荒れ狂う真田幸村を猿飛佐助はどうやって止めたか。答えは簡単。鴉で空を飛んで先回りし、幸村が真下を通った瞬間、頭に向かって大きな石を投じた。それは一寸も狂わずに幸村に直撃、気絶したとこを抱えて躑躅ヶ崎の館に帰還した。

これぐらいしないと幸村は止まらないのである。というか、これ程度で死ぬようなら虎の若子は名折れだ。

「唯今戻りました〜」

「うむ。大儀である佐助」

目を回している幸村だが佐助が地面に下ろすと正気に戻った。いきなりの事だったので何が起きたのかわかっていないらしい。キョロキョロと周りを見遣ると状況を把握したのか、柏手を一つ。

奥州についたか!!

んなわけないでしょう

おぉ、佐助!!いたのか!!などと、言ってるあたり天然だ。戦時とのギャップがありすぎてたまについていけなくなる。

何がどうなったらこのように育つのでしょう。俺様にはわかりません。昌幸様、奥方様。是非とも教えてください。

「随分とボロボロですね幸村」

遠い世界に行きかけた佐助を引き戻したのは高くもなく低くもない、耳に馴染む優しい声だった。信玄の隣でクスクスと笑うは噂の姫君、名前であった。会話を聞かれていたらしい。意中の相手から笑われた恥ずかしさに幸村の顔からは火が出そうだ。

「ひ…姫様ァァァ!?!?」

ピョンと小さく跳ね上がると空中で正座の体勢になり、そのまま着地するという荒技を披露した。衝撃で少々足が痛かったがそんなこと構っていられない。笑い続ける姫に見惚れて幸村はボッーとする。おかげでこんにちは〜お姫さん、と馴れ馴れしい口のきき方をしている佐助に注意を仕損ねるとこだった。

「佐助!!相手を誰と心得る!!」

「いいのですよ、幸村。貴方もそう堅くならないでください」

「めめめめ、滅相もございませぬ!!!」

「さすが姫様!!いや〜ご立派ですね〜」

なんと広いお心。さすがお館様のご息女と感服しながら頭を下げる。しかし、佐助の笑顔はあんなに緩んでんだ。凄く癪に触る。いい加減シャッキリしないか!!!給金減らすぞ!!!

「わしが呼んだのじゃ」

「大将が?」

「本人の意志も聞いてみたいと思うてのう」

「私の意志?」

「そうだ」

名前だけではなく幸村や佐助も驚いた。信玄が言った事は異例である。父親が嫁に行けと言えば例え想う人がいても嫁がなければならない。それが常である。娘の意志を尊重するなど政を司る者にとってはあるまじきこと。それでも、信玄は娘の意志を尊重させようとしている。信玄は心から名前を愛しているのだ。そしてそれは名前も同じこと。

「私は…甲斐の、父上の役に立てるのであれば本望です。ですから、父上様が『嫁げ』と仰るのであれば喜んで嫁ぎましょう」

二人の心が伝わってきて幸村、男泣き。佐助が泣きやませようとするが効果なし。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになり、せっかくの男前が台無しだ。

「ふむ。幸村ァ!!!」

「ふばぁい!!」

戦の準備をせよ!!

しょうじづがまづりまじだ!!

ちょっと待った!!

ストップをかけたのは佐助だ。素直に返事する幸村も唐突に戦だなんて言い始めた信玄も色々おかしい。名前なんて目を丸くしている。

戦ってあれか。伊達に仕掛けるのか。そんなに嫁に出すのが嫌ならば断ればいい。せっかく結んだ同盟を無碍にするつもりか!!

「父様。何故戦を」

「戦ではない。伊達の小童を試すのだ」

「試す、と申しますと?」

「そなたの夫に相応しい男かどうかを見極めるのよ」

断ったところであの手この手を使ってにものにしようとするだろ。ならば正々堂々とどれほどの力量か見極めようではないか。

信玄は名前には幸せになってもらいたいと思ってる。そのためには生半可な男では駄目なのだ。
「それはどのような方法でございますか?」

「奥州の小童にはここまで来てもらい武田の猛者達と競ってもらおう。無論、武田軍総出で向かえうつ!!」

「総出で!?」

戦ではないようだが随分と大規模な物になるらしい。家臣達は勿論、農民達も駆り出される。その原因が自分だと思うと名前は申し訳ない気持ちになった。

しかし、それは大間違いだ。何せみんなが大好きお姫様に関することである。お役に立てるのであれば喜ぶことはあっても嫌がる事はない。農民、武士、など関係なしに一致団結するだろう。思いは一つ。


独眼竜なんかに自分達の姫様をやってたまるか。


「お館様ァ!!この幸村、必ずや姫様を護ってみせますぞ!!!」

「幸村ァ!!頼りにしてるぞ!!!」

「有り難きお言葉!!」

「幸村ァ!!!」

「お館様ァ!!!」

「幸村ァァァァァ!!!」

「お館様ァァァァァ!!!」

名前が止める間もなく盛り上がっていく二人。こうなってしまえばもう止める術はない。が、このままにしておくわけにもいかない。

「佐助!!お願いです、止めてください!!」

「駄目」

「えぇ!?」

「ごめんね〜今回だけは俺様も本気でいかせてもらうわ」

ニッコリ笑う佐助に自分の仲間はいないことを悟る。武田最後の良心ですら名前の助けにはならなかった。



今日の武田軍は戦をする時よりも気合いがはいっていた…らしい。





僕らのお姫様
(簡単には渡しません。しませんとも、えぇ)










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相互してくださった雪哉様に捧げます。

とりあえずこれだけ書くのに何ヶ月かかってんだって話し。さらに夢主の出番が少ない&幸村の扱いが酷い、と。いや、本当すいません。ちなみに当サイトの幸村の扱いはこんな感じ(酷)

雪哉様には武田家が可愛いとお褒め頂いたのですが………どうなんだろうこれ。武田家を前面に出しすぎて夢主の影が薄くなっちゃった。そして幸村が馬鹿の子。武田は軍どころか領民も一緒になって仲良くしてるといいよ(いきなり)

雪哉様!!こんな物でよろしかったらどうぞ納めください!!返品はいつでも可なので!!!相互ありがとうございました!!お読み頂いた皆様もありがとうございました!!










(蒼紅が一騎打ちしている時の会話)




「やはり政宗様に相応しいのはあの御方だ」

「何言ってんの。うちの旦那の方がお姫さんとお似合いだから」

「はっ。あんな青臭い餓鬼に何が出来る」

「いやいや。異国かぶれの竜の旦那よりうちの旦那の方がお姫さんを幸せにしてくれるから」





「「(野郎………)」」





主従の従のほうは自分の主の嫁に欲しいご様子(笑)



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