髪色が
オレンジの少年
死神の少女
二人が出会ったとき、お互いの人生は大きく変わった。
しかし、もう一人。
その人生が、大きく変わろうとしている少女がいた。
強くなると決めた。俺と同じを思いをするやつがいなくなるように、一人でも多くの人を護れるように。だけど、どこかで決意が揺らぐときもあると思う。だから、彼女に会いに行った。
誓いをたてるために――――………
「ルキア、先帰っててくれねぇか」
「ぬ?貴様、どこに行くつもりだ?」
「野暮用」
「一護…私に隠れて何をしておる。まさか!!口では言えないあんなことやそんなことをやっておるのか………!!」
「別に何も隠しちゃいねぇし、口では言えないあんなことやそんなことなんてやってねぇ!!はぁ。そんなに気になるならついてこいよ」
そう言うと一護はルキアに背を向け歩きだした。無論、ルキアは帰るつもりなどなく、その背中を追いかける。一護やルキアがいる場所は墓地の最奥地だ。奥までくると墓もまばらにしか立っていない。その中でも一つだけ離れた位置にあるお墓の前で一護は止まった。
「これは…」
「幼馴染み」
持参していた花を供えて桶の中の水をくみ、墓石や花にかける。最後に線香に火をつけた。膝を折って静かに目を閉じ、手を合わせここで眠っている人に語り掛ける。
久しぶり。暫らくこれなくてごめんな。俺は元気だったぜ。最近は死神稼業なんてのをやってる。死神、っても誰かの魂を取るとかそうゆうのじゃねぇぞ。平たく言えば成仏できない霊を成仏させて、悪い霊…つーか化け物?を退治するんだ。
………さっきおふくろを殺したやつ、ってそもそもの原因は俺なんだけどな。まぁ、その虚、って化け物と対決したんだ。あと少しってとこで逃がしちまった。悔しかった。そいつを倒せなかったことも、おふくろを死なせちまったことも、おまえを護れなかったことも。今でも後悔してる。
今日、強く思ったんだ。俺と同じような思いを誰かにさせたくないって。だから俺は強くなる。強くなって全部護るよ。ラッキーなことに死神の力があるからな。
逃げだしたくなる時もあるかもしれない。それでも、この両手で抱えきれないほどの人を護ってみせるから。
お前に誓うよ。
「よしっ!!帰るか、ってルキア?」
一護は勢い良く立ち上がった。そこで初めてルキアの様子がおかしいことに気付く。ひたすらお墓を凝視している。
「一護…こやつは霊力が強かったか?」
「霊力?まぁ、俺と同じぐらいだったはず」
「どうして亡くなった?」
「なんでって………おいおい、さすがにそれはねぇよ。だってこいつは両親と車にのってて事故に巻き込まれたんだからなぁ」
「…ならいい」
まさか、と思ったのは刻まれた名が自分の知っている人と同じだったから。その人が言っていた。自分は虚に襲われていたところを死神に助けてもらったのだ、と。事故なら虚はまったく関係ないだろう。
「早くしろよー」
いつのまにか先に行ってた一護が呼んでいた。走りだそうとしてもう一度だけ振り返って墓標を見た。
――――そんな偶然があるわけがない。たまたま名前が同じだけだろう。
そう結論づけると、ルキアは振り返ることなく走りだした。
「貴様ァ!私を置いていくとはどうゆう了見だ!!」
「おまえが遅いから悪いんだろ!てか、置いていかれたぐらいでそんなに怒るんじゃねぇよ!!」
口喧嘩をしながら帰路を辿る一護とルキア。すでにルキアの頭の中から先程の名前は忘れ去られていた。雨に濡れた墓に刻まれた名前は…
――――弐道涙花
「弐道涙花」
「はい」
「今日から十番隊、第八席に任命する」
「ありがとうございます」
「おまえは若くしての席官入りだからな。いろいろと大変だと思うががんばれよ」
「はい。頑張ります」
けして交じりあうことがないはずの道が、再び交じりあうとしていた。
End
>>あとがき
三巻のグランドフィッシャーとの戦いの後のお話です。一応、第一話なんですが、まだまだプロローグって感じですね。最初に言っちゃうと夢主と一護が関わるのはまだまだ先です。次回は場面がいきなり変わります。