小十郎様に呼ばれて部屋に向かい、室に入るか入らないかのうちに蹴られて畳にひっくり返った。足で肩を押さえつけられてるため、起きあがれない。

「痛いです」

「痛いのが好きなんだろ」

「好きではありません」

背中の傷に鈍い痛みが走った。傷口が開いたか。としたら血が噴き出しているだろう…畳が汚れてしまう。どこか的はずれなことを心配しながら真上にある顔を睨む。身を晒してまで主君の命を守ったのにこの仕打ちは酷くないか。

「何をなさるのです」

「黙れ。テメェが悪い」

「私が何をしたというのですか」

「どこぞの馬の骨ともわからねぇ野郎に斬られただろう」

「そんな、ことで」

出陣命令が下され不在だった右目の代わりに護衛を預かった。確かに、小十郎様みたいに上手くはいかなかったけど、それでも政宗様には傷一つ負わせなかった。褒められこそすれど、どうして怒られなければならないのだ。

言ってやりたいことは山々在るが抗議なんて出来ない。小十郎様はいつも以上に低い声で顔に無を貼り付けている。纏う空気には怒気が孕まれて息が詰まりそうだ。

「どうやらテメェはさっさと死にたいようだな?」

「そのようなことは!!」

「そんなに死にてぇっていうなら………」


俺が殺してやるよ


小十郎様が座ると同時に手首を引っ張られ身を起こした。そしてそのまま小十郎様の腕の中に納まる。傷に触れぬよう気遣ってか、腕は腰に絡んだ。先程とは打って変わって優しい手付きだ。

「…私の命は政宗様の物です」

「たとえ政宗様であったとしてもテメェ自身とテメェの命だけはやれねぇな」

「傲慢な」

「何とでも言え」

俺の命はお前にやれないが、お前の命は俺に寄こせ…つまりはそういうことだ。私には何も与えてくださらないのに、自分は私の全てを与えろと言う。対価という言葉が彼にはないのだろうか。

「酷い人ですね、貴方は」

「その酷いやつに惚れてんのは名前だろ」

図星なので反論することも出来ない。どこか得意げな顔をしているこの人には一生逆らえないと悟った私は呆れ半分、喜び半分でその首に腕を回した。





絡まってほどけない
(永遠に繋がれたまま)










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自分の物に手を出されてご立腹な小十郎。戦場に出ている以上、仕方のないことだとわかってはいるけど、押さえられなかったようです。

ところで、小十郎はボコリ愛とか凄く似合いそうですが、そう思うのは管理人だけでしょうか?ボロボロな小十郎もおいしいです←




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