ピンポーン、とチャイムが鳴ったのはべットに入る直前のことだ。枕元の時計を確認すると長針も短針も天辺を指している。こんな時間に誰だ。まさか秀吉様か半兵衛が火急の用があっていらっしゃったのでは!!…いや、お二方ならまず電話をかけられる。形部もいきなり押しかけてきたりはしない。となると、残りは家康か。やつならありうる。家康め、非常識にもほどがある。木端微塵にしてくれる。護身用に置いてある木刀を持ってインターホンを覗く、と。

「名前?」

『三成入れてー』

「待て。直ぐ開ける」

スーツ姿で両脇に荷物を抱えた名前いた。オートロックを解除し、玄関へ行きドアを開けて待っているとへなへなと萎れた野菜のような名前が歩いてくる。

「お久しぶり」

「こんな時間に何だ」

「明日休みだから泊めてよ。三成は明日も仕事?」

「いや、休みだ」

「ちょうどよかった。お邪魔します」

名前は乱雑にパンプスを脱ぐと中へ入った。施錠をして名前の後を追うとお泊りセット(勝手に置いている)から寝間着を取り出し風呂場に向かった。出てくるまで起きていようと本を読んでいると10分程で戻ってきた。さすがに早すぎる。髪が濡れてないとこを見ると顔を洗い、歯を磨いただけのようだ。

「風呂に入らないのか」

「ごめん、明日の朝一番でシャワー浴びるから許してください」

ほとんど倒れるようにしてベッドにダイブした。ぴくりとも動かなくなって流石に不安になって声をかけるとふあい、と何とも力のない返事が返ってきた。これは重症だ。

「名前、何故ここに来た」

風呂に入るのも困難なほど疲れているのになぜ私のところへ来たのか。名前の仕事場からなら自宅に帰った方が断然早い。それに私とともにいるより一人でゆっくり過ごしたほうが休まるだろう。私なりに気遣ったのに名前はむすっとしている。

「三成君は恋人が家に来たら迷惑ですか?」

「誰もそのようなことを言ってはいない」

「何でわかってくれないの」

「何をだ」

「疲れて身も心も弱ってそんな時に思い浮かんだのが三成だったの。私は三成に会いたかったの!!」

わかってよ、バカ。と、拗ねたような顔をして名前は布団の中に隠れてしまった。疲れているときは人付き合いというのが酷く億劫になる。誰にも関わらずいたいものだ。それに私のような人間は面白味がないから一緒にいても楽しくないだろう。それどころか気を遣って余計疲れさせてしまう。自覚もしている。それでも名前は私に会いたかったと言う。疲れた身体に鞭を打ち、電車を乗り継いで私の元へと来たのだ…馬鹿者が。わざわざ来なくても呼びつければいいもの。貴様に会いに行く程度徒労のうちにも入らない。それと会いたかったのは貴様だけではない。

ベッドに近づくと端によってスペースを空けたので潜り込む。抱きしめてやると名前の口角が緩く持ち上がった。口を開くつもりがないようだが、それでいい。そのまま寝てしまえ。私も寝るべくして目を瞑った。普段は睡眠を必要としない性質だが、久方ぶりに感じる傍らの愛おしい存在によく眠れそうだ。

明日は私も名前も休みなのだから少しぐらい寝坊してもいいだろう。朝食は和食と決めているが、特別に名前の好きなホットミルクと甘いフレンチトーストを作ってやる。そうしてゆっくり過ごそう。





真夜中にミルク
(寂しいとき疲れたときこそ君に)










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思いやってるけど肝心なことを言わないから伝わらない三成です。大好きな方の大好きな曲を聴きながら書きました。イメージソングがあるとスムーズに書けますね。



お題、誰そ彼様より
「真夜中にミルク」使用



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