘れてる!!どどどどうしましょう!!元就様を止めるのは至難の業ですが、だからといって仲間を見捨てることも出来ません。日々元就様のいわれなき暴力に晒されている毛利軍は変に団結力があり、家族同然といっても過言ではないのです。弟、兄、父親、祖父、曾祖父のような存在………何を言いたいのかわかんなくなってきた!!と、とにかく毛利軍はそれぐらい仲が良いのでございます!!!

「宍戸様!!」

「拙者にどうこう出来るならすでにしておる!!!」

「で、では苦肉の策ですが何か適当に言ってみましょう。もしかしたら反応するかもしれません」

「うむ、よし、全軍元就様にむかって適当に叫べ!!!」

変な命令で戸惑う兵士達ですがその気になって叫び始めました。

「元就様〜〜!!お止めになってくだされ〜〜!!!」

「元就様〜〜!!正気に戻ってくだされ〜〜!!!」

「元就様〜〜!!お給料上げてください〜〜!!!」

「元就様〜〜!!理不尽に暴力振るうのはやめてください〜〜!!!」

「元就様〜〜!!俺らを捨て駒として扱うのはやめてください〜〜!!!」

「元就様〜〜!!俺を足蹴りにしてください〜〜!!!」

最初の方は真面目に止めようとしているのですが後半はここぞとばかりに不平不満を叫んでおります。冷静な元就様に言ったら首が飛ぶのは確実ですからね。てか、一番最後に恐ろしいこと言ったのは誰ですか?良い所紹介しますので病院に行ってきてください。

散々叫んだ毛利軍の皆さんはすっきりしましたが元就様の暴走が止まることはありませんでした。

「椿!!お主もなにか言ってみろ!!!」

「私がですか!?」

私が叫んでも無視されそうですが、兎に角やってみなきゃ始まらないと宍戸様に促されてやってみることに。

「え〜と…元就様〜〜!!早くしないと日が沈んでしまいますよ〜〜」

するとです。今まで高笑いしながら攻撃していた元就様の動きがピタッと止まりました。その周りには敵味方入り交じった兵士達がボドボドと落ちてきます。嫌な光景だ。

「そうだ!!この戦の勝利をぜひとも日輪に捧げねば!!」

高笑いが終わったと思いきや今度はブツブツと独り言を呟き初めました。毛利軍は軽く引きます。主だろうが何だろうが怖い物は怖い。

「何をしておる!!皆の者日輪が沈む前にこの戦を終わらせるぞ!!!」

貴方様を待っていたのですが(口が裂けても言えません)

進軍を再開する元就様。やる気をだすのは良いことですが、お願いですから倒れている兵士達を踏みつけながら進むのはおやめください。長曾我部軍の兵ならまだしも自軍の兵にとどめを刺すような真似はおやめください!哀れでなりませぬ!!

「何をしている!!そんなに我に斬られたいのか!?」

「た、只今!!!」

「椿!!貴様は瀬戸内海にまかないで長曾我部の鳥の餌にするぞ!!」

どうして私だけそうなるのですか!!!長曾我部殿の鳥だってそんなのは食べたくはないでしょう!!自分で言っておきながら悲しくなってきました!!!

長曾我部軍の兵を踏まないように(毛利軍の優しさです)(踏まれる痛みがわかっていますから)しながら倒れている仲間を担いで急ぎます。手慣れた様子が涙を誘います。

「遅いぞ!!早くしろ!!」



理不尽さを感じずにはいられない毛利軍でした。





「発」で散ってる人達よく見て下さい毛利軍です





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