己の行く末を案じつつ(毎度のこと)進………んでおりません、毛利軍。元就様は漸く「裂」の技をやめて落ち着かれました。逃げ回ったせいで脇腹は痛いし足はガクガクするしで死にかけている私とは対照的に元就様は平然としておられます。暴れまくったというのに息一つ乱していないとか、化け物か。

「ふん。この程度で疲れているなど鍛え方が足りぬのではないか」

貴方様と一緒にしないでください(と、言いたいです切実に)

全力疾走しっぱなしの心の臓を宥めてどうにか通常状態に戻しました。心に余裕が生まれたことによって気付いたのですが、周りに人がいません。いえ、語弊があります。立っている人間が私と元就様以外におりません。他は地に伏しております。これはいったいどうしたことか…なんて!!原因はわかっておりますよ!!元就様が、敵味方関係なく、ついに、全滅させてしまった!!!

「も、元就様、護衛の者が私以外おりませぬ」

「軟弱な」

軟弱なって自分でしておいてそんな。悪びれた様子がないのが潔いです。それにしても、ここからは私一人で護衛をしなければならないのでしょうか。荷が重すぎます、面倒見きれません。元就様お一人で進軍してもまったく問題ない気がしますが。動ける者はいないかと辺りを見回せば一際目立つアフロヘアーが倒れているのを見つけました。

「宍戸様!!」

「うぅ…椿…」

何故でしょう。「裂」の技で斬られたはずなのにプスプスと黒い煙を上がっています。宍戸様を抱き起こすと辛うじて意識がありました。しかしこの様子では動けそうにありません。あああ、そんな!!私一人で元就様の護衛をするなんて無理ですよ!!縋るような思いで宍戸様の肩を揺さぶりますが口から泡を吹く始末。すみません。

「いたぞ毛利だ!!」

「討ち取れェ!!」

そうこうしているうちに長曾我部軍の増援が来ました。まだ兵士がいたとは。

「元就様!!」

「我は疲れた。どうにかしろ」

まさかの拒否!!人には鍛え方が足りないとか言っておられたのに!!疲れたとか嘘ですよね!?この人めんどくさいだけだ!!

やる気をなくした元就様は輪刀を地面に突き刺しそれに寄りかかっております。どうやら私はあの人数相手に孤軍奮闘しなければならないようです…私とて日々鍛えてはいますが大人数相手に勝てるような強さはありません。元就様や他の方々が規格外なのです。しかし、逃げるわけにもいかないのです。暴君といえ元就様は我が主、お守りするのが私の役目です。てか、逃げたりしたら制裁を受けるのは確実。元就様から斬られるぐらいなら長曾我部軍にむかっていったほうがマシなので半泣きになりながらも刀を構えました。

「仕方があるまい。退け椿」

退け、と申されましたが私が従うより早く押しのけてきたので派手に転びました。せ、せめて移動する暇ぐらい与えてください。尻もちついたまま元就様の動向を見守っていると元就様は輪刀を振りかぶり倒れている兵士たちを斬りつけました。振り向いた元就様と宍戸様の視線が重なります。

「も、元就様…」

「隆家…働け」

一閃。げふっ!!と、一声上げたきり宍戸様は静かになりました。もう一度言います。元就様は死にかけてるアフロ(宍戸様)を斬りつけました。まさかの行動に唖然としてしまいました。

元就様、いくらなんでもそれはあんまりです。捨て駒―――!!!とか言われつつも皆、頑張って元就様をお支えしているのに、死人に鞭打つ…いやいやいや、死んでないけど。それに限りなく近い状態である彼らを斬りつけるなど惨すぎます。あまりの仕打ちに涙が出そうです。

「行け捨て駒たちよ!!」

斬られた兵士たちには光の輪がかかっています。元就様が手を上げると兵士たちはむくりと起き上がりました(ゾンビ!!)元就様が輪刀を振り回せば兵士も攻撃してバッサバッサ斬っていきます。ああ、なるほど。「懐」の技を使っておられるのですね。斬りつけた者に輪をかけて操る技です。混乱してすっかり忘れてました。ですが、どちらにしろ倒れてる部下を一切の躊躇なしに斬りつけるのは酷いです。

元就様が強い+人数が増えただけあって凄い勢いで長曾我部軍を薙ぎ払っていきます。いや、凄い。凄いのですが毛利軍の兵を使う必要はないと思います。それこそ同じように倒れている長曾我部軍に使えばよいのでは?

「元就様!!毛利軍の者を酷使するのはおやめください!!せめて長曾我部軍の兵をお使いください!!」

「黙れ」

「おおぅ!?」

宍戸様が斬りつけてきました。い、いや、そのよう仕向けたのは元就様ですが、父親のように思っている宍戸様に攻撃されたとあって些かショックです。それにしても、白目剥いて襲ってくる宍戸様は怖いです。

「ごちゃごちゃぬかすようであれば代わりに貴様を操るぞ」

「えぇー」

それは嫌だ、御免こうむりたい。でも、毛利軍は皆家族、手を取り合って助け合おう(合言葉)が信条なのでこのままにしておくことも出来ませぬ。いや、でも………どうしよう。どうしよう!!!

止めに入るか否か迷っているうちに元就様は長曾我部軍を一掃しておりました。ごめんなさい、己の身可愛さに仲間を売りました。本当ごめんなさい。己の不甲斐なさや罪悪感から項垂れるしかありませんでした。

「よくやった捨て駒たちよ。そのまま散れ!!」

「おやめください!!」

元就様は用済みとばかりに宍戸様達を爆発させようとしています。そんなことしたら本当に死んでしまいます。お命だけでも守らねば!!と、腕にしがみついて(邪魔だ!!と殴られました)どうにかこうにか止めました。元就様から奪還した宍戸様たちを地面に横たわせます。心なしか顔色が悪い気がします。おいたわしや!!

「この先に長曾我部はいるぞ!!進め!!」

颯爽と駆けてく元就様にげんなりします。あちらこちらに倒れている仲間達をどうするか思案しましたが置いていくしかありません。ごめんなさい!!と、土下座してから元就様を追うために走ります。ああ。罪悪感で心の臓が痛む。ついでに胃の腑も痛みました。



過労死するかもしれない、と心配になった毛利軍(私一人)でした。





「懐」で操ってる3人、部下ですから!爆発ダメエエ!!





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