ピンポーン、とインターホンが鳴った。両親は仲良くお出掛け中なので私が対応しなければならない。あーめんどくさい。部屋着だけどまぁ、いいや。DVDを一時定停止する。玄関に出て、サンダル引っかけてどうぞー、とドアを開ける。

「………」

「こんにちはでござる」

「………こんにちは」

訪ねてきたのはお友達の幸村君だった。約束もなしに急だったのでちょっと驚いたが、友達なんだからうちに来たっておかしくはない。会ったら挨拶するのも常識。それなのに私が動揺しているのは、幸村君の格好に原因がある。

彼が着ているのは紋付袴だ。結婚式で新郎の父親がよく着ているやつ。うん、幸村君は和服がよく似合う…って、そうじゃない!!何で礼装?来るとこ間違ってませんか?スエットの私と並ぶとアンバランスなんですけど!!これはツッコミいれるべき?しかし、幸村君の顔はマジだ。

「きょ、今日はどうしたの?」

真剣な幸村君にツッコム勇気はなかったのでスルーした。凄く気になるけど。不躾ながら上から下まで眺めていると、幸村君の肩越しの光景が目に止まる。

「急に押しかけてしまって申し訳ござらん」

「………」

「名前殿?」

幸村君が声をかけてくるがそれどころでなかった。さっきからオレンジ色と銀色の物体がチラチラしてる。あ、薄茶色も二つある。それらは髪の毛であんな目立つ色をしているのは佐助君達しかいない。人の家の門前で何してんだ。たまに毛利君と目が合うんですけど。

門の左右に二人ずつ隠れているが、押し合いへし合いしているらしくたまに身体がはみ出す。隠れている意味がない。怪しい高校生が苗字さん宅を覗いていた、ってご近所の噂になるからやめてほしい。

「名前殿!!!」

「はい!!!」

大きな声で呼ばれ意識を幸村君へと戻す………顔が赤い。紐がきつくて苦しいのかな?私の心配を他所に幸村君は何度か深呼吸をしてから口を開いた。

「それがしゅ!?」

思いっきり噛んだ。よっぽど痛かったのか、しゃがみ込んで口元押さえている。何に対しても一生懸命なのは良いことだが空回ってる気がしてならない。哀れみを込めて頭を撫でてあげたら破廉恥!!とひっくり返ってしまった。君の基準がわからないよ。せっかくのお召し物が汚れちゃうから早く起きなさい。

「大丈夫?」

「う、うむ」

私の手を借りて立ち上がった幸村君は気まずそうにしている。このままだと一生黙ってそうなので先を促す。一度失敗したおかげで緊張感が抜けたのか、さっきよりは落ち着いたようだ。思わずドキッとしてしまいそうな真剣な表情になった。

「今日は名前殿に伝えたいことがあって参りました。某、名前殿を好いておりまする!!!」

………え、まさかそれを言うためだけに正装してきたの?告白されたことよりそっちの方に驚いてしまった。普通にジーパンとTシャツでいいじゃん。プロポーズの時だってそんな恰好しないよ。

そんなツッコミを(心の中で)していたら佐助君がガッツポーズしているのが見えた。正直、保護者同伴で告白されても微妙だ。右横の柱に隠れている伊達君と長曾我部君はニヤニヤしている。幸村君に紋付袴を着るように助言したのはあの二人だろう。純情boyに何教えてんの。全部本気にするんだからやめてよね!!

「返事は後日お聞かせくだされ」

「は、はい」

「では、某はこれにて!!」

幸村君は一礼すると身を翻した。

「…お主等、そこで何をしている!!!」

「今更かよ!!!」

つい声に出してしまった。振り向いた幸村君がさすが名前殿、キレのあるツッコミ!と、褒めてくれたがあまり嬉しくない。

私達のやりとりを見て毛利君以外の3人が大爆笑している。幸村君が、笑うとは許すまじ!!!と、叫ぶと砂埃を巻き上げながら突進していく。佐助君達は慌てて逃げ出した。幸村君、あの恰好でよくあんなにスピードだせるなぁ。

騒ぐだけ騒いで去っていった団体様を見送っていると門の影から毛利君が出てきた。隣に並んだ毛利君に話しかける。

「ねぇ、毛利君」

「何だ」

「幸村君に返事する時、正装じゃないと駄目かな?」

「普段着でよい。何と返事をするつもりでいる」

「不束者ですが末永くよろしくお願いします?」

「まるで真田のところに嫁ぐような台詞だな」

「やだ毛利君!!嫁ぐなんて気が早すぎるよ!!」

「阿呆しかおらんのか」





気合い入りすぎ
(本気なのは伝わってきたけどね)










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以前やった企画にupしたものです。再利用してみました。ギャグ書くなら幸村に限りますね←



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