月は雲で隠れたり顔を出したりを繰り返していたが今はくっきりと晴れている。天は俺達に味方したようだが、あちらが、盗賊共はちゃんとでてくるが心配だ。

今日は戦ではなく最近出没するようになった盗賊退治をする。夜になると活動を始めるというので夜更けの出陣になった。どんなに遅くても明け方頃には帰ってこれるだろう。

鎧も着て準備は万端。余った時間は出陣前の恒例行事である名前に逢うを実行していた。廊下の最も奥にある部屋の前で止まる。

「名前、 May I come in?」(入っていいか?)

一応声をかけたが勝手知ったる仲だ、返事も待たずに襖を開ける。部屋の中が暗いことに変だと思いつつも一歩踏み出そうとして、やめた。そのまま入ったら入り口付近で丸まってる名前を踏みつけることになるからだ。どうやら寝ているようだが…こんなとこで寝るなよな。危ねぇだろ。

このままにするわけにもいかず、かといって起こすのもしのびないので名前を跨いで部屋に入ると押し入れから布団を引っ張り出して敷いた。それから名前の元へ戻り、膝裏と肩を支えて持ち上げた。俗に言うお姫様抱きというやつだ。あまりの軽さに目を細める。ちゃんと食ってんのか?

布団の上に下ろすと掛け布団を掛けてやる。身じろぎしたがそれ以上の行動はなく、また規則正しい寝息を立て始めた。枕元に座り寝顔を眺める。燭台に火が灯されていないから日没前には寝てしまったのだろう。出来れば少し話したかったが、寝顔を見れたので良しとする。

それにしても、月明かりに照らされた顔は至極幸せそうだ。あまりにも幸せそうだから出陣前なのに気が緩むが、このぐらいがちょうどいいのかもしれない。

思えば、戦場で絶体絶命に陥っても、どんな大怪我しても、生きて帰ろうと思うのは待ってる人がいるからで、それだけで俺は強くなれるのだ。全ては目の前で寝ている少女のおかげ。思わぬとこで役にたっているなんて知らないだろう。

「まさむ…ね、さま」

「何だよ?」

寝言だと重々承知。その証拠にそれより先の言葉はない。どうやら俺は夢の中でも一緒らしい。前髪を除けてやると先ほどとまったく変わらない幸せそうな顔。

そんなに俺が好きか?俺は同じぐらい、それ以上に好きなんだけどな。

目の前の少女にすら見せたことのないような笑みを浮かべて緩んでる頬に唇を寄せた。

「I Love you. 名前」



俺が帰ってくる頃には目を覚ましているだろう。その時は花のような笑顔で出迎えてくれよ。





眠り姫の笑顔
(だから俺は頑張れる)










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政宗さん書くと甘いか切ないかダーク系かしかない。ほのぼのは何処行った!?










(帰宅後)

「Hey.昨日はどんな夢見てたんだ?」

「え…」

「言えないのか?」

「あの…ご、御免!!」(ピュウーー!!)

「Don't run away!!(逃げるな!!)待ちやがれ!!」(ピュウーー!!)

「帰ってきて早々何をしているのですか」(溜息)




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